概要
実は彼女は魔法少女であり、人知れず怪物との戦いを続けていた。
……しかし、華やかなイメージとはまるで違う。
彼女は日々を虚ろに過ごし、ただ淡々と怪物退治をこなす。
そこにどのような事情があるのか。
なぜ魔法少女をしているのか。
彼女の心を知るため、由は奔走する。
◆主な登場人物
・南ヶ川由:主人公。県立宮址森高校の一年生。彼の主観においては入学式の日に、ひょんなことから山潟花紗里と出会う。
・山潟花紗里:魔法少女ネガティブフラワー。後ろ向きな性格をしている。そして、それこそが自分だと決めている。
・白鴉:魔法少女ネガティブフラワーの介添。いわゆるマスコット。花紗里に魔法少女の才能を見出し、スカウトした。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!それは指先から流れ落ちる青春の・・・
独特な緊張感と力強い筆力による冒頭から、
すくった手から光の粒や清らかな水が零れ落ちていくような青春絵巻に。
主人公は決して力強いわけでも特別な才があるわけでもないですが、作品を通して芯の確かさを持ち、折れることなくヒロインをささえ、最後には『特別』を探す少女に光明をもたらす。
まるでムービを見ているかのようなボーイミーツ魔法少女の物語でした。
字数制限がなければ話し的にもう一波乱あるかなという感じでもうちょっと続きを読んでみたいという気がしました。
あと蛇足ながらサービスシーンの位置が絶妙でした。これも構成のうまさゆえでしょうね(笑。 - ★★★ Excellent!!!得ることは失うこと、失うことは得ることだ
魔法少女とはプラスする物語だとどこかで聞いたことがあります。
マイナスからプラスを足してゼロに還っていく物語だとも。
ネガティブ思考の魔法少女ネガティブフラワー(山潟花紗里)、その目撃者としての主人公「南ヶ川由」。
そんなボーイミーツガールから物語ははじまります。
邪道魔法少女もすっかり定着しましたが、そう言ってしまうには素直過ぎるほど素直、王道過ぎて少しだけ脇道に逸れて転んでしまった、そういった趣があります。
戦い自体に情熱はなく、無機質にシステマティックに組み上げられた魔法少女と敵(バッド)との戦いも舞台装置のように営まれるだけのように。
舞台で舞い踊るバレリーナと見…続きを読む - ★★★ Excellent!!!こんなにも胸を締め付ける、ボーイ・ミーツ・魔法少女な青春。
日常を蹂躙する異形と、それらを狩る魔法少女。
非日常の一端に触れたなら、手を伸ばさない少年はいないでしょう。
けれどそこにあるのは、いかにも魔法少女的な華やかで煌びやかな活躍とは、到底かけ離れた世界。
魔法少女ネガティブフラワーこと花紗里ちゃんの世界は、強固な壁に塞がれています。
人知れず強大な敵と戦う日々、今なお己を縛る過去の出来事。
どちらも、単なる一般人でしかない主人公・由くんには、覆しがたい難題です。
でも。
たとえ超上の力を持つ魔法少女であっても、その素顔は一人の女の子なんだと知ってしまったら。
輝きも届かない遠い遠い場所にあるのだとしても、それでも、救いの光があってほしいと願…続きを読む - ★★★ Excellent!!!重厚かつ流麗な筆致で、美しい世界を描く、魔法少女の青春物語
青春は、元来ネガティブなものだと思います。膨れ上がる全能感と、それに比例しない現実とのギャップに苦しむ世代。自分の力ではどうにもならないものの存在に、膝を折ることこそが青春と言えるのではないでしょうか。
主人公の由は、どうにもならない非現実のような現実と、それを打ち崩す魔法少女を同時に目にします。男の子なら、ワクワクしないわけがない。でも、その魔法少女が、自分と同じように、どうにもならない現実を目の当たりにし、それに抗おうとしている、ただの女の子だとしたら。そこに由君は、どのように関わっていくのでしょうか。
重苦しくも静かに、情緒溢れる表現力で美しい世界を描く本作。この先、二人がどのような青…続きを読む