第5話ヒーラーなんですけど

【レストラン前】


ゲッ、またここ?


まっ良いかあ。


もう、la merでもlapisでもどこでも行ってやるわよ。


遊ちゃんだって、平気でうちの店に来て、私にカットさせるんだから。


「ああん、雅、待ってー」


【店内】


まあ、ここの料理は美味しいし。


「それでね、この前行った占いの館なんて、何時間も並んでたった30分で終わりよ。散々怒られてさ」


「だから、やめなさいって言ったでしょう」


まあ、私もハマってた時有ったけどねー。


「5千円払って、30分怒られっぱなし」


「それでも行くのよねー、雅は」


「その前に行った所なて「悪い物が憑いてます!お祓いしましょう!」とか言って、塩と水で何か祈祷して、追加料金取られたしね」


「何かさ「私は悟ってます」みたいな上から目線な人は嫌だな」


「良い占い師居ない?」


「懲りないわね」


私も雅みたいに占いの梯子して、安心するどころか、心がボロボロになって町を歩いてた時に、遊ちゃんとバッタリ会ったのよ。


彼ニッコリ笑って「ヒーリングしようか」って。


何も聞かないでクリスタルヒーリングしてくれたの。


その後色々話してて、私ったら泣いちゃって…


優しいのよね…天空路遊。


今も…好きなのかな私…?


「今度はどこにしよう?」


「彼もタロットやるよ」


遊ちゃん「僕のは聖霊に引かされるから、占いじゃないよ」って言うんだけど…


「当たるの?」


「毎日同じカード引いたりするよ「今はこのメッセージだね」って」


「へー、不思議。30分いくら?」


「時間は決まってないのよ。1時間なんてすぐ過ぎちゃう。それでも1回3千円。パワーストーン作るなら、石代+2千円でセッションしてくれるよー」


「彼何者?」


「石屋。ヒーラーなんだけど「僕はスピじゃないよ」って言ってる」


「スピ?」


「スピリチアル」



「えー?ヒーラーって、スピリチアルでしょう?」


「そうだよねー。精霊と話したりするくせにね。でも何故かその自覚無し。私は石オタクって呼んでるよー」


遊ちゃんて「自分は悟ってます」とか「教えてあげましょう」みたいな上から目線のトコ無いのよねー。


唯々人を癒したいだけなのよ。


そして「癒してあげたいなんて痴がましいけど」って言うのよー。


あの笑顔見てるだけで癒されちゃうんだけど、自分では全然わかってないのよね。


あれ?


テラスに居るの…lapisの店長じゃない?


あ、イケメンのgar??onと話してる。


羊里さんだっけ?


【テラス】


「私、もう行くね」


「まだ良いじゃないか」


「休憩時間終わっちゃうわ」


「ここで休憩して行きなよ」


「嫌よ。貴方と居たら気が休まらないもの」


「それは、ひどいな」


「もう呼び出さないでね。じゃあね」


そんな事言ったって、呼び出したらこうやって来るんだろ。


まだ俺の事好きなんじゃないか。


【天然石ショップlapis】


「戻りました」


「じゃあ、後お願いしますね」


「お疲れ様でした」


さあて、lapisが待ってるから、早く帰ろう。


お腹空いたし。



【天空路家】


あれ?


電気付けっ放しで出かけたっけ?


「ニャニャニャ(パパちゃん抱っこ)」


「お帰りなさい」


「春陽ちゃん、何で?」


「ご飯作ってあげたくて、おばちゃんに鍵開けてもらったの」


それは有り難いな。


お腹空いてるし。


それにしても、今日は早番で店に出てくれて、帰ったら僕の家でご飯作ってるなんて…


良いんだろうか?


他にする事無いのかな?


