【短歌集】ゆうしゃのぼうけん

その他ライトノベル

赤坂パトリシア

『ネコばあさんの家に魔女が来た』

もう別の生き物だからわたしたち線を引くのが巣立ちのかたち

綾里けいし

『幻獣調査員』

人はすぐ死ぬから今は守りたい、いい子いい子と撫でるその手を

祝いとは呪いであるか優しさの甘いたまごに囚われている

大切な者を亡くした憎しみを失くした声で吠える老犬

人として生きると定め罪を負い、ああ、でも、ぼくはかいぶつだから

（どうか、また、いっしょに、たびを）彼は今、世界を救う勇者になった

ひとりでは寂しい、世界は美しい、長い旅路に咲く白い花

石川博品

『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』

永遠に夢の途中にいられたら何も失わずにいれたのに

大塚英志

『僕は天使の羽根を踏まない』

前世とかそんなことよりこれからは今の二人で大人になろう

倉本由布

『こどもちゃんねる‐鎌倉幻影‐』

あの人に囚われているいつまでもそれを望んでいるのはわたし

『月の輪廻～皿屋敷ものがたり～』

この昏（くら）い井戸の底でも二人なら堕ちてゆきたい永久（とこしえ）の闇

『星姫紀行』

もう一度あなたに出逢うもう一度誰かを深く傷つけてでも

『雪の系譜‐竹御所・鞠子‐』

この恋を殺すと決めたあの日から心の雪がはらはらと降る

甲田学人

『ノロワレ 怪奇作家真木夢人と幽霊マンション』

流し雛水面（みなも）を赤く埋め尽くしそのマンションに棲むのは何か

奈須きのこ

『空の境界』

自分さえ生まれなければ世界とは平和だったと気付いてしまう

諸口正巳

『謳えカナリア』

唄いなさい、貴女は自由！　灰の降る世界で炎と滅びの歌を