第20話 前夜

それからというもの、京子さんがよそよそしくなってしまった。


俺もどうしていいかわからない。俺に対してそうする理由に、あまりにも納得がいってしまうからだ。


誰だって自分の孫に恋愛感情を持ってしまったと知ったら、どうしていいかわからないに決まってる。


祭りは明日に迫っていた。バンド練習も佳境を迎え、最後の追い込みをかけている。


「どうした透。元気ないな」


「明日で祭りが来てしまうなって思ってな」


「とおるがそういうもんだって言ってたじゃんかぁ」


「分かっているつもりだったんだけど、いざ近づくとね、、」


「別れが惜しいのは俺たちだって同じだ。最後はバチッと決めようぜ」


「ああ・・・」


披露する曲はオリジナルも含めて田中以外はほぼ完ぺきに近かった。田中も初心者からとは思えない上達ぶりだ、ただ祭りまでの期間が短いだけだ。本人も必死に練習している。


3人と別れ、家で夕食を食べ終わり、いつものルートを散歩していた。


「しみったれた顔してるね」


「お母さん。」


「京子がまた作り笑いをするようになった。あんたたち何かあったね?」


「俺が本当のこと話しちゃったんです。京子さんも動揺しちゃって・・・」


「あら、やっちまったねぇ、、」


「信じないことを願ったんですけど、完全に信じちゃってて。誰に似たんですかね?」


「あんたも言うようになったねぇ。私らがロマンチストなのもあるかもしれないけど、あんたが本当にこの時代の人間と雰囲気が違うからだよ。」


「こんな終わり方はしたくないんですけど、どうしたらいいと思います?」


「私はあんたたちよりは長く生きてるけど、さすがにどうしていいのかわからないねぇ。ただ、」


「ただ?」


「京子は良い子だ。ちゃんと話し合えばわかってくれるさ。ここで間違うと未来のあんたに影響が出るかもしれない、がんばんな。」


「はい」


外は真っ暗だった。家に戻ると、京子さんは寝ているようだ。意を決して中に入る


「入ってはみたけど、どうしたらいいんだよぉ!」小声で小言を呟いてしまう


「何しに来たの」


「え。起きてた?」


「横になってすぐには眠れないわよ」


「京子さんはさ。俺がその、孫だって信じてる?」


「信じてるわよ。今まで引っかかってたのが全部わかった気がした」


「そっか。俺は初めて会った時から知ってたんだ。京子さんがばあちゃんだって」


「そうなるわね。」


「びっくりしたよ。まさかこんなにかわいいなんて、、」


「あら 未来の女の子より?」


「別に未来も変わらないよ。ファッションが違うだけ。京子さんと仲良くなるにつれて、その、意識してしまう自分がいて。でもばあちゃんなんだって、混乱してさ」


「・・・・・」


「でも、かわいくて。一緒にいると元気になれて、水着姿にはドキドキして、我慢できずにキスしちゃって。でもめっちゃ嬉しかった。」


「・・・・・・」


「でも、俺はたぶんもうすぐ未来に帰るんだなってなぜか確信があって。京子さんと一緒にいられなくて、京子さんが結婚する人が変わってしまったら俺が存在しなくなるかもしれなくて。ごめん、、」


「もしかしてさ。私の旦那って明でしょ?」


「え!?」


「当たったみたいね。顔にすぐ出るんだから」


「そんな!」


「良く見ると明っぽい部分がちょっとあるのよねぇ。あとは明と一緒にいる時の透くん見てるとなんとなくぎこちない時があったから不思議だったの」


女の子って本当に人の事よく見てるなぁ・・・


「でもいいの。なんとなくそうなるんじゃないかなって思ってたから。他の男に全然興味ないし、明は最近よくわからなかったけど扱いやすいし」


「・・・・・」


「こっち来て」


「いいの?」


「うん」


「じゃあ、お邪魔します」


暗くて京子さんの顔も良く見えないが、京子さんと同じ布団の中に入る。暖かい、、京子さんの顔が目の前にある。


「でも、私と明の孫を好きになっちゃうなんて、どんだけ明と繋がってんのよ」


「そうだね、でも孫の俺も君の事好きになっちゃうなんて、すごいよね」


「透くん・・・」


「なに?」


「これは最初で最後の浮気。明には一生の秘密。墓場まで持っていくわ」


「きょうこさ・・・」




真っ暗な世界に、ただ唇のぬくもり、伝わる快感だけがあった


視界が封じられている分、余計に意識が集中する


京子さんの身体を手でなぞっていく、甘い声が俺の思考能力を麻痺させる


女の子ってこんなに柔らかいのか、先端の突起を触ると京子さんの声が大きくなる


京子さんが俺の興奮しているアレを撫で始める。お互い初めてで、動きがぎこちない。


自分でしか処理したことがなかったが、女の子に触られると気持ち良いけど、こそばゆい。


お互いを慰めあった。頭が真っ白だった。最後に覚えているのは、終わった後の見たことない扉が開いたような感覚だった。

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