勘違いしないで

なにビクンビクンしてんだ? -9-

 急に静かになったスピカを見ながら、ミサキさんに聴いてみた。

「これって、どういうことでしょう」

「《ファング》に詳しくないから分からないわ。んー、でも」

「でも?」

「《ファング》を否定したときに倒れた気がしたんだけど」

「そうだったかな」

「分からないけど」

 俺はおもむろに腰に下げている《ファング》を手にとって見た。これは剣身を引き抜いた後のものだ。これ自体は細すぎる上に刃がない。武器としても道具としても全く使い物になりそうにない。まあ、力を込めれば突き刺さりそうな形はしている。

 せめて刃がついていれば狩りに使えたのに、と剣身に触れた。

「あう⁉」

 急にスピカが変な声を出した。

 まあさっきの言い合いで眠って夢でも見ているだろう。俺はどうにかならないものかと、剣身を先から柄の付近まで、つつーとなぞった。

「あんっ、あふ⁉ あ、いや、やめて⁉」

「おいスピきゃん、さっきなら何変な声出してんだよ」

「し、知らないわよ。急に身体を誰かに触れられているような気がして。……んふ⁉ くぅはっ」

「おかしなやつだな」

 俺は裏返してどこか使えそうな箇所がないか、丹念になぞってみた。

「いや、お、お尻が。あ、今度は背中、あ、そこはそこは⁉」

「何なんだよ、さっきから」

 俺が赤らめながら抗議すると、向こうは腰を上げて反論した。

「うっさいわよ! 出したくて出してんじゃないわよ。鬼ムカつくんですけど」

 やれやれと、また剣を調べる。

「あははは、くすぐったい。あははは」

「お前な、いい加減にしろ。人が剣を調べているときに」

「もしかして。その剣よこしなさい」

「おい、何するんだ」

 スカ……。スピカの手が魔剣を通り抜けた。

「あれ? よこせっ」

 スカ……。スカスカ。まったく触れていない。

「そんな、どうして」

 そのやり取りを見ていたミサキさんが、提案を出した。

「ザンクさんに来てもらいましょう。武器屋なら何か分かるかもしれない。ねえ、お使い頼まれてくれる?」

 ギルドの店員は頷いて出かけていった。

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