第14話好きだよ僕の初恋の人

【駅前】


「あ、天空路さん。良いところで会ったわ。これ」


ああ、レシピだね。


☆天然石幸せのレシピ☆


お名前、寿宴、年齢、32歳(年を書くの嫌ね(笑))


体の不調など気になる所、冷え性


精神的な悩み心配事など、特に無し


ご希望の願い事、商売繁盛


好きな色、黄色


嫌いな色、特に無し


ご希望の石が有ればお書きください?

えー…よくわかりません。お任せします。


~Lapis~


やっぱり冷え性ね。


冬になれば、石の効果が実感出来るかも知れないな。


「お昼休み?」


「うん」


「ランチに行くの?」


「家に帰ろうと思って」


「Lapisちゃんが寂しがるからね」


「最近子猫が来るから心配でね」


「あら、子猫?見てみたい」


「見に来る?」


「良いの?(これはチャンスだわ)」


「良かったらおいでよ」


「じゃあお邪魔させてもらうわね」


【天空路家】


「(あ、パパちゃん帰って来た)」


〈玄関に走るLapis〉


「ニャー、ニャー(早く早く)」


「Lapisただ今。良い子たんちてまちたか~?」


「(これね、素子が言ってたの。さすがにちょっと引くかも)」


「(あ、誰か一緒!誰なの?)」


「Lapisちゃん、可愛いわね。宜しくね」


「シャー(そばに来ないで!)」


「あらま、嫌われちゃったわ」


「こらLapis。可愛くないぞ」


「(もう、何よ。早く帰ってよ)」


〈イカ耳で背中を山のようにして威嚇のポーズのLapis〉


「ごめんね」


「……」


【リビング】


「ノラちゃん居るかな?びっくりして逃げちゃうから、そ~っとね」


「わかった」


〈遊が窓の外にカリカリを置くと、子猫が出て来る〉


「あれ?もう1匹居たのか。兄弟だな」


「食べてる食べてる。可愛いわね」


「夜はどこて寝るんだ?今は良いけど、冬になったらどうするんだろう?」


「保護して飼い主探す?」


「うちで飼ってやりたいけど、Lapisはお姉さんになれないもんな、焼きもち妬きだから」


「焼きもち?」


「僕が縫いぐるみ持ってても怒るんだ。飛びついて取って噛む」


「あら…愛されてるのね」


「ミュー、ミュー」


「私飼っても良いわよ」


「本当?」


「一匹なら」


「じゃあ、捕獲作戦だ」


キャリーケースに猫缶を入れて、入口を開けておく。


ちょっと警戒してるけど、美味しい匂いがするみたいだね。


頭を突っ込んだぞ。


入った入った!


食べてる間に入口を閉めて。


捕獲成功だ!


「ミュー、ミュー(怖いよ)」


「よちよち~大丈夫だよ」


一匹は捕まったけど、もう一匹は出て来ないな。


【洗面所】


「ミュー、ミュー(何?どうするつもり?)」


「良い子だね。綺麗綺麗ちようね~」


「ミュー(お水怖いよ)」


「洗ったら綺麗になったわね。白い猫だから、綺麗にしてあげないと汚れが目立つわね」


「ミュー、ミュー」


「ノミ取りシャンプーで洗ったけど、まだ残ってるかも知れないから、ノミ取りくしで取ろう」


「ノミかあ」


「今のうちに取っておかないと、増えたら大変だからね」


「そうよね」


「居た居た」


「でも、取ってもまたつくでしょう?」


「卵もちゃんと取ってしまえば大丈夫。外に出さなければね」


「家の中だけにする」


「外は危険が一杯だからね。出さないで」


「わかったわ」


「もう大丈夫だと思うよ」


「鳴かなくなったと思ったら、寝ちゃったのね」


「はい、抱っこして」


宴さんに子猫を抱かせる。


「可愛い」


「あ、もしもし麻友さん?ちょっと遅くなっちゃった。ごめんね。もう少ししたら行きます」


「ごめんなさい。お店行かないといけないのに」


「この子、ちゃんと乾かさないと」


「そうね」


【リビング】


Lapisが覗きに来た。


Lapis「(何この子。どうしてここに居るの?)」


ちょっとびっくりしてるみたいだな。


逃げ腰になってるぞ。


そう言えば、隣の家のフレデリック。


異常に大きい猫なんだけど、二コロが来た時は高い所に上がって2週間も降りて来なかったよな。


自分の頭の上に乗るぐらい小さい相手にびっくりして、飛び下がってたっけ。


さて、もう1匹の茶色い子はどうしよう?


窓の外には居ないみたいだ。


どこかに隠れてるのかな?


