木星

本日は東京大空襲の日です 防災無線は遠く 遠くて



愚かなる人間どもに滅亡を迫る物語が多すぎる



満月の花嵐はなあらしはらはらと屍体が埋まっているやもしれぬ



わたくしを削らないでよ圧してくる音の刃で削らないでよ



闇色の目をした男が疑いの種を撒いては育てています



フォルダごとゴミ箱に捨て削除せよ記憶は時に邪魔をするから



忘れても忘れてもまだ忘られぬわたしのメモリを初期化しなくちゃ



「ぼくたちはシュレディンガーの猫じゃなし、半分死んでいる暇はない」



誰からも信じてもらえぬカサンドラ正しいことは知らぬのが花



王様の耳の秘密を叫ぶためこれから穴を百個ほど掘る



核融合炉に堕ちてゆく歌を聴きひとり泣きたくなる午前二時



ぶらんこを最後に漕いだ遠い日をわたしのからだは忘れていない



もしここが木星ならば青空に泣きたくなったりしないのだろう



はやぶさが地球に還ってくる日まで世界の終わりが来ませんように



さようならわたしは今日もここにいて手の届かない夕焼けこやけ

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