第21話結婚はいつ?

【天空路家】


「ミュー(パパちゃん起きて、朝だよ)」


〈寝ている遊の体を縦断するRutile〉


「う~ん」


「(お腹空いたよ、早く起きて)」


「(私は、パパちゃんが寝てる時は待っててあげるの。起きて動いたらお顔を舐めるのよ)」


〈遊の顔をペロペロ舐めるRutile〉


顔を舐める時はお腹が空いてるんだよな。


最近こうやって僕を起こすのはRutileだ。


Lapisは顔の横でゴロゴロ言ってる。


「おはよう。可愛い可愛い赤ちゃん達」


チュッ、チュッ。


【キッチン】


「はい、どうじょ」


「ンニャ、ンニャ(美味しいな)」


Lapisも赤ちゃんの時は「ンニャ、ンニャ」言いながら食べてたよな。


「あ、こらこらRutile。それはお姉ちゃんのだよ」


自分のご飯をいい加減に食べておいて、Lapisの食器に頭を突っ込んで食べてる。


LapisもRutileには怒らないんだよな。


「(お姉ちゃんのが食べたいの?しょうがないわね、どうぞ。待っててあげるわ)」


Lapisそれじゃ足りないよな。


もう少し入れておこう。


【玄関】


「良い子たんちててね~」


【駅】


「どっちに行ったら良いのかねえ…?誰かに聞いてみるか。あの、ちょっとすみません」


「はい」


「お聞きしても良いですか?」


「どうぞ」


「ここに行きたいんですけどね、どう行ったら良いんですかね?」


「ああ、そこなら駅の向こう側ですよ」


「どこから行くんですか?」


「こっちです。一緒に行きましょう」


「良いんですか?すみませんね」


荷物重そうだな。


「良かったら、それ、僕が持ちますよ」


「やれやれ助かります。ありがとうございます」


「じゃあ、行きましょうか」


【北口】


「もうすぐですからね」


「はいっ」


【公園通り】


「ここです」


「ああ、ここですか。ありがとうございました」


「いえいえ」


「お婆ちゃん!」


「素子」


「何で遊ちゃんと一緒に居るのよ?」


「え?もしかして天空路さんですかいな?」


「はい、そうです」


「素子、こんなに優しい人だっんだね、お前の彼氏」


「え?ちょ、もう、別れ」


「そうかい、そうかい」


「そうかい、って、お婆ちゃん聞いてる?」


「聞いてましたよ。素子がお世話になってます」


「いえ、お世話になってるのは僕の方です」


「聞いてないし、って、遊ちゃんまで。だから違うって」


「それで、いつ結婚するんですかいね?」


「え?」


「だから、お婆ちゃんてばー」


〈嬉しそうに遊の顔を見ている素子の祖母〉


「それにしても、何でいきなり出て来るかなあ…」


「素子がちっとも帰って来ないからだよ」


「来るなら来るって言ってくれれば良いのに」


「どうせ、そう言ったら「忙しいから来なくて良い」って言うだろう?」


「は…(読まれてたか)」


「出て来て良かったよ。天空路さんにも会えたしね」


「だから遊ちゃんは」


「早くひ孫の顔を見せてくださいね」


「はあ」


「「はあ」じゃないでしょう遊ちゃんも。私達はもう」


「この子ももうすぐ30になるしね、早く結婚してもらわんと」


「まだ28よ。って、お婆ちゃんこれからどうするのよ?私予約のお客様が…」


