第22話サプライズ
【天然石ショップLapis】
〈工房に向かう遊。その様子を見るて、キョロキョロと店を見回し春陽と由良を確認する麻友〉
「(今だわ)」
〈売り場を出る〉
【工房】
「オーナー。ちょっと宜しいですか?」
「うん、どうしたの?」
「今月、春陽ちゃんと由良ちゃんのお誕生日ですよね?」
「同じ月なんだね」
「サプライズでバースデーパーティーをやりませんか?」
「良いね、やろうよ」
「賛成してくださると思いました」
「どこでやる?」
「la merの厨房を借りて、ケーキを焼こうと思うんですけど」
「そうだな、ついでに料理も調達出来るしね」
「お料理も私が作ります」
麻友さんの手料理が食べられるのか。
「僕も手伝うよ」
「助かります」
【スーパー】
「食材も、la merで調達すれば良いのに」
「そういうわけにはいかないわ」
「それで、どこでやるの?」
「うちの工房かセッションルーム?」
「la merの個室空いてないかな?」
ケーキや料理作って運ぶの大変だもんね。
「あ、僕が持つよ」
「良いわよ」
「良いから良いから」
「私だって一つぐらい持てます」
「じゃあ、これ軽いから」
「フフフ」
「何?」
「遊ちゃんのお嫁さんになる人は幸せね」
「え?何で?」
「優しいから」
「どこが?」
「そういうところ」
「普通でしょう?」
「(きっと、こんなうふうに二人でお買い物するのね)」
【la mer】
「その日は予約で一杯だよ」
「やっぱり、Lapisでやりましょう」
サプライズだからな。
どうやって2人を呼び出すか、だよね。
【厨房】
〈料理の下ごしらえをする麻友。アサリを水に入れ、イカの皮をむく〉
麻友さん、手際が良いなあ。
僕は何をすれば良いんだろう?
「これ、皮をむくの?」
「そうよ」
「僕やろか?」
「出来る?」
「うん」
「じゃあ、お願いしようかしら?これで手を刺さないようにね」
「わかった」
これを先に取れば良いんだろ?
〈海老の皮をむく遊。背わたを取る麻友〉
「2人でおままごとか?」
羊里君だ。
厨房に入って来るって、休憩かな?
「何が出来るんだ?なあ麻友。たまには俺の為に作ってくれよー」
「どうして貴方の為にお料理しなきゃいけないの?」
「俺と麻友の仲じゃないかあ」
「そんな仲じゃないでしょう?」
「冷たい事言うなよー」
「もう、羊里君。邪魔しないで。仕事に戻りなさい」
この2人、どうなってるんだろう?
麻友さんだって、本当に嫌ならここに来ないよね。
「遊ちゃん、時間」
「あ、本当だ」
「先に行って。2人で一緒に入るとおかしいでしょう?」
「そうだね。じゃあ行くね」
今日は、麻友さんと僕は遅番のシフトになってるんだ。
いつも別々に出勤するからね、一緒に入るとおかしいよね。
「麻あ友う。なあなあ」
〈麻友を抱き締める羊里〉
「ちょっと、やめて」
「羊里君。パパ来た」
「え?わっ、オーナー?」
〈慌てて厨房を出る羊里〉
あんまりこういうの好きじゃないけど、何だか麻友さんのそばに彼を置いておくのちょっと嫌だだな、って…
「すぐに私も行きます」
「うん…」
「どうしたの?」
「……」
「あ…」
〈麻友と手を繋いで厨房を出る遊〉
「遊ちゃん」
【la mer前】
「じゃあ、僕、先に行くから」
〈遊の背中を見送る麻友〉
「(もう、遊ちゃんたら…)待って」
「一緒に行かないんじゃなかった?」
「あら、その言い方何だかトゲが有るわよ(遊ちゃんにしては珍しく)」
そんなつもりは無いんだけど…
羊里君の事でちょっとムッとしてた続きだから、何と無くそんな言い方になっちゃったかな?
