ロリコンは死ね -4-

 俺は無我夢中でオーク共を殺し続けた。どうやって殺したのか覚えていない。

 残りは中央に座していた男一人になった時、突然左半身が動かなくなり、膝をついてしまった。

『いや……。なに、これ……、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 スピカが叫び声を上げた。アケミさんの魔眼をスピカも共有出来るのだ。そのことに気がついた彼女は、今のこの惨状を目撃し動揺してしまった。

 男が笑いながら言った。

「おや? BBAの声がするねぇ。暗くて見えないが、そいつもオークで犯してやろうか。いひひひ」

 どうやら気がついていないらしい。俺は罵倒するように教えてやった。

「てめぇが飼ってたオークどもは、全員俺が殺した」

「な、男? さっき変なこと言ってたやつか。もう死んだかと思ってたら」

「だったら、てめぇの目で見てみな」

 俺はザッパーからランタンを取り出し、明るさを最大にして叩き割った。

 すると燃料が漏れ火が付き、この洞穴ほらあなを照らした。

 炎はオークの死体の山を鈍く照らした。それは無情にも、無残に犯し殺された幼女たちも照らすことになった。

「ひっ、お、オークが。無敵の僕のオークが」

「そんなことよりも、てめぇがしたことを見ろ! まだ何も知らない女の子をこんな目に合わせやがって! この外道がぁっ!!」

 燃料はすぐに燃え尽き、再び暗闇となった。

 男はまた高笑いした。

「それがどうした! 女はみんな俺のおもちゃだ! 俺のザーメン飲んで孕めば良いんだよ。あはははっ」

「てめぇ!」

「おっと動くな。といっても、どうやらお前はダメージを受けたみたいで動けないようだが。なら、コイツがお前の相手をしてくれるよ。来い、オーガ!」

「な、なに⁉」

 真上からオーガが地響きを立てて降り立った。こいつはオークの上位種だ。戦闘力も非常に高く、オークたちはオーガに絶対服従する。今一番遭いたくないモンスターだ。また、最も見たくない相手だ。こいつは年中股間を勃起させている。何にでも性的興奮を高める変態の中の変態だ。

