第2話 昭和43年

「あたたたた~」


まさか防波堤から落ちるなんて、完全に油断してしまった。


でも、けっこうな高さから落ちたのに、ほとんどケガをしていない。骨の1本は持っていかれても不思議じゃないのに・・・


「よいしょっと」


なんとかテトラポットの上を辿って砂浜に出る。アクシデントはあったけど、散歩を再開しよう。





うん?


なんか様子が違う


女の子のビキニの様子が違う? ガラの主張が激しい気がする、髪形も雰囲気が違う。男の髪形もそうだ、長いうえに膨らんでる。すいてないんじゃないの? ごわごわしてて。つまり、ダサイ。


「どういう、、こと?」


おかしい!やっぱりなんかおかしい!さっきといた人間が全部入れ替わってるみたいだ!


とりあえず、ジュースを買って落ち着こう、屋台はあそこか。


ふぅ、こういう時は炭酸でスッキリした・・・うん?!!


ビンジュースしかない。たまに旅館とか、古いボーリング場にビンのコーラの自動販売機とかあったりして、物珍しさにそればっかり買ったりしたもんだけど。それに品揃えわる!


ビンの、、ファンタ!? 見たことないぞ、アイスも初めて見る物ばかりだ。 このビーチはいつから懐古キャンペーン始めたんだ? 


懐古キャンペーン、懐古、そう! 古いんだよ! さっきから言葉が出てこなかったけど、ここにある物が全部古いんだ!


「すいませ~ん」


「はーい、いらっしゃい」


「これください」ビンのコーラを差し出す


「45円だよー」


145円か、ちょっとボッタくりだなぁ。でも海水浴場だからしょうがないか。財布からお金を取り出す


「お兄さん、だから45円だって」


「へ? 45円?」


「頭でもおかしくなったのかい?」


「ははは、そうなんですよー。ちょっと暑さにやられちゃって、ふらふらなんですー」全力の苦笑いを作る


「うん? この100円玉はなんだい?」


「え? 100円ですけど?」


「これは100円玉じゃないよ! どれどれ。へい、せい3年? なんだいこれ。偽物かい!」


おばちゃんの顔が一気に怖くなる


「ち、ち、ち、違います! これ!ほら! これはちゃんとした10円でしょ? 遊びで入れたおもちゃのお金入れっぱなしだった!ごめんなさい!」


おばちゃんから100円を瞬時に抜き取り、10円を渡す


「ふーん。間違いないようだねぇ」めっちゃ疑われてるー!


「あの、おばちゃん」


「なんだい?」


「頭がおかしくなったついでに教えて欲しいんですけど、今何年でしたっけ?」


「最近の若者は今が何年かもわかんないのかい? 困ったねぇ、先が思いやられるよ。昭和43年だよ」


「あ、あ、あー!!そうだったそうだった!!昭和43年だったー! 本当に???」


「あんた、なんか気味悪いよ。そうだって言ってるんだよ。格好もなんか変だし、ここらの人間じゃないね?」


「そうなんですぅ。俺、夏休みでちょっと遠いところからおじいちゃんの家に遊びに来てるんですぅ、あははあはは!」


『やっべぇ!!!!』


苦笑いしながら屋台を離れようとすると、2人組の子どもが元気に走ってきた。


「おばちゃーん! ファンタちょうだーい!」脇に空き瓶を抱えている。5.6本くらいかな?


「はーい、ごくろうさん」おばちゃんが空き瓶と引き換えに子供たちにファンタを渡す




え??


空き瓶でファンタを買ったのか? 子供たちのやり取りをジッと見つめていると、子供たちに見つかってしまった。


「お兄ちゃん、変なかっこー!」


「へ? そ、そうかな?」


「その変な靴なにー?」


「こ、これか? これはな、えーっと。そう!海外に旅行した時に買った珍しい靴だよ。穴がいっぱい開いてて、夏でも涼しいんだぞー」


「へぇ、お兄ちゃん海外行ったんだ!すごいね!ねぇねぇ、どこの国行ったの? あめりか??」


「い、いやぁ。君たちが聞いた事ないような国だよ、あはは。  おっとう!!もうこんな時間だー!お兄ちゃんは帰らないといけないんだー。じゃあ少年たち、バイバイ!」


全力でこの場から逃げる


そして全力で叫ぶ



「タイムスリップしてるーー!!!!!」

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