【天然石ショップLapis】
「おはようございます」
「おはようございますぅ」
「おはようございます」
「おはよう」
結局2人で一緒に入ったけど、特に変に思われなかったみたいだ。
サプライズだから、準備してるの気づかれないようにしないと。
〈ガチャガチャガッチャーン!!派手な音でディスプレーが崩れ落ちる〉
「うわぁ、すみません」
「大丈夫?怪我は?」
「大丈夫ですぅ。すみませんオーナー。ごめんなさいですぅ!!」
「怪我してないなら、良かった」
「こっちも大丈夫。壊れてる物は無いみたい」
「さあ、もう一度やりましょう」
「どうして皆さん怒らないんですかぁ?オーナーも、いつも怒らないしぃ」
「怒っても仕方ないでしょう」
「普通怒りますよぉ」
「悪いと思ってるみたいだから、怒らないんだよ。失敗したらやり直せば良い」
「他のバイト先では、失敗すると凄く怒られましたぁ」
「怒られて嫌な気持ちで仕事するより、気持ち切り替えた方が良いから。ネガティブなエネルギーで仕事しても良い物は出来ないよ」
「そうですけどぉ…」
「怒らないから良いや、って態度でやってたら、僕だって怒るよ」
「遊ちゃんて、怒るの嫌いなのよ。こういう人が本気で怒ると怖いのかしらね?」
「怒る事も有るけど、凄く嫌な気持ちになるんだ」
「だから、お兄ちゃんを怒らせないようにすれば良いのよ。さ、やり直ししましょう」
「皆んなでやればすぐに終わるわ。ね、由良ちゃん」
「う…グスン…」
「わっ、泣くのか?もう良いから、泣かなくても良いよ」
「皆さん…グスン…ありがとうグスン…ございますぅ」
「大丈夫よ」
やれやれ、麻友さんに頭を撫でられてやっと泣き止んだぞ。
僕も手伝って、終わらせてしまおう。
うん?
麻友さんが僕の肘をつついてるぞ。
「早く、2人に話して」
そうか、わかった。
「あー…そうだ…あのね、明日なんだけど、夕方から勉強会をやろうと思うんだ。休みのところ悪いんだけど」
「私は、大丈夫です」
春陽ちゃんオッケー。
「私は…夕方ですかぁ?大丈夫ですぅ」
良かったあ。
思わず麻友さんの顔を見てしまった。
【工房】
「明日のお昼頃から準備しますね」
「僕も手伝うよ」
「助かります」
「ここだと後片付けとか大変だから、僕の家でやろうか?」
「ご迷惑じゃないんですか?」
「夜だし、Lapis達は留守番になるより良いと思うんだ」
「Lapisちゃん達と仲良くなりたいから、嬉しいですけど」
仲良く…なってくれると良いけどね。
【天空路家】
「ニャニャーガゥーーーーーーーーーーー」
始まったぞ。
我が家の猛獣君、大暴れの時間だ。
「ニャ(お姉ちゃん遊ぼ)」
今度はLapisを追いかけて、2人(?)で走り回ってる。
「ニャー(もう、いい加減にしなさいよ)」
ほらほら、Lapisが本気になった。
今度はLapisに追いかけられて、Rutileがハウスに逃げ込んだぞ。
〈チャイムが鳴る。ビクッとするLapis〉
「(誰か来たわ)」
「(わーい)」
Rutileが玄関に走って行った。
春陽ちゃんだと思ったみたいだ。
彼女ならチャイムを鳴らさなずに入って来るって、Lapisはちゃんと知ってるから、警戒してる。
【玄関】
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「(あれ?春陽ちゃんじゃない)」
〈ちょっと後ずさりするRutile〉
「まあ可愛い。あなたがRutileちゃんね」
〈腰をかがめてRutileを見る麻友〉
「こんにちは」
麻友さんはニコニコしてるけど、Rutileはびっくりしてるみたいだ。
でも、あんなに臆病だった子が、だいぶ人間に慣れたね。
