第22話 笑顔
※演奏シーンはよくわからないので描写してません、ご了承ください!
みんな練習通りだ。 唯一ちょっと心配だった田中も何も問題無い、女の子を前にさすがといったところか。
ビートルズの選曲は良かったらしく、だいぶ盛り上がっている。ここまでは想定内だったし、俺には失うものは何も無いから思いのほかリラックスして演奏できた。それも明と純平のリズム体がかなり安定しているからだ。あいつら才能あるなぁ
「じゃあ最後に、みんな大好き明君が歌いまーす!」
そう言うと歓声があがる。明がドラムから立ち上がり前に出てくる。
「ここまできたなら、後はどうなろうと大丈夫だ。頼んだ」
「お、おう。任せろ」
俺の仕事は終わった。後は明に任せよう。
「最後はオリジナル曲をやりたいと思う。聴いてください。」
”きょうこ”
明はこの曲名すごく嫌がってたんだ。でもなんとか説得してOKしてくれたんだけど、まさかこんなに恥ずかしげもなく言うとは思わなかった。俺の方がにやけてしまう
京子さんも驚いた表情でお母さんと顔を合わせているのが見えた。
俺を含め明以外は演奏が終わった安心感からか、ぐったりした表情で立っていた
明が歌い始める
もっと頭良い曲にしても良かったかな
みんな静かに明の歌に耳を傾けているな
!?
そっか、
わかってるから。
もうちょっとだけ待ってくれよ。
せめてこの祭りが終わるまでは
この時代に来れて良かったな
みんなに出会えて良かったな
今度会うときはみんなおじいちゃんか(笑)
明の演奏が終わると静かに拍手が起きた
明もほっとした様子だ
「まぁまぁかっこよかったぞー!!」
京子さんが叫ぶ
「/////」
明はそそくさと舞台から降りて行ってしまった
「北高バンドでした!あざした!」
それだけ言ってみんなで明の後を追いかける、明は裏で座り込んでいた
「うまくいったじゃないか。今までこんなこと言ったことないんだろ?」
「きっつい。 これが最初で最後にして欲しいもんだぜ」
「あきらぁ! それは無理だろう! お前モテるし」
「明にしてはよくやったと思う」
みんなで労をねぎらっていると京子さんが入ってきた
「お疲れ様!!」
「お! 京子ちゃん! 俺のギターかっこよかったっしょ!?」
「田中のギターかっこよかったよ!」
「えへ、えへへ!」
「じゅんちゃんはいつも通りだったね」
「まぁ。そういう性分だからな」
「明もよくがんばった! 曲名がそのまま過ぎて笑っちゃったけど!」
「透が作ったんだ!」
「でもあれはお前の曲だ。まぁ、精々自分でかっこいい曲作れるようになるんだな!」
あははは!!
みんなで笑いあう。この雰囲気を壊すのは気が引けるけど、、、
「みんな、実はこの祭りが終わったら帰らないといけないんだ。もう迎えも来てる」
「そっかぁ! さびしいけど、また来年も遊びに来いよ!」
「あぁ!! しんみりするのは嫌だから、もう行くな! みんな短い時間だったけど、ありがとうな!! また会おう!」
上がったテンションを利用してうまいこと軽めに別れを言う事ができた
「透くん!!」
足早に歩いていると後ろから京子さんが走って追いかけて来ていた
「京子さん、、」
「帰るんだね、もとの時代に」
「そうなんだ、けっこう催促されててさ。早く戻んないと」
「どうやって帰るの?」
「たぶんここに来た時みたいに堤防から戻れると思う」
「そっか」
「楽しかった? この時代は」
「うん! 知らないことだらけですごく新鮮だった。お母さん、つまりひいばあちゃんとは会ったことなかったから、亡くなってしまった人に会えるのは奇跡みたいな経験だと思うから、、」
「そうだよね。お母さんも未来の孫が見れて嬉しかったと思うよ」
「京子さんにはまず俺の父さんを育ててくれないとね! 俺が産まれなくなっちゃう」
「あはは! そうだよね!今はあまりわかんないけど、その時が来たら透くんを思い出さないとね」
「よろしくお願いします!」
堤防の上を歩きながら俺が落ちた所と大体同じ場所に着いた
最後に言いたいことを必死に探すけど、中々思いつかない
「何か言い残したことある?」
無理やり京子さんに話を振ってみる
「うーん、、」
「思いつかないや。孫が今から元の時代に戻るなんて実感ないし」
「そうだよね、俺もそうなんだ、、」
「いろんな事、あきら、、じいちゃんには内緒だからね」
「うん」
「それじゃ。また後で!」
京子さんが少し涙ぐんでいるのを見ながら、テトラポットに向かってダイブした
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