オークの被害者はいつも女

中二病とはどんな病気だ?

悲痛な依頼 -1-

 ミサキさんが、青い顔をして走ってきた男に駆け寄った。それも一人ではなく、五人ほどいる。

「どうしたのですか?」

「オークが、俺の妻を襲ってきて」

「まあ、大変」

 ここに来た男たちの恋人も妻も娘も同じ目にあったらしい。おかしい、今はまだ日が高い。オークは夜行性なんだ。出てこれるはずが。

 男たちの顔は悲痛な訴えを俺に向けてきた。

「頼む。依頼料はここにある。だから、オークを倒して妻を娘達を助け出してくれ」

「分かった、俺は問題ない。ミサキさん、良いですよね」

「ええ。でも、どうしてこんな時間に」

 急かす街の男たちを落ち着かせて、とにかく情報を集めなければならない。万が一にも、昼の光に強いオークだったらこの街一帯の女たちが危険に晒されてしまう。

 《加護の森》で山菜を取っていた時、オークが突然現れて《ゴブリンの森》に引き釣りこまれてしまった。それを目撃した女連れが助けを呼ぶため逃亡。しかし、オークに追いつかれ、またそれを目撃した女が街に向かって逃亡。またそれを……という残酷な伝言ゲームのような繰り返しでやっと街の男たちに伝わったときには、女たち五人はみんな《ゴブリンの森》奥に囚われた、というわけらしい。

 男たちには街に帰ってもらうことにして、ミサキさんには念のためギルドにオークが嫌うハーブを置いてもらうことにした。

「ねえ、オークって、まさかよくある薄い本のオーク?」

 スピカがまたわけの分からんことを聴いてきた。とりあえず説明は必要だろう。剣になってもらわなければならんのだから。

「オークってのは、豚頭で肌が緑色のモンスターだ。やつらはメスと交尾をすることしか頭にない。しかもメスなら種族や動物を問わない最低な怪物だ。陽の光を極端に嫌うから昼間は出てこないし、夜は女の外出は禁止されているおかげで、被害は殆ど無い。でも、長い間天気が悪いとたまに出てくるし、増えすぎても同じだから、定期的に俺たち冒険者が駆逐しているんだ」

 このところは晴れの日も続いていたし、オークがでくるような条件はないはずだが、一ヶ月前に見た浅いトンネルが何か関係しているのか。

 通常のオーク狩りは灯りをともして行うのだが、女がさらわれた時は不意をつくためにも灯りは持ち歩かない。それは既に犯されているからだ。行為に夢中になっているところへ忍び寄り討つ。灯りを持ち込むと逆上させてしまい、女たちが殺されかねない。

 解説を聴いたスピカの顔が青ざめた。

「ねえ、まさか、私ら使ってそんな奴らを狩ろうって言うんじゃ」

「当たり前だろ。それと、心配するな。《ファング》の姿になってるなら襲われないだろ」

「何言ってんのよ。使われる身にもなってよ」

「足、治してもらっただろ」

「そ、それはそうだけど。まだうまく動かないし」

「ああ。新品の筋肉と骨だからな。慣れるまで時間はかかる」

 俺はアケミさんにも意思の確認をした。

 するとすぐに頷いた。

「剣になっても痛みとかないみたいだし、良いんじゃないの」

 スピカはため息をついて降参のポーズを取った。

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