【キッチン】
「遊ちゃん、お台所お借りして良い?」
「どうぞ、どうぞ」
la merで準備した料理は運んで来たけど、まだ何か作るらしい。
「僕に手伝える事有る?」
「そうね、この子見てて下さる?フフフ」
Rutileが興味津々で、麻友さんに張り付いてる。
「可愛いけど、油が飛ぶと危ないから」
「了解」
天ぷらを揚げるみたいだね。
フライも有るな。
美味しそう。
「何だか良いなあ」
「何が?」
つい言葉に出ちゃった。
「なあに?」
「うん…麻友さんが僕の家で料理してるのって、何だか、その…僕のお嫁さんになってくれたみたいで嬉しいな、って」
「そんな事言ってないで、出来たのから運んでね」
またはぐらかされちゃったな。
〈料理をリビングに運ぶ遊〉
「(もう、遊ちゃん…お嫁さんね…もしそうなったら、きっと大切にしてくれるでしょうね」
【リビング】
「どうぞ、入って」
「真っ暗ですぅ」
「電気はそっち」
「春陽ちゃん、待って」
「え?」
〈麻友がロウソクを立てたケーキを運んで来る〉
「2人とも今月誕生日だよね?」
「うん」
「そうですぅ」
「さあ、2人でロウソクの火を消してね」
「わあぁ、手作りケーキですぅ!」
「麻友さんが焼いてくれたんですね」
「僕も少しは手伝ったよ」
「お兄ちゃんが?少しだけでしょう?」
「悪かったな。麻友さん手際が良くて、僕の出る幕無かったんだよ」
「さあ、早くロウソクを消して」
そして2人はロウソクの炎を消した。
「Happy Birthday」
「2人ともおめでとう」
「ありがとうですぅ」
「ありがとうございます(何か2人でやってるな、って思ったのよ。まさか私達の為だったなんて…)」
「勉強会って言うからぁ、楽しみにしてたんですぅ」
「じゃあ、今からやるかい?」
「お兄ちゃんやめて、もう遅いから今度にしましょう」
「冗談」
「私、後片付け手伝うわ」
「何言ってるんだよ、今日の主役は春陽ちゃんと由良ちゃんなんだからね。後片付けは僕がやるから良いよ」
「でも…」
【玄関】
はあ…
なんとか帰したぞ。
まあ本当は、片付けるの大変そうで、残ってくれたら助かったんだけどね。
さて、やりますか。
【キッチン】
「あれ?帰らなかったの?僕がやるから良いのに」
「良いわよ。遊ちゃん1人じゃ大変だもの」
「でも、遅くなっちゃうよ。まあ、そしたら送って行けば良いけど」
「大丈夫よ、1人で帰れるから」
「大丈夫じゃない」
「はい、お皿しまって」
「ああ…」
そんな会話をしながら、2人で後片付けを済ませた。
「泊まって行けば?」
「え?」
「あ、変な意味じゃ…ないから」
「あら、もうこんな時間」
時計は0時を回っている。
やっぱり1人で帰すわけいかないよ。
「じゃあ、失礼するわね」
〈行こうとする麻友の手を掴む遊〉
「あ…」
「帰さない」
「遊ちゃん」
「……」
「……」
「こんな時間に外を歩いていたら、酔っ払いとか危ない人も居るから」
「でも…(どうしよう…?遊ちゃん…どういうつもりなのかしら?)」
「こっち」
〈麻友の腕を引っ張って連れて行く〉
【ゲストルーム】
「春陽ちゃんも時々泊まるんだ」
「え?そうなの?」
「まあ、最近は無いけど、昔は良く泊まって行ったよ」
「子供の頃?」
「大学生になっても時々」
「……」
「じゃあ、僕はもう寝るね。お休み」
「……」
「夜中に来たりしないから大丈夫だよ。心配なら鍵をかけると良い。お休み」
〈部屋を出る遊〉
「(心配って…もしかして私…ううん、違う。遊ちゃんはダメなの。でも…」
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