「僕がどこか案内するよ」


「まあまあ、お願いします」


「お願いしますって」


「じゃあ行きますかね」


「はいお婆ちゃん」


「ちょ、ちょっと遊ちゃん」


「「夢ちゃん」て呼んでね」


「もう、お婆ちゃんてば!」


「素子ちゃん、大丈夫だよ」


「ごめんね、じゃあお願いして良い?」


「うん」


「後で連絡するから」


【駅】


「さて、どこに行きましょうか?」


「遊ちゃんのお店に行ってみたいんだけどね」


「僕の店ですか?どうぞいらしてください」


【天然石ショップLapis】


と言うわけで、Lapisにご案内したんだけど…


「そうなんですかぁ」


「素子さんのお婆ちゃまなんですね」


「ようこそいらっしゃいました」


可愛いお婆ちゃんだから、すぐに馴染むよね。


「孫のお婿さんになる人の仕事場を見ておきたくてね」


「お婿さんですかぁ?」


「そうだよ」


「(もう、別れたのに…)」


「(遊ちゃん、言えなかったのね。それがあの子の優しい所なんだけど…)」


「こんなに可愛い女の子達に囲まれて仕事してるんだね」


「はあ…」


〈肩に違和感が有るように回す夢〉


「あれ?夢ちゃん…肩どうしたんですか?」


「肩こりがひどくてね」


「それならヘマタイトですぅ。ねぇオーナー」


「マグネットヘマタイトね。天然のヘマタイトもわずかに磁気を帯びているんだけど、これは人工的に磁気をプラスした物なんです」


「黒っぽいけど、キラキラ光ってるね」


「肩こりには磁気のテープとか貼ったりするでしょう?磁気が有るから、ほら、くっつくんです」


「へー、面白いもんが有るんだね」


「天然にこだわるオーナーなのに、珍しいですよね?」


「これは、そういう効果は勿論だけど、ヘマタイトの血液関連の効果も有るからね。人口加工でも良い物も有るんだ。同じものなら出来るだけ天然を選ぶんだけどね」


「はあ…何だか気持ち良い気がする。単純だからね、私は」


「そんなふうに石を信じてくれると、石も頑張るんですよ」


「そうだろうね。同じつけるなら「こんなもん効くんかいな?」って思うより単純に信じた方が良いって事だろうね」


「そうなんです」


「じゃあ、これ貰って行こうかね」


「ありがとうございます」


「こんなに安いのかい?お爺さんにも買って帰ってやろう」


「じゃあ僕は夢ちゃんにこの街を案内して来るから、宜しくね」


「はい、承知致しました」


【ギャラリー】


「絵を見るのが好きでね。いやね、難しい事はわからないよ。ただ見るのが好きなだけなんだよ」


喜んでくれたみたいだね。


連れて来て良かった。


「夢ちゃん、お腹空きませんか?」


「そうか、もうお昼だね」


「ランチに行きましょうか。何食べたいですか?」


「田舎では食べられないようなのが良いね」


そう言われてもわからないよな…


何が良いんだろう?


【la mer】


結局la merに来ちゃったけど…


「こういう店は、近所には無いね」


良かったのかな?


「いらっしゃいませ」


「食べられない物有りますか?」


「なんでも食べるよ」


「ナンは無いですけど」


「何の事だい?」


「あ、冗談です」


滑った…(汗)


