第10話急接近?

【素子の部屋】


「印鑑かサインお願いします」


「はーい」


「ありがとうございました」


「ご苦労様でした」


応募したのすっかり忘れてたわよ。


当選発表は、商品の発送をもって代えさせて頂きますって…


一体何が当たったの?


こんなに大きなダンボール箱で…


〈箱を開けると…〉


「え?何これ…?」


〈箱から出して並べる〉


「こんなの貰ってどうすんのよ…うち猫居ないんですけど」


【天空路家】


「Lapis。おいで~」


〈遊がブラシを持つと、Lapisが前に来て座る〉


「(ブラシ、ブラシ、ブラシして)」


「お利口さんだねLapisは。綺麗綺麗ちようね~」


「(ブラシ、気持ち良くて好き)」


〈玄関のチャイムが鳴る〉


【玄関】


〈扉を開ける遊〉


「素子ちゃん?」


「ちょっと、早くこの箱取ってよ。重いんだから」


「あ、気が付かなくてごめん」


「フー、重かった」


「どうしたの?突然」


「それ、Lapisちゃんにあげて」


「え?」


「キャットフードとかおもちゃとか入ってる」


「ありがとう。上がってよ」


「え?(上がってって…何ニコニコしてるのよ)」


「Lapis~素子ちゃんが、Lapisにお土産持って来てくれたぞ」


「ちょ、ちょっと(行っちゃった…ま、まあ、猫が喜ぶかちょっと興味有るし、上がってみる?別れた彼の家ですケド)」


【キッチン】


「(久々に来たわよ、って何やってるんだか私は)」


「はい、おやつどーじょ」


「(出た、どーじょ)」


Lapisは、素子ちゃんが来ると少し警戒したけど、おやつをあげると食べた。


「(これ、美味しいわ)」


「あ、食べてる。何か嬉しい。おもちゃも喜ぶかな?」


「食べたら遊んでやってよ」


「え?私が?」


「今日は「ウー」って言わないね。美味しい物持って来てくれたのわかってるのかもね」


「そうなのかな?」


【リビング】


リビングに来ると、Lapisはまた警戒して隠れちゃった。


「縫いぐるみも有る。可愛いね。あ、Lapis出て来た」


「Lapisちゃんおいで」


「僕がこういうの持ってると焼きもち妬くんだ」


「(何よ、パパちゃんたらそんな子と仲良くして。抱っこしないでよ)」


「Lapisちゃん遊ばニャいの?」


「(出たわね、ニャンコ言葉。私そんな言葉使わないもん)」


「ここに来ると何か癒されるのよー」


「石が置いて有るからじゃないかな?親父の所に来るお客さんも、皆さんそう言って帰られるって。あそこはモーツァルトがかかってるのも良いんだよな、良い演奏だしね」


「そうなんだ…(って、和んでる場合?遊ちゃんとは別れたのよ私)」


「これ、素子ちゃんの部屋に置いておくと良いよ」


「その石は何?」


「アメジスト」


「美都先輩のと色が違う」


「あれは、ラベンダーアメジスト」


「そうなんだ」


「枕元に置くと良く眠れるからね」


「貰って良いの?」


「Lapisのお土産のお礼」


「ありがとう。あっ!」


「大丈夫?」


〈石を手にふらつく素子を抱き留める遊〉


「びっくりした。もうちょっとで落とすところだったわよ。意外と重いんだぁ…(って遊ちゃん。いつまでそうやってるのよ?)」


「……」


「……」


「……」


「(ああでも、こうやって遊ちゃんの腕に抱かれてると安心するわー)」


素子ちゃんの髪は、いつも良い匂いがするんだよな。


「ウー、シャー!(私のパパちゃんよ!)」


〈Lapisに威嚇されて、慌てて離れる素子〉


「(これよ、これ。良い雰囲気になってもこれで続かないのよ。もー)」


「(パパちゃんにくっつかないで!)」


「(でも、こうやって家に来ちゃう私って…先輩達より一歩リード?…って何がよ?遊ちゃんとやり直すつもり?私?いやいや、違うからっ!)」


「(早く帰ってくれないかしら)」


「(まあ、嫌になって別れたわけじゃないんだけどさ。ロマンチックなムードにならなくたって、一緒に居られるだけで良かったのに…猫さえ邪魔しなければ)」


「(私のパパちゃんに近づかないで)」


「(睨んでるし)」


「僕店に行くけど、途中まで一緒に行こう」


「あ、うん」


【駅前の花屋】


「(あら、素子。天空路さんと一緒)素子」


