第19話 語らい
「ただいまー!」
「透くんおかえり! 大丈夫だったみたいね!」
「あぁ! ちょっとやり過ぎちゃったかも、、こ、殺してないよ!」
「まぁ、いいんじゃない? 無事なら、カツヒコも男でしょ」
「でも、制服が取り返せなかったんだ。あいつ忘れやがってさぁ・・」
「しょうがないよ、制服はまた買えばいいんだし」
「おうおう、モテる女はつらいねぇ!」
「あ、お母さん。ちゃんとやっつけてきましたよ!」
「それでこそ男だよ。」
「まぁ、俺は何もしてないんですけど、あはは」
「あんたは非力でも仲間がいたんだろ? それも立派なことさ。自分一人で何でもできる人間なんていないのさ」
「そうですね、仲間がめっちゃ強かったです。京子さん、あいつらめっちゃかっこよかったから、明日褒めてやってよ」
「わかった!」
最初はかなり怖かった。ケンカなんてやったことないし、こっちの時代で暴力沙汰を起こせば高校生であってもただではすまない。むしろケンカよりめんどくさく、陰湿になっている。
昔からあったものが、ネットを通じてバレるようになっただけなんだろうけど、少なくとも情報操作によるイジめはこの時代ではなかなか起きないだろう。
西高の連中にボコボコされた時はすごく怖かった。自分では何もできず、女の子を守ることもできず、人生で味わったことのない痛みだった。
でも、憎き相手を仲間と共に倒していく、自分をこんなにした相手に思いっきり仕返しをする気持ちよさ。こんなことをしても、俺たちが黙っていればバレない。この時代様様だ。
大人たちがこの時代を嘆く気持ちが少しわかった気がした。ケンカなんて無い方が良いに決まってるんだけどね。でも時代の移り変わりによって失われるものが確かにあるんだ。
俺は晩飯を食べ終わると、フラッと俺がタイムスリップした海岸線を散歩し始めた。いろいろと物思いにふけたかったのかもしれない。
波の音しか聞こえない。星空がとてもキレイだ。普段は気にしないけど、こういう田舎に来ると、普段の反動からか自然を満喫したくなる。
ボケっと夜の海を眺めていると、波の音に混じって足音が聞こえてきた
後ろから抱きつかれる
「何してんの?」
「なんか、ボーッとしたくてさ。初めての経験ばっかりで・・・」
「例えば?」
「うーん、初めてこっちに来た時さぁ、コーラが45円だって言われてすげーびっくりしたんだよ~」
海を眺めながら思いついたことをただただ話していく
「え? 驚くこと?」
「いやぁ、俺の時代じゃ考えられないよ~。だって普通120円でしょ(笑)」
「へぇ、、。他には他には?」
「ファッションは全然違うし、テレビは白黒だし、スマホは無いしー」
「・・・・・」
「あ・・・」
抱き着かれているのを離し、振り返る
「い、いやぁ! なーんちゃってぇ、、」
「未来から来たの?」
「信じられる?」
「うん、何となくわかるんだ。透くんは雰囲気が全然違う・・・」
「そっかぁ。わかっちゃうか、、。そう、俺は未来から来たんだ」
「どうやって?」
「夏休みだからじいちゃんの家に顔を出しに来て、この防波堤の上を歩いてたら落ちて、目が覚めたらここだった。」
「ふふ、そんなんで来れるの?」
「それが来れちゃったんだなぁ」
「どうして私の家に来たの?」
「うーん、、。」
これ以上は危険かもしれない。京子さんがまっすぐ俺を見つめている
「話して・・・」
「君が、、俺の・・・」
「俺の?」
「おばあちゃんなんだ!!」
「そ、そう・・・」
「信じられないでしょ!? そう、嘘だよ嘘!」
「私、未来の孫とキスしたの、、」
何も返せなかった。こうなるならもっと早く言ったほうが良かったのか?
「京子さん!!」
京子さんは走って行ってしまった。俺は後を追うことができなかった
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