『猫が焼きもち妬くので結婚できません』
大輝
第1話モテないワケじゃないんですけどね
【天空路家】
「lapis(ラピス)ただいま」
「ニャー」
「良い子にちてまちたか~?」
「ニャー(寂しかったわよ)」
この黒い女の子、綺麗なブルーの目をしているので、lapis lazuliのラピス。
去年母の家で産まれた子を1匹貰って来たんだ。
その頃ちょうど天然石の店をオープンして、店の名前もlapis 。
天空の破片とか、フェルメールブルーとか言うけど、まあ、幸運を呼ぶ石の代表みたいなとこ有るからね。
本当は、僕の名前が天空路遊だから、シャレみたいに思いつきでつけた名前なんだけどね。
「ニャー」
「お腹ちゅきまちたか?今あげるからね~」
「ニャー(ご飯早く)」
カリカリを置いて出かけるんだけど、お留守番が大嫌いで、僕が帰って来るまで1つも食べてない時が有るんだ。
だから、時々様子を見に帰って来る。
物凄い甘えん坊なんだ。
それに、とんでもない焼きもち妬きだ。
パソコンやスマホ見てると邪魔するし、女の子に焼きもち妬くし…
lapisと仲良く出来なくて、最近彼女と別れたばっかり。
猫好きな人じゃないとダメだよな。
でも、誰が来ても「シャー!ウー!」って言うんだよな。
lapisが怒らない女の子は、春陽ちゃんぐらいだ。
さて、店に戻るぞ。
「良い子たんちててね~」
「ニャー(何が言い子たんちててね~よ)」
〈出かける遊を、窓から見送るlapis〉
あーあ、またお留守番ね。
それでまた、良い子にちてまちたか~?って帰って来るのよね。
どうして赤ちゃん言葉なのかしら?
まあ、パパちゃんの赤ちゃん言葉は我慢するわよ。
でもね、この前来た女の子なんて、ニャンコ言葉よ。
寂しかったニャとか…
私、そんな言葉使わないわ。
【天然石ショップlapis】
「お兄ちゃん、じゃなかった、オーナー。アクアマリンのイヤリング、どの石で作りましょうか?」
「これとこれで1組。これとこれ、これとこれ」
「はい」
春陽ちゃんは、近所の子で生まれた時から知ってるんだ。
今年大学を卒業して、ここで働いてくれている。
この前店に来たら、普通に店長と面接してた。
そして、採用になったんだ。
実は僕は不器用で、ブレスレットを作るより、イヤリングやストラップを作る方が時間がかかる。
だから、器用な春陽ちゃんが作ってくれると助かるんだけど、天然石は1つ1つ違うから、選ぶのは僕がやるんだ。
「明日美さん、セッションルームのお茶の用意お願いします」
「はい」
「オーナー、後10分でセッションご希望のお客様がいらっしゃいます」
「了解」
この人が店長の石垣麻友さん。
見かけによらずテキパキしている。
この2人が居るから、僕は助かっているんだ。
「オラクルカードには触らないでね、オーナー以外の人が触れると、エネルギーが変わるから」
「わかりました」
【セッションルーム】
お客様がいらした。
お名前だけ伺ったら、カードを引いてもらう。
色々お話しを伺ってからでは、雑念が入るといけないからね。
寿宴様がお引きになったカードは、アメトリン。
目標を持ってと言う意味のカード。
詳しいメッセージをお伝えすると、心当たりがお有りになるようだ。
「実は、友人がお花屋さんを閉めると言うので、私がやります!って言っちゃったんです。ただお花が好きなだけで、経営なんて、どうして良いかわからないのに…」
それで、引いたカードが目標を持って、のカード。
「占い、当たってます」
占いとは、ちょっと違うんだけどね。
「この石でアクセサリーを作るんですか?」
「いいえ、必ずしもそうでは有りませんよ」
石のカードの中には、アクセサリーの加工に向いていない石も有るからね。
カードリーディングは、お客様のハートの奥にアクセスして、ご自分でもお気づきでない悩みを知る為なんだ。
後は、色々お話しして、今必要な石をお選びする。
お花屋さんだから、水に弱い石は避けた方が良いね。
「金運と仕事運には、タイガーアイが良い、って聞いたんですけど」
「この石です」
「うーん…」
あまりお気に召さないようだ。
「金運の石で、水に濡れても大丈夫なのは、この辺りですね。イエロージェイド、ルチルクオーツ、シトリン…」
「わー、飴玉みたい」
お客様が直感で選んだ石は、イエロージェイド。
「私、冷え性で、足が冷たくなるんです」
「なるほど、だから「石が自分を選んで」と言ったんですね」
「え?」
「イエロージェイドは、お腹と膝から下のエネルギーに働きかけるんです」
「そうなんですか?」
「普通黄色い石は、腹部のエネルギーですが、これは、膝から下のエネルギーの保護と活性化もしてくれますね」
「それで石が「自分を選んで」って言ったのかしら?」
「ちゃんと必要な時に必要な石と巡り合うんですよ」
「不思議…そういうものなのですね」
「レッドジャスパーとイエロージェイドが良いかな?」
デザインボードに並べてお見せする。
8mイエロージェイド×12
8mレッドジャスパー×6
6mクリアクオーツ×6
「可愛い色ですね」
「レッドジャスパーも、新陳代謝を促してくれるし、身体の問題の有る部分に生命エネルギーを投射すると言われているんです」
「出来上がるのが楽しみだわ」
お気に召して頂けたようだね。
良かった。
「お作りしてから1日浄化させて頂きたいので、明日の夕方にはお渡し出来ると思います」
【天空路家】
「ただいま~良い子でちたか~?」
「ニャー」
「ちゃみちかった?」
「ウニャン(寂しかった)」
〈頭をスリスリして遊に甘えるlapis〉
「lapisもそろそろ一緒にお店に行こうか?」
「ニャー」
うーん、でもまだ子供で、何にでもじゃれるからもう少しかな?