「lapisは、お兄ちゃんからオヤツ貰ってね」


「ニャー(オヤツ、オヤツ。美味しいのちょうだい)」


「お魚あげまちゅよ~」


「(またこれ?)」


煮干しと鰹節飽きてきてるんだよな。


でも、長生きしてほしいからね。


ちゅ~るとかあげたいけど、他の食べなくなっちゃうから、もう少し先だな。


ニコロなんて、自分で戸棚開けて出して食べちゃうぐらい好きだ。


「お兄ちゃん、食べよう」


「うわ~美味しそう。最近しょっちゅうご飯作ってもらってるし、何かお礼しないとな」


「じゃあ、明日水族館に行きたい」


「オッケー」


「lapis聞いた?明日お兄ちゃんとデートよ」


「ニャー」


【水族館】


そんなわけで、今日は店が休みなので、春陽ちゃんと一緒に水族館に来ているんだ。


平日の昼間だから、あんまり人が居ないな。


「混んでなくて良かったわ」


「魚も、泳いでると意外と可愛いよな。コイツ美味しいのか?」


「もう、可愛いって言っておいて、食べる事考えないでよ」


【プール】


イルカのショーをやるみたいだぞ。


「可愛い。キャッお水かけた」


って僕にしがみつくところは、子供の頃と少しも変わってないね。


高校生ぐらいまでは、良く一緒に出かけたよな。



「久しぶりね、お兄ちゃんとデート」


「僕の他にデートする人居ないのか?」


「皆んなでワイワイ出かけたりはするけど、2人だけで行く男の子は居ないわよ」


【帰り道】


腕なんか組んで来るし…


まあ、昔からそうだったけどね。


お兄ちゃんて呼ばれてるけど、兄妹じゃないんだし、何か…大人になった春陽ちゃんとこうして歩くのって…


何だか本当にデートみたいで、ちょっと、何て言うか…


今迄異性として見た事無かったんだけどね。


「今度はどこに連れて行ってもらおうかな?」


「どこへでもお連れしますよ。姫様のお望みのままに」


「じゃあ、宝塚観に行きたい」


前は良く行ったよな。


母が好きだったからね。


母に連れられて、春陽ちゃんと一緒に観に行ってたよな。


だけど、周りは女性ばっかりで、男はどうして良いかわからなくなるよね。


たまに男も居るけどね。


でも面白い。


レビューは綺麗だしね。


宝塚って、愛称で呼ぶんだよな。


結構知ってるぞ。


母が好きなのは昔のトップスターで、お富さんとぺーさん。


僕はDVDでしか知らないけどね。


母は色々持ってるな。


良く一緒に見たよな。


最近の人はあまり知らないな。


そう言えば随分行ってないね。


「何か食べに行くか?」


「lapisが待ってるから帰ろう。お家で食べた方が良いわね」


そう言ってくれると助かるね。



【天空路家】


「ニャーニャー(パパちゃんお帰り。あ、春陽ちゃんも一緒だ)」


「よちよち、ちゃみちかったか?」


「ニャー(抱っこして)」


〈いつものようにlapisを抱っこして肩の上に乗せる遊〉


【部屋】


「わー、lapis暴れたな」


何か色々散らかってるぞ。


猫は1日に何度か走り回るからね。


まるで猛獣みたいに「ガォガォー」って言いながら走るよな。


トイレの前とか後とかね。


夜行性だから、夜中に遊んだり走り回ったりする子も居るけど、lapisは僕が寝ている間は大人しくしてる。


彼女なりに考えてるのかな?


起こしちゃいけないって。


ベッドで僕にくっついて寝てるよな。


夜中にカリカリを食べたりしてるけど、大人しくまた寝る。


「良い子たんだね~」


チュッ、チュッ。


「ゴロゴロ(好き好き)」


「ちゅき、ちゅき」


「(パパちゃんだーい好き)」


「お片づけしたら、オヤツあげるからね」


「ニャー(オヤツ早く)」


散らかすぐらい良いよな。


元気なら良い。


このぐらいの事では怒らないよ。


今怒っても、わからないだろうし。


ニコロぐらいになると、悪そうにしてるから、後で文句を言ってもわかってるみたいだけどね。


lapisはまだわからないよね。


それに、危ない事をしたら怒らないといけないけど、散らかすぐらいなら怒る必要無い。


怒るのは辛いよ。


痛い思いをしないとわからない時があるから、軽くお尻を叩いて「メッ!」って言うんだけど、僕は怒るの嫌いだから辛い。


強く叩かなくてもキツく「メッ!」って言えばわかるんだ。


猫はお利口だからね。


ニコロなんて、毛玉を吐く時床の上に吐くんだけど、間に合わなくてベッドの上に吐いちゃう事があるんだ。


そんな時は「お布団メだな」って布団に言うだけでわかるもんな。


「ご飯出来たわよ」


ご飯作ってくれるお礼に水族館行ったのに、また作ってもらっちゃったよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る