第8話 バンド練習

「おはようございま~す」


「おはよう!透くん」


「朝から元気だねぇ」


「別に!普通だよ!」


「そんなことないだろう、京子」


「お母さんは黙っててー!」


そんなこんなで昭和43年の朝が始まる。普通に話して、普通にご飯を食べる。お母さんとは昨日の夜ことについては無かったかのように接している。


「じゃあ、音楽室行くよ!」


「そんなに急がなくても行くって」


京子さんと一緒に学校に向かう。3人の方が先に来ていた


「ちゃーっす」


「ちゃーっすって何だ?」田中が聞いてきた


「あぁ、あいさつみたいなもんだよ、雰囲気で察してくれ」


「まぁ良いや。練習を始めよう」明が進める


「ところで、曲は何をするんだ?」


「ビートルズだな。これをやっておけば間違いないし、時間も少ないからな。」


「せっかくだからオリジナルの1つでもやったらどうなんだ?」


「オリジナルかぁ。どうだ?タツ、じゅんぺい」


「いいんじゃないか? 1曲くらいなら間に合うだろ」いつも無口な純平が口を開く


「そうだなぁ・・・」


「わかった、やろう」


「俺がまだ答えてないだろ!?」田中がつっこむ


無口な佐藤、おしゃべりな田中、まとめ役のじいちゃん。絶妙なバランスだ


正直、じいちゃんと思えばいいのか明と思えばいいのかわからん!


ま、いっか!


「ビートルズは各自練習するとして、オリジナルは俺が少しずつ考えておくよ」話を終わろうとする


「ちょっと待ってくれ」


「どうした?明」


「俺たちは今回の祭りのために結成した素人バンドだぞ、みんなこの夏まで部活をやっていたんだ。全然弾けないぞ」


「でも昨日聴いたときはちゃんと演奏してたじゃないか」


「まだこの曲しか演奏できないぞ・・・」


「あと2週間で、残り何曲残ってる?」


「3・・・」


「まじかぃ、、」


「頼んだぞ! 救世主!」田中の笑顔が腹立つ!


「たなかぁ、お前はみっちりしごいてやるからな!覚悟しとけよ!」


「ひぃーー!」


「京子さん。今日から祭りまでほとんどここで過ごすことになりそうだから、よろしく」


「はーい。みんながんばってね!」


「おう!」明の返事が強めだった


そんなこんなで俺が3人の楽器練習を見ることになった


ドラムの明は基礎練をしっかりさせる。基礎が身に着けばビートルズは問題なく叩けるようになるはずだ


ギターの田中は祭りで演奏する曲のフレーズだけをみっちりやっていくしかないな


ベースは俺の専門外だ、佐藤にはあまり力になれないことを伝えると


「いや、たぶん大丈夫だ。だいたい掴んだ」と返ってきた


この男はたぶん要領が良いタイプだ。本当に大丈夫なんだろう。


くそ~。現代だったらネットを使っていろいろ自分で調べることができるのに、この時代だと教本を買うくらいしかないぞ!


俺はオリジナル曲の製作と祭りでやる曲の歌詞を覚えなければならない。ビートルズはともかく、オリジナルはみんなの技術を考慮して、なおかつ良い感じにしなければならない。


うまくいくか不安になってきた。その頃、この付近である事態が進行していることを、俺たちはまだ知らなかった。

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