それに、女嫌い?
お客様に「シャー!」なんて言ったら看板猫になれないぞ、lapis。
「さあ、ご飯だぞ。どーじょ」
今はまだ何でも良く食べるけど、そのうち親達みたいに「それはイヤ」とか言うんだろうな。
lapisのお父さんのニコロは、ワガママ猫だからな。
甘やかさないように育てよう。
もう、遅いか(汗)
「ニャー(抱っこしてー)」
チュッ、チュッ…
1日に何回lapisにキスするだろう?
100回以上はするな。
ゴロゴロ言ってる。
ずっとくっついてるよな。
この頃噛まなくなったけど、小さい時は、ずっと僕の手を噛んでた。
「お兄ちゃん、ご飯は?」
「まだ」
「lapisが離れないもんね」
なんて言いながら、ご飯を作ってくれた。
来てくれて助かったよ。
何で春陽ちゃんにだけは怒らないんだ?
他の女性なら「早く帰ってよ」って帰るまで顔見て文句言ってるのに。
春陽ちゃんなら、普通にリラックスしてるんだよな。
「お兄ちゃんまた彼女と別れたのよねー」
「ニャー」
「lapisと仲良し出来ない人はダメよねー」
「ニャー(私、春陽ちゃん好き)」
はあ、僕も今年30才だ。
そろそろ結婚しないといけないんだけどね。
lapis…
【天然石ショップlapis】
〈翌日〉
寿宴様が、ご注文のブレスを取りにいらした。
「うわー、何だか昨日見た時より光ってる気がするけど…」
「浄化するとピカピカになるんですよ。エネルギーが生きていれば、ですけどね」
「大事にしまっておきたい感じだわ。花屋は水を使うから…」
「水に濡れても大丈夫な石ばかりですよ。石は持っているだけで願いを叶えてくれる魔法使いではないので、話しかけたり、身につけたりして、仲良くしてくださいね」
「幸運を呼ぶとかって聞きますけど」
「確かにうちのお客様も「良い事が有りました」なんて仰ってくださいますけど、ご自分では何もしないで幸運が舞い込むわけでは有りません」
「そうなんですね」
「石のエネルギーのサポートで、心と身体の状態が良くなり、自分が変わると周りも変わるんです。幸せになるお手伝いをするパートナーですね」
「わかりました。仲良くします」
せっかく浄化したのに、色々な人が触れるといけないので、僕がお包みした。
石は、人の想念を吸収するからね。
僕は、アクセサリーを作る時、持つ人が健康になりますように、幸せになりますように、願いが叶いますように、って、石の精霊と話しながら作るんだ。
だから、僕のエネルギーが触れても大丈夫。
「ありがとうございました」
「どうもありがとう」
ニコニコして帰られた。
パワーストーンには、カラーセラピー効果も有るからね。
ここに来るだけで癒されると仰ってくださるお客様もいらっしゃるけど、強いエネルギーの石だと、石酔いする場合もあるんだ。
僕は、仕入れに行くと、身体が熱くなったりするな。
僕のエネルギーは異常に強いらしいから、石酔いした事は無いけどね。
【駅前】
〈数日後〉
あれ?
ここのお花屋さんだったのか。
嬉しそうに接客してる。
春の花がたくさん並んでいるな。
って、僕は花の事はあんまり良くわからないけど。
「あら、lapisのオーナー」
「こんにちは」
「癒されてますよ。仰る通りでした。体調が良くなって気分が良くなったら、花達も喜んでくれて。お客様も増えました」
「良かったです。せっかくだから、春の花を買って帰ろうかな?」
「どれにしましょうか?」
「ピンクのスイートピーが良いかな」
「お待たせしました」
可愛く作ってくれたけど、どうしよう?
ラピスが齧りそうだぞ。
【天空路家】
やっぱりか(汗)
「コラコラ、lapis。噛んだら可哀想だろ」
「ああ、お花。また彼女出来たの?」
「え?何で?」
「だって女の子にあげるんでしょう?」
「春陽ちゃんにあげるよ」
「え?貰って良いの?嬉しい!」
嬉しそうだね。
ちょっと、lapisが齧ったけどね。
女の子は皆んな花が好きだよな。
あ、そうでもないか?
昔の彼女で、バラをプレゼントしたら「食べ物の方が良かった」って言った奴居たな。
まあ、良いか。
昔の人だし。
そんな事より…
「生き生きして、この前いらした時より綺麗になってたよ」
「この前のお客様?」
「うん」
「何だ、それでお花買ったんだ」
何だ、って、何だよ。
ちょっと不機嫌そうな言い方だな。
まっ、良いっか。
「へー、駅前のお花屋さんなのね」
それより…
ここにばっかり来ていて良いのか?
小さい頃からずっとそうだから、あんまり気にして無かったけど…
春陽ちゃんも、今年23才になるんだよな。
「僕にばっかり構ってないで、ボーイフレンド作らないとな」
「居るわよ、たくさん」
「たくさん、て」
「お友達なら」
お友達じゃなくてね…
「何よ、お兄ちゃんのせいなんだから」
「何か言ったか?」
「ねえ、lapis」
「ニャー」
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