第18話 オリジナル
「ぷはー! ケンカの後のコーラは最高だぜ!」
「たなか声がでかいよ!」
「もともと北高の4人衆にはカツヒコが入ってたんだけど、今はとおるだよなぁ!」
「俺、北高生じゃないんだけど」
「んなことはいいんだよ!」
「あいつは昔から自分の手を汚さないやつだったからな」
「へぇ、そうなんだ」
「いやぁ! カツヒコ痛そうだったな! 顔の骨やってんじゃね?」
「俺もやっちまったと思ったよ」
「あいつはプライドが高い。意地でも透にやられたなんて言わないだろうな」
「明はカツヒコのことよく知ってんだな」
「まぁ、昔からの付き合いだったからな。もう奴と関わる気はない」
「それがいいよ」
そんな事を話しながら音楽室に着いた。みんなそそくさと楽器を準備し始める。
みんな、ケガがなくて本当によかった
「じゃあ、オリジナルなんだが」
「おう! あんま難しいのはやめてくれよ!」
「俺はほとんど参加しない」
3人が驚いた表情を浮かべる
「おいおい! どういうことだ!?」
「たなか落ち着けよ。俺は祭りでこのバンドを離れなきゃいけない。だから、とりあえず残った3人でバンドが続けられるように曲を作ったんだ。それで、この曲のボーカルは、明だ。」
「お、俺か?」
「そうだ」
「俺はドラムだぞ」
「そうなるな。あまり馴染みがないかもしれないけど、ドラムしながら歌う人もいるんだ。でも残りの時間じゃ絶対に間に合わない。だから、俺がドラムやるよ」
「ほう」
「それで、祭り本番は明がボーカル、田中がギターで、純平がベース、俺がドラムだ。俺がいなくなってからどうするかは決めてくれ。普通に考えると、明がギターボーカル、ベースが田中、ドラムが純平かな」
「え!? 俺がベースやんの?」
「言っとくけど、モテんのはギターよりベースだからな。メロディを引っ張るギターも良いけど、低音で曲を下から支えるベースにしびれる女の子は多い」
「そうなのか!! やるやる!!」
やっぱり田中はちょろい!!
「純平は何でも器用にこなすタイプだから、明に少し教わればできるようになるだろう」
「わかった」
「一番大変なのは明だなぁ。」
「そもそも俺、ギター持ってないぞ」
「京子さんの親父さんの形見のギターがある。それを借りればいいよ」
「そんな大事なもの!借りれるわけないだろう!」
「みんなギターが弾かれることを望んでるんだ、大切に扱うなら全く問題ないはずだ」
「そ、そっか」
しかも京子さん絡みだからな!
「オリジナル曲はかなり簡単めに作ってあるから、練習すればすぐできるようになるよ」
「なんか、とおるとの別れが近づいてきたみたいで嫌だな・・・」
「そんな悲しい事言うなよ、永遠の別れじゃない、またすぐ会えるさ!」
「しかも、このオリジナル曲は、ラブソングだ!」
「お! あきらの歌うラブソングか! 楽しみだな!!」
「おい透! そんな恥ずかしい曲、俺には無理だ!」
「言っとくけどビートルズもラブソング多いからな! ただ英語ってだけだ。そして明、ずっとこのままでいいのか? 高校卒業したら京子さんと一緒にいられることも無くなるんだぞ」
「う・・・」
「京子さんは、お前が何を考えてるのかわからないと言ってた。恥ずかしくて京子さんの前だと固くなっちゃうんだろ? その気持ちはわからんでもないが、そろそろ直接伝えないと手遅れになるぞ」
「そ、そうだな」
「直接言うのはまだ厳しいだろうから、まずはみんなの力を借りて音楽で気持ちを伝えてみたらどうだ? 演奏しながらだったら、顔を見ても恥ずかしくないかもしれない」
「わかった、やるよ!」
「それでこそ明だ!」
一度決心したらやる男だ。これでオリジナル曲も大丈夫だろう。
「おい、透」
「なんだ?」
「どうして俺の気持ちを知ってるんだ?」
俺、田中、純平「え!?」
「お、おい。みんな揃ってどうした?」
「いやいや、お前が京子好きなのはバレバレだから!!」
「そうなのか!?」
「気づいてないのは当事者だけってか」これには純平も呆れ顔だ
「俺たちがどんだけ近づけようとしても何もしないからよー」
「透が直接言ってくれて良かった」
「いいってことよ。じゃあまず、俺がギターボーカルで簡単に歌うから、聴いててくれ」
「わかった!」
「その前に、何か録音するものあったりしない?」
「あ! そういえば!」
「田中、何かあるのか?」
田中が奥の倉庫から何かを引っ張り出してきた
「じゃーん! ラジカセだ!」
「らじ、かせ?」
「とおる知らないのかー? ラジカセだよ、カセットに録音できる最新機器だぜ! 買おうとするとめちゃくちゃ高いから、今回だけ借りようぜ!」
「そうなのか、、まぁとりあえずそのらじかせとやらを頼む」
「ほーい」
ラジカセで俺の演奏を録音する。
「まずは明が家でこれを覚えてきてくれ、2人にはこれを」
手書きのスコアを渡す
「これを覚えてくれれば、あとは合わせていけば大丈夫なはずだ。簡単だろ?」
「そうだな」
「じゃあ、今日は解散! お疲れい!」
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