【短歌集】ゆうしゃのぼうけん

漫画

浅野いにお

『虹ヶ原ホログラフ』

世界なら滅びるでしょう一面の蝶に犯され融けていく虹

『ソラニン』

戻れない私は前へ生きていくあのメロディーを胸に抱いて

安倍吉俊

『リューシカ・リューシカ』

せかいとはとてもふしぎでたいへんでリューシカリューシカそらをみている

一条ゆかり

『砂の城』

手のひらをすり抜けていく幸せと波打ち際の小さなお城

『プライド』

誇り高く命は続き「わが母の教えたまいし歌」を奏でる

井上雄彦

『SLAM DUNK』

憧れのメガネの木暮先輩が年下であることは忘れる

浦沢直樹

『PLUTO』

もう武器を持ちたくないとロボットは鋼の腕でピアノを習う

憎しみにいつか終わりが来る日まで僕らは君を離しはしない

漆原友紀

『蟲師』

枕には夢の小路があるのだと昔だれかが言っていました

こうの史代

『夕凪の街 桜の国』

わたしたち桜の国で生きてゆく幸せになっていいよねきっと

『この世界の片隅に』

九つの嶺のふもとへ帰りましょう　わたしを見つけてくれた、貴方と

貞本義之

『新世紀エヴァンゲリオン』

触れ合って傷つけ合って、でも僕はもう一度君と手をつなぎたい

白井弓子

『天顕祭』

地の底の死者に伝へん古里の風清らかに今も吹けりと

士郎正宗

『攻殻機動隊　GHOST IN THE SHELL』

広大なネットの海にダイブしてゴーストが今ささやくほうへ

中村光

『聖☆おにいさん』

鍋料理「悪を救う」と思いつつせっせと灰汁を掬っています

灰汁すくうたびにマーラが悲しんで罪悪感と戦っている

蜷川ヤエコ

『モノノ怪』

花嫁が屋敷の門をいづるとき猫やお前も自由におなり

萩尾望都

『なのはな　幻想「銀河鉄道の夜」』

鶏も牛もわらしもともに乗せジョバンニ線はひかりを走る

船戸明里

『Under the Rose　冬の物語』

拒絶してそれでも母を追い求め少年は神に何を祈るか

槇えびし

『天地明察』

人生の碁盤に挑む幾度でもいつか天地に手が届くまで

宮崎駿

『風の谷のナウシカ』

わたくしを愛さなかった母すらも闇にまたたく光のひとつ

ヤマザキマリ

『テルマエ・ロマエ』

いい湯さえあれば言葉はいらなくて実現されしパクス・ロマーナ

大和和紀

『杏奈と祭りばやし』

ねえおじさんもう一度だけ叩いてよ遠いあの日の祭り太鼓を

『紀元2600年のプレイボール』

白球を追う夏の日を始めようあの日途切れた夢の続きを

『ヨコハマ物語』

暁の港を出でし船人よあなたが帰る場所はここです

吉田秋生

『吉祥天女』

般若でも天女でもある女ですああ血塗られて綺麗ね桜

『櫻の園』

限りなくわたしは少女開演のベル鳴るまでのほんのひととき

吉野朔実

『少年は荒野をめざす』

少年になれないことを受け入れたときに始まるわたしの荒野