第4話好きな人居るの?

「ウンチさん出てまちゅよ~良い子に出てまちゅよ~」


あー、猫砂いっぱい散らかしてるな。


元気な証拠だ。


「元気なら良いでちゅ」


今日は、滝本さんが来てくれる日だけど、これは拾っておかないとね。


「ニャニャニャー(ご飯、ご飯。お腹空いた)」


「待ってね~ウンチさんポイちてからね」


【公園前の美容室】


〈八峰美都の髪をセットする西岡素子〉


「私も猫飼ってみたいんだけど、しつけが大変かな?」


「散歩行かなくて良いから、犬より楽ですけどね」


「私の友達の家、猫が爪研ぐから柱も畳もボロボロなのよ」


「天空路の家は、そんな事なかったですよ」


「でも、留守番させるの可哀想だから飼えないな」


「お店終わるの2時ですもんね」


「その後お客さんに付き合ったりするしね。寝不足で、疲れが取れないわよ」


「ちゃんと寝ないと、お肌に悪いですよー」


「やっぱりー?それを考えるとよけい眠れないのよね。薬に頼ると依存しそうで嫌だし」


「天空路が、眠れる石作ってくれますよ」


「石は作れないでしょう」


「アクセサリーです。もう、子供みたいな上げ足取ります?」


「行ってみようかな?」


「あの石オタク石自体作り出しそうですけどね、自ら地層になったりしてー。じゃなかったら石を産むとか」


「無い無い」


【天空路家】


「こ…こんにち…は…」


「滝本さん、何でそんなに汗かいてるの?まだそれほど暑くもないのに」


「電動自転車の電池が切れて…もう、大変…」


「ありゃ」


「普段は快適なんだけど、電池が切れると、ただの鉄の塊だわ。重くて重くて」


「大変だったね」


「もう、バツゲームよ…」


「少し休んで」


「ありがとう。でも、時間無いから。さあ、お掃除するよー」


忙しいんだよな。


うちが終わったらまたすぐ次に行かないといけないんだ。


自転車飛ばして、隣町まで行くんだよね。


滝本楓さん。


こう見えて、二児の母だ。



【ゲストルーム】


「lapisちゃん、柱とかひっ掻かないんだね」


「うん。ちゃんと爪研ぎでするよ。他ではした事無い」


「しつけるの大変じゃなかった?」


「親が教えたからね、すぐに覚えたよ」


「親?」


「lapisのママ」


「チッポちゃん?」


「うん。やって見せたら「良い子」って言われるの見ててlapisもlapisもって」


「へー、そうなんだー」


lapisは1度で覚えたな。


「はーい、lapisちゃん。そっちに行くよー」


「(掃除機さん来た)」


〈耳を下げて逃げるlapis〉


【天然石ショップlapis】


「オーナー。5時にセッションご希望のお客様がいらっしゃいます」


「了解」


【セッションルーム】


お客様がいらっしゃった。


「こんにちはー、お願いします。眠れる石作ってくれます?あ、石を産むわけじゃないわよね」


「え?」


「美容師の素子がね、天空時さんなら産むかもって、冗談言うもんだから…あの子私の後輩なのよ」


「そうなんですか」


お客様の八峰美都様。


ご相談の内容が明確なので、カードリーディングの必要は無さそうだね。


「寝不足は、お肌に悪いでしょう?30過ぎると、シミとかシワとか気になるわよね」


わかりました。


八峰美都様に必要な石。


デザインボードに並べてお見せする。


8mローズクオーツ×12


8mアメジスト×6


6mクリアクオーツ×6


そして、アメジストを12コでローズクオーツを6コにした物とどちらがお好みか伺ってみよう。


「うわー、可愛い。ピンクが多い方が好きだわ。これで眠れるんですか?」


「アメジストも水晶も、安眠効果が期待出来ますね。恋と癒しの石として知られるローズクオーツは、美肌効果も期待されます」


「え?じゃあ、アメジストが多い方が眠れる?でも、美肌効果も魅力的よね…」


「どちらのデザインがお好みですか?」


「こっちの、ピンクが多い方」


「では、こちらでお作り致しますね」



「え?でも、眠れるのはアメジストでしょう?そっちが多い方が良いんじゃないの?」


「確かに普通に考えると、多ければエネルギーも強いかも知れませんが、1つ1つ違いますので、必ずしもそうとは言い切れないんです。ローズクオーツの癒しも眠りに繋がりますし、アメジストと相性が良いんですよ」


