第7話 昭和43年の夜中

って、寝れるわけないだろ! 


寝ようと数時間無理やり目を閉じてみたけど、全く眠れない!


ちょっと外の風にでも当たろうかな。体を起こし、外に出ようとすると


「どこに行くんだい?」


「うわ!! お母さんですか、びっくりさせないでくださいよ」


「そんなに驚くことないだろ」


「いや、真っ暗だったんで、、」


「眠れないの?」


「はい。やっぱ慣れない環境だと寝れないです」


「ちょっと外で話そうか」


京子さんのお母さんと外に出る。そういえば、名前がわかんないな


「あんなに楽しそうな京子を見るのは久しぶりだよ」


タバコを吹かしながら話し始める。絵になるな


「そうなんですか? 今日、京子さんのクラスメイトと会ったんですけど、元気な良い子でしたよ」


「あぁ、あの子はデキた子だ。私のいない所でもしっかりやってくれてる。でも、旦那が死んでからというもの、家の中じゃ無理して笑っているように見えてね。久しぶりにちゃんと笑ってるところを見られたよ。それだけでも、あんたに飯を食わせた甲斐があったってもんだ」


「俺は何もしてないですよ。見慣れない土地であたふたしてただけ」


「そういえば、あんたって不思議だよねぇ。テレビを見てると東京にもそんな格好している男はいない気がするんだけど。本当は違うんだろ? 海外?」


言っていいのかなぁ。言って楽になってしまいたい、どうせ信じてもらえないだろうけど。


「もし、俺が未来から来たとか言い始めたらどう思います?」


「そうだねぇ。あってもいいんじゃないか? 以外にロマンチストだからねぇ、私」


「信じてもらおうなんて思ってないですけど」


「雰囲気が全然違うからね、あんた。時代が違うと言われたらそうかもしれないと思う」


「遠い親戚って言ったでしょ? 俺は京子さんの孫なんです」


「はらぁ。またとんでもない事になったね」


「お母さん、タバコ落としましたよ」


「あ、いけない。」タバコを足で踏みつぶし、新しい一本に火をつける


「京子の孫と話してんのか、私。」


「そうですよ。ばあちゃんの家に遊びに来て、あそこの防波堤の上を歩いてたら落ちちゃって、目が覚めたら昭和43年だって言われて、もうめちゃくちゃですよ」


「そんなことが起きるもんなんだねぇ」


「出した100円が偽物だって言われて、もう大変でした」


「お金かぁ。どれ、未来のお金見せてみ」


「はい」


「ふーん。これは今のお金とは違うけど、偽物には見えない。本物のお金なんだろうね。」


ひいばあちゃんが言うに、俺のお金でまともに使える物は10円と5円くらいらしい。あとは全部違うということだ。お札も違う


「あんたお金持ちだね、京子と同い年の子どもが持つ額じゃないよ」


「と思うじゃないですか? こっちの時代のジュース、120円ですよ。コーラが45円て言われてびっくりしました。」


「ふふ、そうなのか。物価がこっちの3倍くらい? だったらその額はうなずけるかも」


「おもしろいですね~。俺が産まれた時にはお母さん、、うーん、だから、ひいおばあちゃんは既に亡くなってたんで。会えて嬉しいです」


「奇跡って、あったんだね。」


「何が起こるかわからないですねぇ。でも」


「でも?」


「京子さんには本当の事は言えないんです。もし、俺がここで何かしてしまって、京子さんと結ばれる男性が変わってしまったら、俺が存在しないことになっちゃうんで。」


「うーん、難しいけど。言ってることはわかる気がする」


「俺がこっちにどれくらいいるかはわからないけど、そんなに長くない気がするんです。なんとなく」


「・・・」


「まぁそれで良いんだよ、きっと。あまり長くいると良くないことが起きるんだろ? 帰るまではここに泊まっていれば良いさ。京子にも黙っておくから」


「よろしくお願いします。」


「そろそろ落ち着いたんじゃない? 戻ろうか」


「はい」


本来ならありえないはずのひいばあちゃんと話すことができた。


悩みを打ち明ける事ができてとても安心できたし、いつまで居れるかわからないけど、それまではがんばってこの時代を生きていこうと思う。

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