羊里君がシラーっとした目で見てるし。


何でも食べられるという事なので、シェフのお任せにした。


〈携帯の通知音が鳴る〉


「あ、素子ちゃんからだ…6時頃になりそうって」


「まだだいぶ時間が有るね」


「どこに行きましょうか?」


「素子の店の近くに山が見えてたがね」


「はい、公園になってるんです」


山と言うか、丘だけどね。


【公園】


「綺麗な花が咲いてるね」


ここには色々有るよね。


僕は花の事はわからないけど、宴さんが見に来るぐらいだからね。


【高台】


「街が見渡せるね。素子の店はどの辺りだろうね?」


「その辺りですね」


夢ちゃんは、しばらく黙って僕達の住む街を眺めていた。


「この近くにスーパーは有るかね?」


「有りますよ」


「じゃあ、行こうかね」


【スーパー】


「遊ちゃんは、どんな料理が好きだい?」


「何でも食べますよ」


「お母さんは、どんなのを作ってくれる?」


「煮物とか、普通の家庭料理ですよ」


「素子は家で料理をしとるのかね?」


「さあ…」


多分してないだろうな。


時々帰りに会うと、夕食を食べに行く途中みたいだからね。


【素子の部屋】


「お婆ちゃん、何を一体そんなに買い込んで来たのよ?」


「じゃあ、僕はこれで」


「遊ちゃん、ちょっと待って。今からご飯作るから食べて行きなさい」


「いや…」


「今日のお礼だよ。さあさ、上がって」


お礼なんて良いのに…


でも夢ちゃんがあんまり言うので、僕は素子ちゃんの部屋で待つ事にした。


何だかキッチンの方で声が聞こえるぞ。


「ほらほら、ちゃんと綺麗に切りなさい」


「そんなもん、どうでも切りゃ良いじやん」


「何言ってるの、綺麗に切った方が美味しいんだよ」


「面倒くさいなー、あー、野菜も髪切るみたいにハサミで切れたら良いのにー」


「良いかい?素子。好きな人を捕まえておきたいなら、胃袋を掴んでおく事だよ」


「夢ちゃんの家は、フレンチレストランやってるんだからね、こんな田舎料理喜ばないよ」


「レストランみたいなの、毎日食べるわけじゃないでしょう」


「まあ、そうだけどさ」


「遊ちゃん、お待たせしましたね。さあさ、どうぞ食べてみてください」


「はい、頂きます。あ、これ美味しい」


「本当に美味しいのー?」


「うん、初めて食べた」


「(こういうの喜ぶのか。お婆ちゃんが帰るまでに教わっとこうかな?)」


「それで、いつ結婚するんだね?」


「ゲホゲホ、もう、お婆ちゃん、やめてよ」


結婚か…


本当に、そろそろ考えないとな。


でも、素子ちゃんとは別れたんだよな。


【天空路家】


「ただ今」


あれ?


誰も迎えに来てくれないぞ。


「Lapis。Rutile。パパちゃんちゃみちいでしゅ」


「あ、お兄ちゃん。おかえりなさい」


「来てくれてたのか」


「だって、Lapis達お留守番可哀想だもん」


まあね、気になってたんだけど。


春陽ちゃんが来てくれてたなら良かった。


【キッチン】


うわぁ…夕食作ってくれてたのか。


悪かったな。


「お腹空いてる?」


「え?あ…」


「お風呂が先?」


これは、食べて来たなんて言えないぞ…


「先にお風呂入って来て。温めておくから」


「うん、じゃあそうする」


【お風呂場】


春陽ちゃん、一緒に食べようと思って待っててくれたんだよな。


ま、まあ、もう一度食べても良いか。


それにしても…


今日は、Lapis達が鳴かない。


いつもなら、僕がお風呂から出るまでずっと鳴いてるのに。


まあ、Lapisは最近お姉ちゃんになったから良い子に待ってるんだけど、Rutileが鳴かないって…


春陽ちゃんが居るからだよな。


慌てて洗って出なくて良いから、楽だけど…


何だか寂しい。


でも、結婚したらこうなるのかな?


って、春陽ちゃんと結婚するわけじゃないけど…


でも何だか、まるで僕の奥さんみたいだよね。


良いのかな?


このままで…?


Lapis達を見ててくれるのは助かるけど、いつまでもこんな事させてちゃいけないよな。


春陽ちゃんだって、いつかは誰かと結婚するんだし。


でも…


そう考えると、ちょっと寂しい気もするんだよね。


可愛い妹を取られちゃうみたいな…


花嫁の父?


いや、兄か。


花嫁の父の気持ちがわかる気がする。


兄だけどね。


「お兄ちゃん」


「うん?」


「着替え、ここに置いておくわよ」


「ああ、ありがとう」


って、本当の兄妹じゃないんだから、これはちょっと考えないと…

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