第11話 喧騒

「京子さん。でも俺、長くはここに居られないんだ。いずれ帰らないといけない、、」


「私を残して?」


「ごめん、、1度帰ったらたぶんもうここには帰ってこれない」


「そっか。ズルいね、透くん。」


「・・・・」


「何悲しそうな顔してんの!」京子さんに抱きしめられる


「だって、、こんな事って・・・」


「じゃあ、死ぬまでしっかり思い出に残るように。私を刻まないと!」


「え?」


「私も透くんも、この後誰とお付き合いしても、結婚しても、お互いが最初の相手になったの!」


「そうだね。二度と忘れないかも」


「これで私は満足!」


2人で少し笑いあったあと、もう満足してしまった俺たちは家に帰ることにした。若気の至りというやつか、結局夕方になる前には家に着いてしまった。


「俺、あいつらの様子見てくるね」


「え~、もうちょっと一緒にいようよ、、」


「帰ってくればいつでも一緒にいられるだろ?」


「まぁ、そうだけど・・・」


そう言って家を飛び出した。


どうしようやってしまった、これで後戻りはできない。上がったテンションを冷やしたいというのもある。俺は18のばあちゃんとキスをしたのだ


「はぁ、はぁ。よう、やってっかー」


「おう、透。家の手伝いはいいのか?」


「あぁ、早く終わらせてきた。」


「とおる~! ここ!できるようになったぜー!すげぇだろ!」


「田中、声がでかいよ、、俺は走ってきて疲れてんだ!」


「いいじゃねぇかよー。女子の前ではこんな必死に練習してるとこなんて絶対見せたくないし!」


「明はどうだ?」


「あぁ、少しずつだがブレが少なくなってきた。やっぱできるようになり始めると楽しいな」


「純平は、、問題なさそうだな」


「おう」


結局ほとんど練習せずに終わってしまった。


「みんないつも何しながら帰るんだ?」


「まぁ、話ながらちんたら帰るくらいか」


「どっか飯でも行かないか? 俺はまだみんなとだべったことないし」


「おう!いいねぇ!行こうぜ行こうぜ!」


「田中うるさい!」


男づきあいは気楽でいいもんだな。女の子には女の子の良さがあるんだが、初体験の俺には精神的な負担が大きすぎる。


そんなことを思いながら話していると後ろからか声をかけられた


「おい、お前ら北高だろ」5人組の学ランを着た奴らが立っている


「おまえらは、西高か?」田中が答える


「よくわかってんじゃねぇか。今な、俺ら北高潰ししてんだわ。大人しくやられてくれねぇかな?」


「この辺って、こういうこと言うやつが普通にいるのか?」明に尋ねる


「まぁ、たまにいるな。」


「俺、喧嘩とかしたことないんだけど!」


「大丈夫だ」


「お前ら、なんで勝てるとか思っちゃってんの~!?」田中が相手に吹っかける


「透は下がってろ、ここは俺たちがやる」明がおもむろに近くに落ちてた棒状の木を掴む


「まぁ、よゆーだから。見てなって」田中が頼もしい、、だと!


俺が後ろに下がると、明、田中、純平が5人組に向かって歩き出した


「お前らただで済むと思うなよ!」向こうも突っ込んできた


「ふうん!!らああ!!」純平があの巨体で目の前の1人を豪快に持ち上げて放り投げた。見た目からなんとなく予想してたけど、すげーパワーだ。


田中はスピーディー相手の動きをかわし、顔面にパンチを当てていく。田中らしいスタイルだ


明は竹刀のように木の棒を持ち、相手に反撃を許さぬ猛攻で敵を倒していく。


純平が秒で1人を倒したこともあり、あっという間に最初に声をかけてきた一人だけになった


「お、お前ら、まさか、北高の4人衆か!!」


「それはお前らが勝手に言ってるだけだろう、相手を選ぶべきだったな。純平」


純平が最後の1人を持ち上げると、道路わきの茂みにブン投げた。


「お前らめっちゃ強いな!すげぇ!」


「いや、別に喧嘩にあけくれてるわけじゃない。純平は柔道で全国に出るほどの男だし、俺は剣道、田中は昔やんちゃしていたらしく、喧嘩がうまい。たまたま強かっただけだ」


「たなかぁ!お前やるやん!」


「だろー! でも喧嘩ばっかやってても女の子にモテないからやめたんだ! ギター弾けた方がかっこいいからな!」


「純平はそんな気がしてたよ」


「うす」


「京子には内緒にしといてくれ。あいつ喧嘩が嫌いだから、怒られんだよ」


「明も京子さんには全然敵わんな!」


「うっせ!」


余裕だったとはいえ、横からちゃちゃを入れられたこともあり今夜は何もなく解散した。


明日こそみんなで飯を食うぞ!


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