第3話猫好きの人は優しい?

【天然石ショップlapis】


「オーナー。明日のお休みなんですけど、何か予定有りますか?」


明日は、定休日だな。


「特に無いけど」


「天然石の勉強に、お宅に伺っても宜しいですか?」


「良いよ」


「la merの方は宜しいのですか?」


「朝に顔を出すから、午後からなら大丈夫」


「では、午後にお邪魔しますね」


【レストラン前】


「ここのgarconイケメンなのよねー」


「えーっ?!ここーっ?!」


「何よ、素子。リアクション派手過ぎよ」


「だって、この店…あ、ほら来た」


〈美都の後ろに隠れる素子〉


「何してるのよ?」


「来たんです。ここのオーナー…の息子」


「あの人?」


「天空路」


「え?彼が天空路さん?」


「そうです。もう、早く消えて無くなれーー」


「へー、garconと良い勝負のイケメンだわ」


「ねえ先輩、帰りましょうよー」


「何言ってるのよ、せっかく予約取れたのに」


【店内】


今日も開店時間からお客様で一杯だな。


彼は、garconの羊里君。


イケメン執事じゃなくて、イケメン羊なんて言われてるんだ。


彼に会いたくて来てくださるお客様もいらっしゃる。


ここは、父の経営するレストランla mer。


lapisの石垣麻友さんは、ここで働いてくれていたんだ。


そして、去年lapisが開店した時、店長として来てもらった。


「いらっしゃいませ」


〈美都の陰に隠れて中に入る素子。遊は気づかず外に出る〉


「あー、良かった」


「予約した八峰ですけど。はっぽうと書いて、やつみねと読みます」


「八方美人の八峰美都さんです」


「ちょっと素子」


「エヘ」


「ご案内致します。どうぞこちらへ」


【天空路家】


「ただいま~」


「ニャー」


「もうすぐ麻友さん来るよ」


「ニャ?」


【部屋】


「ニャー(お腹空いたわ)」


「おやつあげるからね~」


「ニャニャー(早く早く)」


煮干しと鰹節のふりかけ無いと、カリカリ食べなくなってきたな。



「ンニャン(もっと)」


「よく食べまちゅね。良い子たんでちゅね~」


〈玄関のチャイムの音に、ビクッとするlapis〉


「(誰か来た)」


【玄関】


「はーい」


「こんにちは」


「どうぞ」


「お邪魔します」


【部屋】


「あら?lapisちゃんは?」


「どっかに隠れてるな」


「あ、居た居た。お久しぶり」


「シャー!」


「コラ、lapis。可愛くないぞ」


「あら、まだ慣れてくれないの?触りたいのにな」


麻友さんは、時々しか来ないからね。


彼女は猫好きなんだけど、中々懐かないよな。


「じゃあ、始めようか」


「はい、お願いします」


テーブルの上にパワーストーンを出すと、lapisが出て来た。


様子を窺っている感じだな。


うーん、ビーズは出せないな。


皆んな転がしてどっかの下に入れちゃうもんね。


色々な石のワンドやタンブルを握ってエネルギーを感じる。


石を麻友さんに渡す。


「ファーッ!(何してるのよ!)」


「コラlapis」


「ウゥゥー(パパちゃんに触らないで)」


「ごめんね」


「大丈夫よ~」


〈テーブルの上に上がって、遊と麻友の間に入るlapis〉


「(早く帰ってくれないかしら)」


「lapis、邪魔するなよ」


「良いわよね、そこで良い子にしてるなら大丈夫」


「(ムゥ…)」


「なあに?どうして私の顔見るの?」


「ニャッ(私のパパちゃんなのよ)」


麻友さんは、店ではテキパキ働いてくれているけど、普段は穏やかでおっとりしてるんだ。


僕は、こういう人が好きだな。


恋人居るのかな?


la merに居た頃は、羊里君と仲良くしてたけど…


〈遊の方へ向きを変えるlapis〉


「お顔がくっつきそうね。そんなにされると可愛いわよね」


「(もう、パパちゃん。私に構って)」


〈そして…〉


麻友さんが帰ったら、やっと寝た。


今のうちだな。


lapisが起きてると、ゆっくりできないからね。


〈遊が部屋を出ると、起きて目で追うlapis〉


どこに行くのかしら?


