第9話八峰美都の事情
「え?何々?占い?」
カードを箱から取り出すと、美都さんは興味津々だね。
「石のカードを引いてみましょうか」
「あ、宴が言ってたやつだ。面白そうね。やるやるー」
カードを切って横に並べる。
ワンオラクルだな。
「直感で1枚引いて下さい」
「うーん…じゃあ、これ!」
八峰美都さんが引いたのは、アクアマリンのカード。
コミュニケーションか。
「美都さんは、接客をするから、お喋りは得意だと思ってたんだけど…」
「うん。まあ、仕事の時はね」
仕事の時は、か。
「どうして?」
「アクアマリンは、喉のチャクラと呼応するのですが、第5チャクラはコミュニケーションとか、自己表現のチャクラ。自信の無さや過去からの心理的な傷が現れたりします」
「え?…何か…当たってる」
「このカードのメッセージは「心をオープンにして本当の思いを打ち明ければ、誤解やすれ違いは解消される」と言うような意味が有ります」
「ちょっと…当たってて怖いわ」
「キーワードは「誤解を取り除く、関係の復活、愛の復活、浄化」などが有ります」
「(え?私もそのカード引いたらどうしよう?)」
美都さんは、しばらく黙っていたけど…
「関係の復活の為には、本当の気持ちを話せば良いって事ね」
「先輩、復活って、まさか別れた旦那さんと?」
「まさか!子供よ。息子」
そして…
美都さんには8才になる息子さんが居て、別れた御主人と一緒に暮らしていると話してくれた。
「あの子、私に捨てられたと思ってるのよ。別れた時は3才で、わけがわからなくて、ただギャーギャー泣いてた」
「そうだったんですね(先輩がこの事話してくれたの初めてだな…これも遊ちゃんの癒しの魔法?)」
「じゃあさ、アクアマリンのブレス作ってもらえば良いワケ?」
「アクアマリンは、特に男女の和解ですね。お子さんなら、コミュニケーション、本当の思いを打ち明ける」
「そうよね…」
「第5チャクラヴィシュッダ対応の石は、他にもたくさん有りますよ。青い石。ブルーレースアゲート、ターコイズ、アマゾナイト…」
「え?それグリーンに見える」
「ですから、第4と第5チャクラですね」
「ブルーの石って、今天空路さんがしてるそれは?」
「これがラピスラズリで、こっちがアマゾナイトです」
「それ良いな、色んな色が入ってて綺麗。欲張りな私にぴったりだわ、アハハ」
「女性なら、8mで良いと思いますよ」
「それと、胃に良い石は?」
「胃腸の働きををサポートするのは、ここに入ってるシトリンとか、黄色の石になります。この石ですね」
「それも入ってるんだ。じゃあ、それでお願いするわ」
「このブレスは、主要なのチャクラ全てと呼応するエネルギーになっています。だだ、ラピスラズリは水に溶けやすいので注意が必要です」
「お店では外すわよ。汗もダメね。じゃあ他の石?うーん、でもこれ綺麗だな」
「夏っぽい色目のブレスではないかも知れませんけど」
「じゃあ、汗をかきそうな時はポケットに入れておいても良い?」
「大丈夫ですが、最初にプログラミングしてくださいね」
「前にも聞いたわよね、どうするんだっけ?」
「出来れば石と一緒に瞑想して、なりたい自分をイメージしてほしいんです」
「イメージね…」
「石に自分の思いを伝える為です。そうでなくても石は持ち主の想念を読み取ります。ですが、何と無く迷いの有る物より、はっきりした希望を石に伝えてほしいんです」
「希望?」
「自分さえ良ければ良いとか、欲張りな願いはマイナスに働いたり、石がサポートしてくれなかったりします」
「息子に気持ちを伝えて、わかってもらうイメージ」
「それから、胃腸の具合が良くなって、健康になるイメージもしてくださいね。例えばシトリンなら、お腹のチャクラに石のエネルギーが入って行って体全体に行き渡るイメージ」
「わかった。やってみる」
「時々柔らかい布で拭いたりするのも良いと思います」
「うん、そうする」
「「ありがとう」とか「お願いね」とか話しかけたりして、石と仲良くしてくださいね」
「うんうん」
「それから…」
「石は、ただ持ってるだけじゃダメなのよね。自分では何もしないで、石に任せっきりじゃ」
「そうです。石は、自分では何もしないで願いを叶えてくれる魔法使いでは有りません。幸せになる為のサポートをしてくれるパートナーです」
「天空路さん。わかったけど、ずっと敬語」
「あ…」
「罰ゲーム考えておくわよ。ウフフ」
って、美都さんは笑顔で帰って行ったけど、ヒーリングした感じでは、第3~第5チャクラあたりのエネルギーが滞っていた。
精神的にかなり参っているのかな?