「天空路さんごめんなさい。もうこの子乾いたから。お店行くんでしょう?」


「うん。じゃあ出ようか」


「はい」


「Lapis。良い子にしてるんだぞ」


「(またお留守番ね。わかってたわ)」


【駅前の花屋】


「あ、そうだ。はいこれ」


「なあに?」


「まだ小さいから、カリカリはふやかしてやってね」


「ありがとう。助かるわ(そうだ。これからは猫のご飯一緒に買いに行ってもらおう)」


「じゃあね」


「うん。ありがとう」


「ミュー(ここはどこ?)」


「良い子ね、おかげで天空路さんとデートする口実が出来たわ」


【天然石ショップLapis】


「遊ちゃん、聞いたわよ。宴先輩猫飼うんだって?」


「うん、一匹引き受けてもらったんだ。後一匹居るんだけど、まだ保護出来てない」


「そっか(宴先輩も家に行ったんだね。一度行ってしまえばあの人の事だから平気で行くようになるな、きっと)」


「今日はどうしたの?」


「あ、これ持って来たのよ(来る途中で宴先輩から聞かされたのよ)」


「ああ、レシピね」


☆天然石幸せのレシピ☆


お名前、西岡素子、年齢28歳。


体の不調など気になる所、腰痛。


精神的な悩み事など、独立したい。


ご希望の願い事、目標達成。


好きな色、色々。


嫌いな色、暗い色。


ご希望の石が有ればお書きください、良くわかりません。


「腰痛か、立ち仕事だからな」


「そうなのよ」


「良い石有る?」


「有るよ」


「じゃあ、今度作ってもらおうかな?」


「石とかスピとか信じないんじゃなかった?」


「まだ半信半疑」


「僕も自分で体験する迄はそうだったよ。今でも、体験した事の無い効果は疑問」


「石屋がそんな事言って良いの?」


「まあね、お客様から体験談とか聞くから、効果は有ると思うよ。人それぞれだけどね」


「遊ちゃんて本当商売下手よね。よその店みたにうまいこと言って売れば儲かるのに」


「本気で言ってる?」


「まあ、それが出来ない人だって、わかってるけどね(そこが良い所でも有るのよねー。金の亡者なら好きにならなかったわよ)」


【工房】


さて、出来上がったアクセ達を浄化しますか。


〈ブレス、イヤリング、ペンダントトップなどを、水晶のクラスターやさざれに乗せる〉


昨日浄化したアクセ達は、みんなキラキラしてる。


アベンチュリンも、浄化したら色が変わって、綺麗な緑色になった。


「この前仕入れたアベンチュリンですね。思ったより綺麗な色になりましたね」


「うん。これが天然石の面白い所だよね」


「色が疎らで買うの迷ってましたけど、買って良かったですね」


「そうだね」


〈アクセサリーを取る手が重なる〉


「……」


「……」


「ところで…まだレシピを提出してないのは麻友さんだけだよ」


「そうでした」


「書けた?」


「願い事がね…やっぱり結婚て書いておこうかしら?」


「迷うぐらいだから、それ程でもないのかな?」


「切実ではないですけど、願望が無いわけでもないのよ。子供も産みたいし…女はね、本当に好きになったら、その人の子供を産みたい、って思うものなの」


なんか…ドキッとした。


「そんなふうに思える相手が…居たの?」


「え?」


「もしかして羊里君とか…」


「まさか。今迄付き合った人の中には居なかったわ。そこまで好きになれる人…」


「良かった」


「え?」


「あ…」


「何でだろう?何で良かったって思ったんだろう?」


「遊ちゃん」


「……」


「……」


「麻友さんが誰かの子供を産むの、ちょっと嫌だなって…」


「……」


「……」


「そんな事言わないで…貴方にそんな事言われたら…」


僕は、思わず麻友さんを抱き締めた。


「……」


「……」


「ダメよ…放し…て…」


「嫌だ」


「遊ちゃん…」


「放さない」


「お願い…」


「好き…だよ」


「……」


「……」


「…聞かなかった事にするわ」


「いつもそうやって逃げるんだね。僕の…初恋」


「そんなふうに言わないで…」


「わかってたでしょう?」


「(わかってたわ、貴方が高校生の時…でも、私はその頃la merで働き始めたばかりだったし、年上でだし、オーナーに申し訳なくて、気づかないフリをしてたの)」


「初恋だった、麻友さんが」


「初恋ね…。子供だったわね。私、年下に興味無いの」


その言葉に、切なくなった。


そして…


僕が腕を緩めると、彼女はそっと離れた。


また振られちゃったな。


「(ここで2人きりになると危ないわね…遊ちゃんはダメ…好きになってはいけないの…危ないのわかっていても来てしまうのよ…期待してたのかしら?)」

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