 男は杖を振り下ろした。

「行け、オーガ。あいつを殺せ」

「ブホォォ!!」

 あの巨根で殴られたら、人間なら良くて下半身不随、悪くて即死だ。何度蘇生されたって足りやしない。

 自慢の巨根をブンブン振ってこっちに走ってくる。大きさは人間とさほど変わらんが、アレの大きさは馬の二倍だ。

 くそっ、一か八かだ。

 俺はザッパーから、拾った杖を取り出し、オーガに向かって命令した。

「止まれ!」

「ぶひっ?」

 オーガがピタリと止まった。もう少しで、こいつの巨根にビンタされるところだった。

 気持ち悪い巨根越しに俺は言ってやった。

「どうだ! 外でお前の仲間の死体から拾った杖だ。どうやら同じものだったみたいだな」

「ち、クローンが戻ってこないと思ったら、殺したのはお前か」

「クローン?」

「だが、その杖は俺が作り出したコピーだ。消してしまえばいいだけのこと」

 男が指を鳴らした。

 すると握っていた杖が消えてしまった。

「なん……だと⁉」

「あはははっ。これが俺が異世界で手に入れた能力、コピー&デリートだ。これでお前をオーガからお守るものはもういなぁい」

 万事休すか。俺は周りを見て何か手はないか探した。

 ……何もない。

 男は再び杖をかざした。

「オーガ、殺せ!」

「ぶひぃぃぃぃん」

 巨根が振りかぶった刹那、俺は後ろへバク転し体勢を整えた。

「な、お前、ダメージを食らってんたんじゃないのか」

「違うな、俺はピンピンしてるぜ。お前が杖を消してくれたお陰でな」

「何を言っている?」

「周りをよく見てみろ、何もないだろ。いいや、もともと何もなかったんだ」

「は? ……ああああああ、ロリたちが」

 そう、個々にあった死体がオークも、そして幼女も含めて消えたのだ。つまり――

「全部、お前が作り出したコピーだったってことだ。お陰で俺の相棒も目が覚めたよ」

『誰が相棒よ! ……このロリコン、ふざけんなよ。女の子の死体なんか見せやがって!』

『あら、今回は気が合うわね。私も同じことを考えてたのよ』

『『ロリコンは死ね!!』』

 男は頭を掻き毟った。髪の毛からフケが大量に出ている。

「なんなんだ、どこにいやがるんだ、クソBBAども! もういい、オーガ、まずはそいつを殺せ。女どもは後で犯せ」

 俺は右剣をオーガに向かって投げた。それは大きく逸れてしまう。

 オーガはチャンスとばかりにこっちに向かってきた。

「掛かったな」

 俺は鎖を操り、オーガを巨根ごと巻きつけた。やっぱりだ。こちらの意思で鎖の透過・不透過を操れる。

 俺は帰ってきた右剣を取り、鎖を縮めながら飛び出した。その勢いは収納の力で加速していく!

「喰らえ! この豚頭がっ」

 心臓めがけて魔双剣を突き刺した。今までに感じたことがない分厚い手応えと同時に、臓器に達した感触があった。

「スピカ、アケミさん、鎖を思いっきり戻せ!」

『やってやる!』

『いけぇ!』

 赤い鎖はオーガをどんどん締め付け、突き刺さった双剣は胸板を引き裂いていく。そして耐えきれなくなった皮膚は、切断を許した。

 肺と心臓が骨とともに飛び散り、胃や肝臓が吹き出した。血と共に内容物が噴出。腸が蛇のように暴れまわった。

 俺は汚い花火の血を浴びながら、男に詰め寄った。

「俺の身体が汚れちまったじゃねぇか。どうしてくれんだ、あぁ?」

「ひっ、ひぃぃぃ」

「待て!」

 止めたのは街の近衛隊の連中だ。息を切らせて駆けつけてくれたらしい。

「そいつが一件の主犯かどうか、尋問しなければならん」

「ちっ。こんなクソにそんな慈悲は要らねぇだろ」

「ダメだ、ザリュウ。冷静になれ」

「あんたらは、さっきまでの光景を見てないからそんなことが言えんだ!」

「やめろっ」

 俺は近衛隊の静止を無視し、男に剣を振り上げた。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

「この畜生がっ」

 近衛隊が俺に飛びかかったと同時に、剣を捨てた拳で男をぶん殴った。

 男は顎が変形し、そのままダウン。

 俺は近衛隊を振り払って、剣を拾った。

「俺はもう帰るぜ」

「すまん、ザリュウ」

「気が変っちまうから、話しかけんな」

「わかった」

 俺は舌打ちすると、取るものを取って外に出た。日はすっかり暮れて、空は赤くなっていた。

「帰るぞ」

『ねぇ、なんで見逃したのよ。あんなロリコン』

「こんだけのことをたった一人でやれるはずがない。背後に何かいやがる。ここであいつを殺せば、闇に消えてしまうだろ」

『へぇ。あんたって以外に冷静なんだ』

「うるせぇよ。それよりも、大丈夫か」

『今日は、もうお風呂に入って眠らせて……』

 スピカはそのまま眠ってしまったようだ。

 アケミさんが言った。

『あの男、おそらく遠藤秀一ね』

「マジかよ。……てそういうことか。ゴブリンに殺されたあいつはあの野郎のコピーか」

『そう。それから今夜は私も寝るわ』

「どうしたんだ、珍しい」

『子供のあんな物見たら、いくら幻でも萎えるわよ』

「まあ、そうだな。そうしてくれ」

『その代わり、明日の夜はたっぷり付き合ってもらうわよ』

「そういうと思ったよ」



 今回の獲得アイテム――

・ゴブリンの心臓の魔石 五個

・オークの心臓の魔石 三個

・オークの陰部の魔石 三個

・オーガの陰部の魔石 一個

 売却価格――金貨十枚銀・貨五十枚

 報酬――金貨五枚

 そのうち、酒場のツケ精算で残り――金貨一枚・銀貨十枚



 ――ギルドが大きくなるのはいつの日やら。(了)









-------------------

-------------------

連載中止のおしらせ

この物語をこれ以上続けることが困難になりました。

私の周りの環境ではなく、作品の準備不足による破綻です。

読者の皆様、「おれたた」になってしまい申し訳ございません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界住人が集まる異世界の冒険者と魔双剣のお嬢がふたり 瑠輝愛 @rikia_1974

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