第8話麻友縁切りの石

【天空路家】


「うわっ!こんな所に…」


「(えっ?)」


「Lapis。パパちゃんウンチさん踏みまちた…こんな所に落としてるんだもんなぁ…」


「(パパちゃんが何か言ってる…怒ってるわけじゃないわよね?)」


〈部屋の隅で遊の様子を見ているLapis〉


ウンチさんの後走り回るからだよな。


お尻についてるやつを落とすんだ。


この時期毛が抜けてお腹の中に入るから、ウンチさんの中は毛が一杯で、上手に最後まで出切らないんだから仕方ないよな。


「元気なら良いです。ウンチさん落とすぐらい良い良い」


「(怒ってないみたい。良かったわ)」


猫トイレの前に、足拭きが置いて有るんだけど、Lapisのパパの二コロみたいに手を拭くようになると良いなあ。


二コロは、そこでお尻も拭いてたぞ。


【lapisの工房】


「うーん、やっぱり何度見ても私にオブシディアンは無理」


「どうしたの?麻友さん」


「あ、オーナー。私…本気で縁切りの石を探してるんです」


「縁切りの石ね…諸説有るよな」


「la merには仕事で行かなくちゃいけないし…いいえ、la merに行くのは好きなんですけど、羊里君が…」


「え?本当に羊里君と縁切り?」


「もうとっくに終わってるのに、呼び出されたり…それで行ってしまう私も悪いのよね」


「そうなのか…何だか羊里君が可哀想な気もするけど」


でも、呼び出されたら行ってしまうって、麻友さんの方もまだ気持ち残ってるのかな?


それともただの優しさ?


「放っておけない人だからな」


「そうなのよね」


「………」


「オーナー。彼と復縁した方が良いと思ってます?」


「え?いや…」


って、麻友さん…顔…


近過ぎ。


何か…そんなに見詰められたら、身動き取れないぞ。


「……」


「……」


何だろう?


僕…ドキドキしてるのか?


「あ、えーっと…オブシディアンじゃなかったら、オニキスとかブラックトルマリンは?」


「やっぱり黒い石ですね。浄化か…」


「プレナイトは、必要な物と不必要な物を見分けるサポートをしてくれるから良いと思うよ」


「そうですよね。うーん…これもピンと来ません」


麻友さん、ちゃんと石の勉強してるから、僕が説明するまでもないね。


「そうだな…悪縁を断ち切ると言うより人間関係の改善と考えたら?」


「それなら…アメジストが良いかしら?」


「アベンチュリンとか、勿論水晶もね」


「水晶で邪気祓いも有るわね。多めに入れたいわ。痴漢撃退もしたいし」


えっ?


ま、まあ、確かに痴漢撃退にはお勧めの石だけど…


そうか、女性はそれが有るね。


痴漢に遭った事無い人なんて居るのかな?


麻友さんに痴漢なんて、許せないぞ。


いや、全ての女性に痴漢はやっぱり許せないな。


そりゃあ本能的に変な気になるのはわかる。


僕だって男だからね。


これから暖かくなって、女性が肌を露出するようになったら、男達は理性との戦いが大変だ。


さて、デザインボードに並べてみようか。


水晶は多めね。


8m水晶×6


6m水晶×6


ブラックトルマリンは、便秘の人には相性の善し悪しが有るから少なめ?