だから胃腸に症状が出るんだよね。
さて、心を込めてお作りしましょう!
「シトリン、美都さんの体の具合が良くなるように頑張るんだよ」
【天空路家】
「はい、どーじょ」
「(今日のは美味しいかしら?)」
何首伸ばして美味しいか匂い確かめてるんだよ。
最近ワガママになってきたよな。
「(うん、美味しそうな匂いがしてるわ)」
あ、食べた食べた。
明日帰りに他のカリカリ探して来よう。
【天然石ショップLapis】
〈翌日〉
八峰美都様が、ご注文の天然石ブレスを取りにいらした。
おっと、敬語使うと罰ゲームが待ってるんだった(汗)
「こちらになります」
「うん。素敵じゃない!このままして行く。あ、汗に気を付けないとね」
「美都さん。心も体も元気になってね」
「ありがとう。あ、これ天空路さんとお揃いよねフフフ」
「うん」
「今日はしてないんだ」
「その日に合わせて替えるからね」
「今日のも素敵ね。見てたらみんな欲しくなっちゃう。あ、もう行かなきゃ。じゃあね」
「ありがとうございました」
ニコニコして帰られた。
お子さんと上手くいくと良いね。
そして何より健康になってほしいな。
【ドラッグストア】
三ツ星グルメ、懐石…どれが良いかなあ?
二コロ、これ食べてるんだよな。
ああ、今からこんなの食べさせてたら先が思いやられるけど、今の飽きてるもんな。
食べるかわからないから、とりあえず1つずつ買ってみるか。
【天空路家】
「ただ今、Lapis」
袋に顔突っ込んでる。
パパちゃん待ってたのか?オヤツ待ってたのか?
何で自分のってわかるんだろう?
箱に入って、中は袋で小分けしてあるのに。
匂いしないはずだけどな。
「ニャー、ニャー(オヤツオヤツ~♪早くちょうだい)」
「はい、どーじょ」
「(美味しい、美味しい)」
「おいちーでちゅか?良かったね~」
「ニャー」
「え?もっと?じゃあこれあげようね~。食べるかな?」
食べてるな…
「Lapis、残ってるよ」
「(もういらなーい)」
行っちゃった…(ガーン)
あ、そろそろさざれをしまっても良いな。
【ゲストルーム】
ちゃんと乾いてるね。
ピッカピカだ。
今日からまた浄化お願いしますよ。
綺麗な器に入れて玄関に少し置いておこう。
「浄化してね」
【バルコニー】
〈数日後〉
梅雨の貴重な晴れ間だ。
洗濯干すぞ。
「ニャー、ニャー(パパちゃん寂しい。早くお家に入って来て)」
「良い子に待っててね~」
「ニャー、ニャー(1人にしないでー。そばに居て)」
洗濯、春陽ちゃんがやってくれるって言うけど、それはさすがに出来ないよな。
お嫁入り前のお嬢さんに、トランクスなんて洗わせられませんっ。
Lapisは洗濯してくれないからなあ。
猫の手も借りたい?