「見てるだけで癒されるー」


「水晶は他の石達を調和させ、より力を引き出してくれます。問題は、お客様がどちらのデザインがお好きか、と言う事ですね」


「こっち!でも、こんな選び方で良いの?」


「石は仲良くすればより力を発揮してくれます「やっぱりこれじゃない方が良かった」と思えば石にも伝わるんですよ「好き」って思った方が頑張ってくれるんです」


「何か…やっぱり石オタク?生き物みたいに言うわね」


「そうですね。花だって「綺麗だね」って言って可愛がれば喜ぶって言うでしょう?」


「うん。宴が同じような事言ってた。あ、同級生なのよ」


「はあ、そうなんですか」


「あ、もうこんな時間!お店行かなきゃ。あ、私barをやってるの。良かったら来てね」


名刺を置いて行かれたけど…


lapisが来てから、夜遅く出歩かなくなったからな。


さて、作りますか。


「うーん綺麗だね。八峰美都様が眠れるように頑張るんだよ。お肌が綺麗になりますように。健康になりますように」



【bar】


〈天然石の話しで盛り上がる美都、宴、素子〉


「浄化するのに1日かかるんだって。明日は行けないから、明後日取りに行く事にしたわ」


「石の解説素敵だったでしょう?」


「石を生き物みたいに熱く語ってた」


「どこが素敵なんですかあー」


「呑みに来て、って名刺渡しといたわよ」


「来るとは思えませんよ」


「どうしてよ?」


「猫が待ってるから、って、急いで帰っちゃう人ですから」


「そっか」


やっぱり、昼間誘うしか無さそうね。


素子は、どうやってデートしてたのかしら?


恋と癒しの石、私も欲しくなっちゃったな。


【天然石ショップlapis】


「いらっしゃいませ」


「八峰ですけど、注文したブレスレット出来てますか?」


「はい、少々お待ちください。オーナーお願いします」


「こちらになります」


浄化したブレスをお見せする。


「わー素敵!」


「水に濡れても大丈夫な石ばかりですが、直射日光で褪色するのでご注意ください。ローズクオーツは、外部からの波動を溜め込んで開放するのが苦手なので、こまめに浄化してくださいね」


「はーい。本当に優しいピンクで癒される。美肌効果が嬉しいわよね」


「愛と美の女神アフロディーテの石ですから」


「なるほど。あ、水に濡れても大丈夫だったわよね?」


「はい、大丈夫です」


「じゃあ、このままして行くー」


【天空路家】


「じゃあ、行って来るからね~良い子にお留守番ちててね~」


ああ、行っちゃった。


またお留守番の時間。


寝て待ってよう。


【町】


暖かくなってきたし、森林浴しようかな。


家と店の往復だけじゃつまんないもんな。


【公園】


あ、猫が寝てる。


lapisどうしてるかな?


今見て来たばっかりだけど。


あれ?


あそこに居るのは…


「あら、天空路さん」


寿宴さんだ。


「珍しいわね、こんな所で会うの。私は野花を見に時々来るの」


そうなんだ。


「ほら、スミレが咲いてる。可愛いでしょう?」


「ああ、本当だね」


それから何と無く2人で公園の中を散歩した。


気持ち良いなあ。


「猫ちゃんどうしてるの?」


「今ご飯あげて来たところ」


お昼休みも家に帰ってるのね。


ランチはどうしてるのかしら?


それも家で猫と一緒?



【池の畔】


お昼誘うのも難しいかしら?


今日は、ラッキーだったわ。


「ねえ、明日のお昼猫ちゃんにご飯あげたら、一緒にランチしない?」


「良いよ」


「本当?じゃあ、うちのお店に来て」


「うん」


【Cafe】


〈翌日の昼〉


「ここのケーキ美味しいのよ。いくつでも食べられちゃうの」


女の人は、甘い物は別腹、って言うもんね。


「美都と素子と3人で良く来るのよ」


素子と別れてから、彼女居るのかな?


先月別れたって言ってたから、まだ居ない?


どうなんだろう?


聞いちゃおうかな?


何か私、積極的な性格になってる?


オバサンになって、図々しくなったのかしら?


「ねえ天空路さん。今付き合ってる人居るの?」


「居ない」


「好きな人は?」


「素敵な人だな、って思う人は居るよ」


え?


どんな人だろう?


【天然石ショップlapis】


「オーナー。お帰りなさい」


「ただいま」


「明日美さん、オーナーと工房に行くのでお客様お願いします」


「はーい」


【工房】


「これからの季節にピッタリの色目のアクセ作りましょう」


「うん、春っぽいのも良いけど、新緑の季節の感じのもね」


「この辺りの石はどうですか?」


麻友さんは、良く気が利くし、センスも良いんだよな。


お店ではテキパキしてるけど、普段のおっとりのんびりしてる感じが好きだな。


〈麻友の携帯の通知音が鳴る〉


「良いの?」


「後で見ますから」


「急用だといけないから、見て良いよ」


「すみません、失礼します」


〈メールを見る麻友〉


羊里君だわ。


「急用じゃないので、放置」


「そうか。じゃあ作るよ」


麻友さんて、何だか良い匂いがするんだよな。


優しい香り。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る