まあ、麻友さんのお通じの事までわからないけど…聞けないしね。


「邪気祓いにはブラックトルマリンが良いけど、黒に抵抗有るみたいだから、mixトルマリンは?」


8m mixトルマリン×3


それから、アメジストとアベンチュリン。


8mラベンダーアメジスト×6


8mアベンチュリン×3


「女性にはちょっと色目が地味かな?」


「でも、ラベンダーアメジストが綺麗ですね。涼し気だし、私は好きですよ、このブレス」


「アメジストは第6第7チャクラのエネルギーと呼応するから、イヤリングでも良いね」


「そうですね」


「うーん、人間関係改善、邪気祓い、それに痴漢撃退のブレス」


「じゃあ、それで作って頂けますか?」


「え?僕が作るの?」


「オーナーに作って頂いた方が効果が有るような気がします。私達が作っている物もお売りしているので、そんな事言ったらお客様に申し訳無いですけど」


「じゃあ、石選んで」


「はい。直感でコレと思う石…」


「握ってみてエネルギーが気持ち良いやつね。そう言えば、麻友さんにブレス作ってあげるの初めてだね」


「そうですね。ワクワクします」


さ~て、作りますか。


「う~ん、綺麗だね。頑張って麻友さんを守るんだよ」


「フフフ、それそれ、それが聞きたかったの」


いつものように精霊と話しながら作っていたら聞かれちゃった。


ちょっと恥ずかしいけど、天然石のアクセを作る時はこれはやらないとね。


「私のを作る時は何て言うのかな?って思ってたんです」


「休憩行かなくて良いの?」


「ここで休憩します」


〈ブレスを作る作業を覗き込む麻友〉


「出来た『ガーディアン』あ、名前は自分で好きにつけて」


「『ガーディアン』にします。本当に守ってくれそうね」


僕は、出来上がったブレスの石の組み合わせでイメージして名前をつける事が有るんだ。


例えばマリア様のようなイメージの時は『マザー・メアリー』とかね。


このブレスは、浄化、邪気祓い、痴漢撃退の強力なお守りだから『ガーディアン』


お客様にお渡しする時は、名前が有ってもお伝えしないんだ。


パワーストーンは、自分で名前をつけたりして仲良くなってもらった方が良いからね。


「このまま頂いて行っても宜しいですか?」


「浄化は?」


「家に帰って自分でします。アメジストとトルマリンが有るから日光浴はダメね。月浴びが良いかしら?それともセージ?」


「水も音叉も大丈夫だよ。僕は大概水晶で浄化しちゃうけどね」


「水は大丈夫な石ばっかりですけど、ゴムが傷むのが心配で」


「月浴びなら、窓際に置いておくだけで良いね。今日はちょうど満月だしね」


「今日は満月、しかもストロベリームーン。そんな日に初めて私のブレスを作ってくれたのね、何だかロマンチックだわ」


「え?」


「いいえ、何でもないです…明日からこのブレスが私を守ってくれるのね」


嬉しそうだね。


【天空路家】


「は~いラピちゃん。ご飯でちゅよ~。良い子に食べてくだちゃ~い」


「(今日のは美味しいかしら?)」


「どーじょ」


「(また同じね…でも、お腹空いてるから食べるわ)」


今日は、満月か。


うちの石達も月浴びさせてあげようかな?


窓際に並べておこう。


水晶のさざれも浄化しとこう。


〈笊にさざれを入れて、天然塩をを混ぜて流水で洗い、タオルで優しく拭いたら乾いたタオルに並べる〉


「いつも皆んなを浄化してくれてありがとうね」


どこに置いて乾かそうかな?


Lapisが触らない所が良いけど、月光浴が出来る場所が良いよな。


そのまま3日ぐらい置いておく。


水晶だから日光浴で浄化も出来るしね。


ゲストルームに置いて、鍵をかけておくか。


【天然石ショップlapis】


素子ちゃんと美都さんが嬉しい知らせを持って来てくれた。


「5週目だって」


「そうなのかぁ~良かったなあ」


先日パワーストーンブレスをお作りした雅古都様に赤ちゃんが出来たんだ。


本当に良かった。


「天空路さん、まるで自分の子供が出来たみたいな喜びようね」


「コイツ、いや、この人すんごい子供好きですからね」


「あらま、それじゃあ自分の子供の時はもっと大変?」


そうなのよね、きっと妊婦の奥さんにも優しいわよ遊ちゃんは。


「天空路さんが作ったブレスの効果有ったわね」


「雅、体調悪くて病院行ったら妊娠してたって」


体調と言えば、八峰美都様のお顔の色が優れないのが気にかかるな。


「あの、八峰様。宜しければクリスタルヒーリング致しましょうか?」


「え?あ、そう?お願いしようかな?何だか調子悪くて」


【セッションルーム】


「私夜の仕事だから、明け方まで呑んだりしてお昼頃まで寝てるじゃない?それから色々やってまた夜お店でしょ?こうやって友達と出掛ける時ぐらいしか昼間外歩かないのよね」


「先輩、太陽の光を浴びないの良くないですよ」


「紫外線怖いし」


「それはそうですけど…そうじゃなくて、もう。暗い所にばっかり居ると良くないって言ってるんです」


「どうぞ、そちらのベッドに横になってください」


「あ、寝ちゃいそう」


「私も居て良いの?」


「八峰様が宜しけれればどうぞ」


「私は良いわよ」


「ベッドに横になったりして、天空路が先輩に変な事しないように見張ってますね」


「あら、良いわよ、変な事しても。天空路さんなら」


「えっ?」


「アハハ、何固まってるのよ。冗談よ冗談」


「変な事なんてしませんから、安心してください」


「それって、私に魅力が無いって事?」


「冗談はこのぐらいにして、ヒーリングしますのでリラックスしてくださいね」


「ちょっと、何で私にだけ敬語なのよ?」


「お客様ですから」


「宴とも仲良くしてるんでしょ?私だって友達になりたいわよ。今から敬語使ったら罰ゲームね」


「わかりました」


「ほら罰ゲーム」


「あっそうか…あの、ヒーリングの間は敬語になっちゃうけど」


「まあ、そこは許してあげるわよ」


「良かった。では始めます」


足元からクリスタルを置いていく。


しっかりとグラウンディングさせる。


頭からつま先までオーラクリーニングをしたらワンドで浄化して、古いエネルギーと新しいエネルギーを交換する。


そして、ペンデュラムでヒーリングして行く。


エネルギーが滞っていたり、問題が有る部分では、ペンデュラムが激しく動くんだ。


胃腸の辺りに問題を抱えていそうだな。


お酒をたくさん呑むからだろうけど…


ハートチャクラもギュッと閉じてる。


精神的にも何か有るのだろうか?


ペンデュラムの後、もう一度オーラクリーニングする。


施術が終わった。


「あー気持ち良かった。ウトウトしちゃったわよ」


「胃腸の具合はどうですか?」


「呑むからねー、胃薬は放せないわね。どうして?」


「この人、ヒーリングすると悪い所がわかるんですよ」


「そうなんだあ」


「病院には行ってるわよ。胃炎だって」


「先輩肝臓は?」


「今のところ大丈夫」


第3チャクラ、マニプーラは感情のチャクラ。


第4アナーハタ(ハートチャクラ)も閉じているし、何か深刻な悩みでも有るのだろうか?


「八峰さん」


「美都って呼んでー」


「美都さん。自分にも優しくね」


「え…?」


そう言うとびっくりしたようで…


そして、いつも明るい美都さんが、一瞬顔を曇らせた。


これ以上何か言うと、笑ってごまかされそうだね。


その前にカードを引いてもらおうかな?

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