第20話ダーリン

【天然石ショップLapis】


「じゃあ、僕は工房に行って来るね」


「私も行きたいですぅ」


「由良ちゃんは器用だから、手伝ってくれると助かるよ」


【工房】


「何を作るんですかぁ?」


「ワイヤーのブレスを作ろうと思って。これが中々大変でね、僕は不器用だから時間がかかるんだ」


「アメジストですねぇ」


「うん、今日はラベンダーは使わないで深い色のアメジストね」


「ローズクォーツと水晶の組み合わせですけどぉ、ラベンダーの時と感じが変わりますねぇ。アメジストがディープだからぁローズクォーツが一緒だと良い感じですぅ」


「うん、アメジストとローズクォーツは相性が良いしね」


「必ず水晶を入れるんですねぇ」


「アメジストも調和の石だし、ローズクォーツとは相性が良いから入れなくても良いんだけど、水晶はそれぞれの石のパワーをより引き出してくれるし、チャクラも全てに対応してるからね」


デザインボードに並べてみよう。


8mmアメジスト×8


8mmローズクォーツ×6


6mm水晶×8


「ゴールドのロンデルですねぇ」


6mm平型ゴールドロンデル(ラインストーン)×4


ゴールド透かしビーズ×2


「それなんですかぁ?」


「クラスプ」


「クラスプぅ?」


「留め金だよ、ほら」


「あれれっ、マグネットになってるんですねぇ」


「ブレスだと、片手しか使えないから、マグネットの方がつけやすいでしょう?」


「なるほどぉ、オーナーの優しさですねぇ」


「えー?ハハハ、マンテルの方が良かったかな?まあ、つけやすいと外れやすくもあるんだけどね」


「どっちが良いとも言えませんねぇ」


まずは、マグネットにしてみるか。


マグネットクラスプゴールド×1


チャームは…


「そのカメさん可愛いですぅ!」


ハワイアンホヌゴールド×1


「ホヌは、海の守り神で、幸運を運んで来てくれるんだよ」


「わぁ、良い子ですねぇ」


「危険や災いから守ってくれるお守りだしね」


「カメさん偉いですぅ。由良欲しくなっちゃったですぅ」


さて、作ろうかな。


ビーズを通して、ここにカシメを入れて、クラスプのカンに通したらカシメに通して、潰す。


そして余ったワイヤーをビーズに…


あ…指がつりそう。


痛い。


「もう、オーナーったらぁ、本当に時間がかかりますねぇ。そのワイヤーをここに入れれば良いんですねぇ?私やりますぅ」


「フゥー、ありがとう。助かるよ」


「出来ましたぁ。アハッ、可愛いですぅ」


由良ちゃん、ホヌが相当気に入ったみたいだね。


嬉しそうに、ずっと眺めてる。


「そんなにホヌが好きなら、そのチャームを使って何か作ったら?」


「そうですよねぇ!あー、シルバーのも可愛いですぅ」


「ホワイトシルバー綺麗だよね」


「どっちにしようかなぁ…?」


石より先にチャーム決めてる。


「やっぱりゴールドにしますぅ。このブレスにはゴールドが合ってると思うんですぅ」


「このブレスで良いの?」


「オーナー。由良のブレス作ってくださいねぇ」


「じゃあ、今作ったこれは?」


「ダメですぅ。ちゃんと由良の為に作ってください」


そりゃそうだよな。


って…


「僕が作るの?」


「そうですよぉ。ちゃーんと石の精霊さんとお話しして作ってくださいねぇ」


「了解。じゃあ、石選んで」


「はぁーい。どれが良いかなぁ…」


アメジスト8コ、ローズクォーツ6コ、水晶8コ、ちゃんと選んだね。


では作りますか。


「この子が出来たら、眠れるようになるかなぁ?」


「最近眠れないの?」


「はいですぅ」


「何か悩み事?」


「大学のお友達は皆んな彼氏居るのに、由良だけ居ないんですぅ」


「あれま…まあ、僕もフリーだけどね」


「オーナー、お願いがありますぅ。付き合ってください」


「え?えーっ?!」


「あのぉ、一回だけで良いんですぅ。皆んなボーイフレンド連れて来るんですぅ。由良だけ一人で行けないですぅ」


「そ、そういう事ね」


「一緒に行ってくれますぅ?」


「そうだなあ…」


「了解ですぅ?」


「りょ」


「わあ、オーナーだーい好き」


「え?わっ」


いきなり抱きつくし。


「こらこら、そんなにしたら作れないよ」


「わあ、ごめんなさいですぅ。由良のブレス作ってくれてたんでしたぁ」


「良し、出来たぞ。由良ちゃんが眠れるように頑張るんだよ」


「可愛いですぅ!お家に持って帰って浄化しますねぇ」


って、行っちゃった。


嬉しそうだったね。


店の子達は皆んな、待ち切れないで持って帰るんだよな。


あ、了解しちゃったけど、どこに行くか聞いてなかった。


【河原】


「来てくれてありがとうですぅ」


「昨日は、ちゃんと眠れた?」


「あらぁ?そう言えば眠れてたぁ。この子のおかげですぅ」


由良ちゃん、このブレス『大天使ジェレミエル』を、枕元に置いて寝たんだね。


「おーい、由良!早く来いよ」


「今行くぅ!」


バーベキューをやるみたいだね。


「良いですかぁ?オーナーはぁ、今日一日由良の彼氏さんですからねぇ。了解ですぅ?」


「りょ、りょ」


〈学生達と合流する〉


「由良、彼氏居ないと思ってた」


「ちゃーんと居たでしょう?」