もうお留守番は嫌よ。


〈部屋を出て遊を探す〉



【お風呂場】


〈遊が身体を洗っていると…〉


「アーオン、アーオン(パパちゃーん、寂しいよー)」


「はあいー」


「アーオン、アーオン(早く出て来て)」


「待ってねー」


いつもそうだけど、お風呂に入っていると、凄く悲しい声で鳴くんだ。


「アーオン、アーオン(パパちゃん早く)」


「もうちゅぐ、もうちゅぐ」


ずっと、こうやって返事をしながら、急いで洗って出る。


ゆっくり温まってなんて入っていられないよな。


そう言えば、まだ僕が隣の親達の家に居た頃、lapisの父親のニコロがあんまり鳴くもんだから扉を開けてやったんだ。


そしたら、お風呂のふちに乗ろうとして中に落ちてたな。


何度落ちても懲りなかった。


フレデリックは、上手くふちに乗って、僕が出るまで待っててくれたんだけどね。


【ベッドルーム】


「ニャー(早く抱っこ)」


「スリスリしたら、まだ濡れてるぞ」


「ニャー(抱っこ抱っこ)」


【レストランla mer】


「麻友ちゃん久しぶり。もう上がる時間だから待っててよ」


「待ってて、どうするの?」


「デートに決まってるじゃないか」


「羊里君、わかってる?私達とっくに別れたのよ」


「君の方から一方的にね」


「あなたが浮気するからよ」


「最近また綺麗になったじゃないか。それって石の美容効果?」


「それも有るでしょうね」


「それも、ってところが気になるな」


「まだ勤務中でしょう。戻って」


羊里君のおかげで、男性不信な感じだわ。


当分恋愛なんてしたくないわね。


【天空路家】


〈lapisを抱っこする遊〉


「可愛くて可愛くてどうしよう?もう、lapis。元気で良い子?ずっと元気でそばに居てくれよ」


チュッ、チュッ。


〈遊の鼻に自分の鼻を擦り付けるlapis〉


「ンニャ(好き好き)」


「ちゅきちゅき」


好き好きの仕方、父親のニコロそっくりだな。


フレデリックの好き好きは、頭を擦り付ける感じだったけどね。


「パパちゃんの大事大事。lapisが1番大事だからね」


「ゴロゴロ(パパちゃん大好き)」


「じゃあ、寝んねちゅるよ」



【ベッドルーム】


〈朝…窓の外を見るlapis〉


「アッアッアッア(小鳥、小鳥)」


「おはようlapis」


「アッアッアッ(捕まえて遊びたい)」


「ピーちゃん来たね」


【公園前の美容室】


〈寿宴の髪をブローする西岡素子〉


「猫好きの男は、もう嫌です」


「犬は好きだけど猫は嫌いって人も居るわよね」


「両方好きな人も居ますけど」


「何か、犬は従順だから好きだけど、猫は気紛れだから嫌みたいな感じ?」


「そういう事言う人も居ますね」


「それって、自分の言いなりにならなきゃ嫌なんじゃない?猫好きの人は気紛れでも好きなんだから、優しいのよ」


「天空路は、どっちも好きなんですけどね。実家に犬3匹居ますから」


「猫好きな人って両方好だけど、どっち?って聞かれたら猫。みたいな人多い気がするわ」


「確かに優しい事は優しいんですけどね…はーいお疲れ様でしたー」


「ありがとう」


【駅ビル】


〈改札の前を通り駅の反対側へ向かう遊〉


【公園前の美容室】


「いらっしゃいませ」


「ちょっと遊ちゃん。別れたのに来る?しかも私指名?」


「そんな事言ったって、他の人にカットしてもらっても気に入らないんだ」


「良い度胸してるわね。今日もお任せでしょう?好きにさせてもらうからね」


毎月来ているんだけど…


先月別れてから初めて来たんだよな。


元々ずっとこの店に来ていて、色々な人にやってもらって、1番気に入ったのが素子ちゃんなんだから仕方ない。


僕が予約の電話を入れると、スタッフの人はわかっていて、自動的に素子ちゃんの指名になるんだ。


そんな感じで、この店とは長い付き合いなんだけどね。


去年の秋、町で偶然素子ちゃんと会って、何と無く付き合うみたいな感じになったんだよな。


彼女、猫は嫌いじゃないみたいだけど、特別好きでもないみたいだ。



【lapisの事務所】


ここは、事務所兼工房になっていて、ここでアクセを作ったりするんだ。


「あら、オーナー。さっぱりしましたね」


「おかしいかな?」


「ううん、カッコいい。ね、麻友さん?」


「短い方がお似合いですね」


良かった。


素子ちゃん、あんな事言ってたけど、プロだからね、下手な事はしないよな。


【bar】


「それでねー、モヒカンにでもしてやろうと思ったんですけど」


「プロ意識がそうさせなかったか」


「だって、似合いそうにないんだもん」


「確かにね」


「ベリーショートにしてやりました」


「まあ、暖かくなってきたから、良いんじゃない?」


「あー、悔しい。結局カッコ良くしちゃった」


「私が帰ってすぐに来たの?」


「宴先輩と入れ違いです」


「もう少し居たら会えたのか…でも、カットしてるところとかって、見られるの嫌よね」


「本当、どういう神経してるんですかね?天空路」


「素子。なんだかんだ言って、まだ好きなんじゃないの?」


「えーっ?まさか?もう好きじゃ有りませんよ…たぶん」


「たぶん?」


まあ、凄く嫌になって別れたわけじゃないけど…


「素敵な人よね」


「どこがですか?あのイケメンが猫を前にすると豹変するんですよ」


「メロメロなのよね」


「「良ち良ちー、良い子たんでちゅか?」なんて言ってるの聞いたら、宴先輩だって引きますよ」


【ドラッグストア】


ササミ、食べるかな?


体に良さそうたがら、買って帰るか。


【夜の町】


あー、頭寒い。


早く帰ろう。


【天空路家】


「ただいま~。良い子たんちてまちたか?」


「ニャン、ニャン、ニャン(オヤツ買って来たでしょう)」


あ、袋に頭突っ込んでる。


何でわかるんだ?


本当に食べるのか?


「はい、トリさんどーじょ」


「(美味しー、もっと、もっと)」


「痛い、痛い。おててまでパクちないで」


「(ごめんなさい。美味しいとおててパクってなっちゃうの)」


痛いって言うと、そっと食べるんだけど、また段々パクって手まで噛むんだよな。


ああでも、喜んで食べてくれると嬉しいな。

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