何も手伝ってくれないよ。
でも、居てくれるだけで良いよな。
癒されてる。
【公園】
森林浴気持ち良いな。
もう晴れの日は暑いけど、木陰は気持ち良い。
あれ?
あそこに居るのは…
あ、美都さんだ。
あの子、この前言ってたお子さんかな?
うーん…そっとしとこ。
「ママね、もう少ししたら、建都と一緒に暮らしたいと思うんだけど、どう?」
「うーん、良いよ」
「良かった」
「いつ?」
「2人て暮らせる家を買ったらね」
「いつ買うの?」
「早く一緒に暮らしたい?」
「うん」
「じゃあ、早く家が買えるように頑張るね」
聞こえちゃったぞ。
「あら、天空路さん」
あ、見つかっちゃった。
「おじちゃん誰?ママの彼氏?」
「えっ?」
「違うわよ、年下だし」
「ふーん」
美都さんと目が合った。
お互い何と無くわかったみたいで、余計な事は言わなかった。
「あ、ねえ、7月からプールサイドバーをやるのよ。良かったら来て」
「うん。行かせてもらうよ」
上手くコミュニケーション取れたみたいで良かったね。
【プールサイドバー】
「いらっしゃーい。本当に来てくれたんだ」
「あんまり呑めないけどね」
「ソフトドリンクも有るわよ」
昼間もやっているからという事で、来てみた。
だけど、美都さん昼も夜も働いて体力持つのかな?
「今日はデート?」
「え?違うよ。春陽ちゃん。知らなかったっけ?」
「そう言えば、Lapisに居たわよね?」
「うちのスタッフ。近所の子で、生まれた時から知ってるんだ。妹みたいな子だよ」
「へー、そうなんだ」
「お兄ちゃん、泳がないの?」
「少し休んだら泳ごうか」
「天空路さん、泳げるのー?」
「あ、言ったな。こう見えて学生の頃は水泳やってたんだよ」
「あら意外。体育会系って感じしないわね」
それにしても、今日の春陽ちゃん…
夏らしいワンピースが可愛いけど、男達の視線集め過ぎだろ。
お兄ちゃんとしては、心配になっちゃうよ。
本当に、大人っぽくなったね。
「何?お兄ちゃん」
「ちょっと露出度高過ぎだぞ」
「何言ってるのよ、プールサイドなんだから、普通でしょ」
「そうですよね。ほらね」
ほらね、って…
この頃ふと思ったりするんだよな。
本当の妹だったら恋愛は出来ないけど、春陽ちゃんなら、って…
何考えてるんだろう、僕は…?
「お兄ちゃん、何考えてるの?」
「いや…」
眩しいな…
「天空路さん」
「うん?」
「妹とか言って、今春陽ちゃんに見とれたでしょう?」
「あ、いや…それより、胃腸の具合はどう?」
「あら、忘れてた、アハハ。忘れてたぐらいだから、痛くないのよ」
「良かった」
「パワーストーンて、一体何なのよ」
「え?」
「まるで魔法の薬みたいね」
「薬ほどの副作用は無いね。全く無いわけじゃないけど、嫌なら外せば良いわけだし、蓄積される事も無いね。エネルギーが変わるからね」
「じゃあ、病院なんていらないじゃない」
「それはまた別の話しだよ。検査とか有るし。石の効果は現代医療で認められていないしね」
「なんか昔の祈祷師とかシャーマンとか、そんな感じ?本当不思議。何で効果が有るの?」
「病は気からの「気」は勿論気持ちの「気」も有るけど、エネルギーの「気」。石のエネルギーがチャクラのエネルギーと呼応するんだ」
「チャクラ?息子が好きなアニメの話しみたいね」
「簡単に言うと、人間の身体の中に有るエネルギーの出入口」
「何だか難しい話し?」
「難しくは無いよ。奥が深いけど」
「そうなんだ…面白そうね。今度講座でもやってよ」
「考えとく」
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