「(あちゃ)宴先輩」


「こんにちは。じゃあ僕は行くね」


「う、うん」


「素子、別れた彼と一緒って?」


「あー、えーっと…」


「どういう事?」


「猫のご飯届けただけですよ。アハ

アハハハ…はぁ…」


【天然石ショップLapis】


休みのうちにやっておかないといけない事が山ほど有る。


Lapisが邪魔するから、家では出来ないもんな。


ビーズの仕分け。


「私も手伝います」


「麻友さん。休みなのにどうして?」


「明かりがついてたから」


そう言うと彼女はビーズの選別を始めた。


穴の部分が歪んでいたり、欠けてたりする物を別にするんだ。


ゴムが切れるといけないから、ブレスには出来ない。


少し傷が有るぐらいなら、イヤリングやストラップなんかには出来る。


針金やピンなんかを使うから、問題無いし、加工すれば綺麗になって見えないしね。


あんまりひどく欠けてると、アクセには出来ないけど、エネルギーはちゃんと生きてるから、可愛い袋に入れたりしてお守りにする。


〈ビーズを取ろうと伸ばした手が重なる。2人ともそのまま動かない〉


どうしよう?


サッと離すのも何だか失礼な気もするし…


でも、麻友さん動かないって、どうして?


嫌じゃないのかな?嫌なら引くはずだよね。


「……」


「……」


僕は適当にビーズを取って、そっと手を引いた。


ホッ…


まだドキドキしてる。


今まで忘れてたけど、誰も居ない店で2人っきりなんだよな。


どうして良いのかわからなくなって来たぞ。


「どうしたの?ボーッとして」


「あ、えっと…こういう少し傷がついてたり、色目がちょっと変な石有るでしょう?」


「有りますね。お客様は敬遠なさいます」


「日本ではそうだよね。だからうちみたいな安い店は信用無かったりするね」


「パワーストーンはエネルギーだから、見た目の美しさと効果は関係無いのに」


「そうなんだよ。海外ではそういう石を見かけると「この子このまま誰も買わなかったら可哀想ね、一緒に帰りましょう」って言うんだって」


「素敵ね」


「それはその人が惹かれて選んだ石だし、もしかしたら石に呼ばれたのかもね。そうやって縁が有って巡り会ったんだから、きっと持ち主の為に頑張ってサポートしてくれると思うよ」


「私…もう一度恋してみようかしら?」


「え?どうしたの?突然」


「石を見てたら、そんな気になって来たの」


そう言うと、麻友さんは大きなハートのローズクォーツを優しく両手で包むように持って、エネルギーを感じているようだった。


「この子連れて帰ります。社割で買って。ずっと気になってたんです。売れたら良いなと思いながらも、そしたら寂しいなって思ってたの」


もう一度恋してみる気になったんだね。


麻友さんの相手はどんな人だろう?


もしかしたら、もう居るのかな?


何だか気になるぞ。


今度は彼女を傷つけない人が良い。


「羊里君で懲りてたんだけど、そういう傷も癒してくれるのよね、この子達」


彼女は、そう言うとローズクォーツを自分の胸に当てた。


そう、そうやってヒーリングすると良い。


心の傷や、辛い過去のトラウマなんかを癒してくれるからね。


今度もまた麻友さを傷つけるような人なら、僕が許さない。


〈ローズクォーツを胸に当て瞳を閉じる麻友…しばらくして目を開ける。遊は一呼吸置いて話しかける〉


「まず自分を愛して、そして愛を与えて、愛を受け取る」


「その自分を愛する事が、中々難しいのよ」


「え?麻友さんは自分が嫌い?そんなに素敵なのに?」


「え?」


「……」


「……」


何だか…またドキドキの雰囲気になっちゃった。


「……」


「……」


〈そっと遊にkissする麻友〉


あ…


「……」


「……」


どうして?


気が付くと、僕は、彼女の腕を引っ張って抱き寄せていた。


「あ…ダメよ」


〈遊の腕をすり抜ける麻友〉


「(遊ちゃんはダメ。この人を好きになったりしたら、不安で身が持たないわ。優しいから自然と女の子が集まって来るのよね)」


いきなりkissしておいて逃げるんだから、女の子はわからないよな。


何だったんだろ?


さっきのkiss。

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