双剣使いザリュウ様の復帰だ -2-
「ミサキさん、聖水と弁当用意してもらえる? もしかしたら群れの可能性もある。近衛隊に連絡もしておいて」
「弁当は、今すぐには無理ね」
「じゃあ、丸薬でいい。それと金平糖と水筒」
「ちょっと待っててね。みんな、聴いてたわね。さあ仕事よ」
ギルドスタッフに声がかかると、一斉に動き出した。スタッフの人数はミサキさん含めて男女五人。それぞれ役割分担をしている。もっと大きなギルドになると数十人が一斉に複数の冒険者たちのために動いてくれるが、ここは残念ながら弱小だ。いつかここを大手にしてやりたい。
俺は用意されたアイテムをザッパーに近づけると、全て吸い取った。
「なによ、それ。超凄くない?」
「はぁ……、ザッパーも知らないのか。これはアイテム入れだよ」
「アイテムってリュックとかじゃないの」
「何百年前の話ししてんだ。今じゃこの石一つで良いんだよ。あとは腰に下げてけばいい」
アケミさんも興味津々に見ていた。
「これ……チタンね」
「チタン? なんだそれ」
「金属の名前よ。ここじゃそういう呼び名じゃないっぽいけど」
「材質についてはあんまり興味ないな。何も入ってなければ軽いし、落としたくらいじゃ壊れないし」
「でしょうね」
スピカがザッパーに指を差していった。
「ねえ、まさか私達も剣にされてここに入れられるんじゃないでしょうね」
「武器がすぐさま抜けなきゃ意味ないだろ。腰のこの革フォルダーに入れるんだよ」
俺は、両腰のベルトに下がった革フォルダーを指した。内側は切断に強い素材で作られている。軽くて丈夫なので鞘を使わずこれに納刀する同業者も多い。今は剣身の抜けた《ファング》が納められている。抜けないようにゴム紐で留めてある。
「じゃあ、出発するぞ。二人とも剣になってくれ」
「嫌よ。また、アソコにそれを刺されるなんて」
スピカが駄々をこねた。
俺は言い返した。
「じゃあ、ここから歩くか? 《ゴブリンの森》はモンスターだらけだぞ。その奥にオークのいる洞窟だ。お前を助ける剣はない」
「脅すの」
「それにお前、まだ新しい脚に慣れてないだろ」
「んもうっ、分かったわよ。ただし、目をつむっててよ」
「それじゃ挿れられないだろ」
「手を握るから」
「分かった。好きにしろ」
スピカは目をつむった俺の腕を握った。ゆっくりと《ファング》を持つ腕が上がると声が聞こえた。
『良いわよ』
剣に戻ったスピカが言った。
アケミさんの方に向いた。
「私は、見られても平気よ」
と首に腕を回してきた。そこまで密着するとかえってやりづらいが、とにかく挿れようと手を下げた。すると不意にキスをされた。
「な⁉」
「前払い」
と言い残すと、みるみる剣の姿になった。俺の両手には
鎖を引いてみる。すると自在に伸縮というより柄尻から鎖が出て来る。理屈は分からないが、ザンクによるとこれが選ばれた証の一つらしい。
その鎖を前腰に通すようにして、革フォルダーに《ファング》を納めた。
「ミサキさん、みんな。行ってくる」
「気をつけてね」
「ああ。久々の狩りだ」
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