「いつの間に?」


「どうやって知り合ったのよ?」


「バイト先のオーナーだよぉ」


「年上が好きって、由良らしいよね」


「オーナーが、バイトの子に手出しちゃまずくね?」


「いや、手は出してないよ」


「え?まだなんだ」


「天空路さんは、ジェントルマンなんですぅ!」


由良ちゃん、口とんがってるよ。


「パワーストーンショップよね?」


「そうだよぉ。これ、作ってもらったんだぁ」


「うわあ、可愛い」


「でしょ、でしょう?」


「天空路さん。魚釣るの手伝ってもらえます?」


「オッケー」


「じゃあ、俺達は釣りー」


「由良も行くぅ」


「由良は、こっちで準備!」


「えーっ?寂しいですぅ」


「ちょっとぐらい離れてたって良いじゃない」


そんなわけで、僕達は釣りをする事に。


「あ、俺、魚住っス」


「僕は、天空路」


「宜しくです」


「宜しく」


「天空路さん、由良の事…本気なんスか?」


「え?」


「実は俺、由良に振られたんス。「好きな人が居るからぁ」って言われて…」


「そうなんだ」


「で、今は鮎とつきあってるんスけどね」


「あゆさん?」


「あ、ほら、今由良と話してる」


ああ、さっき僕達の事色々聞いてた子だな。


「あ、天空路さん!引いてる引いてる!」


「え?わっ、本当だ」


釣れた!


「ヤマメだね」


「ダーリン。釣れてますぅ?」


〈遊の後ろから両手を首に回して覗き込む由良〉


「ダーリン?」


「しーですぅ」


ははぁ…ダーリンて事になってるのね。


だけど由良ちゃん、好きな人が居るなら誘えば良いのに。


「魚釣れたら持って来てー!」


「おう、今行く!天空路さん、その魚良いスか?」


「ああ、うん」


〈魚を持って鮎の所へ行く魚住〉


「あのね、由良ちゃん」


「何ですかぁ?」


「もう離れても良いんじゃない?」


「嫌ですぅ。今日はぁ、オーナーは由良の彼氏さんなんですからねぇ」


「好きな人居るって聞いたぞ。その人誘えば良かったのに」


「だから誘ったんですよぉ」


???


もう一人の子かな?


でも、他の女の子と一緒だけど…


「どこ見てるんですかぁ。ちゃんと由良の事見ててくれないとダメですぅ」


「………」


顔…近い…


「焼けたよー!由良達も早く!」


「あ、呼んでるよ」


「行きますかぁ」


助かった…


〈皆んなでバーベキューを食べる〉


「はい、ダーリン」


「え?」


「あ〜んしてくださいぃ」


え?あ〜んするの?(汗)


「早くぅ」


仕方ないか…


「美味しいですかぁ?」


「うん、美味しい」


「へー、由良もちゃんと彼氏の世話するんだ。いつもは甘えん坊なのにね」


「甘えるのは好きですよぉ」


「だから年上が好きなんだよね、由良は」


そうなのか。


でも、皆んな由良ちゃんと同年代みたいだよな。


年上そうな人って居ないけど…


???


まあ、今日は由良ちゃんの恋人ごっこに付き合いますか。


【天空路家】


「お兄ちゃん遅いね」


「ミュー」


「Rutile、お腹空いたの?オヤツあげるわね」


「ミュー、ミュー(オヤツ、オヤツ)」


「Lapisもいらっしゃい」


「(私はお姉ちゃんだから、お行儀良くするのよ)」


【住宅街】


「由良ちゃん。もうお友達と別れたんだし、そんなにくっつかなくても」


「ダメですぅ。今日一日は、由良のダーリンなんですからっ」


何か…


胸が腕に当たってるんですけど…


今まであんまり気にして見てなかったから、わからなかったけと、意外と大きいみたいだな。


男が女性の胸に目が行くのは自然な事で、それは本能だから、僕だって無意識に見てしまう事も有るけど…


元々女性の胸というのは、赤ちゃんの為なら膨らむ必要がないらしい。


猿のように歩くなら、♀が♂の気を引くのはお尻なんだそうだ。


でも、人は2本足で歩くので、人間の女性は男性の気を引く為に胸が発達したそうだ。


だから男が女性の胸を無意識に見るのは、本能的に自然な事なんだけど、僕はそういう時は目をそらす。


由良ちゃんは、僕から見たら子供だと思っていたから、異性として意識してなくて、無意識に胸を見るなんて事もなかったよな。


でも20歳か。


もう大人なんだよな。


「何で黙ってるんですかぁ?」


「あ、いや…やっぱりくっつき過ぎじゃない?」


「良いんですぅ」


そう言うと、もっとギュッと僕の腕に彼女の腕を絡めて来た。


何だか体が熱くなって来ちゃったぞ。


はぁ…


ま、まあ、そろそろ家も近いだろうし、もう少し我慢するか。


「ああ、着いちゃった」


「ここの家?」


「はいですぅ」


フゥ…


「今日は、ありがとうでしたぁ」


「僕も楽しかったよ。じゃあ、明日ね」


「あ、ダーリン」


「うん?」


〈行きかけて振り向く遊。遊のほほにキスする由良〉


「あ…」


「エヘッ、お休みなさいですぅ」


〈クルッと回って、小走りに家に入って行く由良。ポカンと見ている遊〉


お休み。


さあて、Lapis達が待ってるから帰りますか。

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