第18話Lapisお姉ちゃんになる

【天空路家の玄関】


〈出勤しようと玄関に出る遊を走って追いかけるRutile〉


「こらこら、そこまでだよ」


「ミュー、ミュー(どこ行くの?)」


「じゃあなLapis、行ってくるからね。Rutileも良い子にしてるんだよ」


「(チビちゃんは、お姉ちゃんとお留守番よ)」


【Lapisの工房】


〈ピッピッピッ、ドカーン!〉


休憩時間にゲームで息抜き。


あ、この人危ない。


通りすがりのヒーリングが楽しいんだよな。


僕は、ゲームの中ではお節介ヒーラー。


僕の先生がこういう人だからな。


ゲームはやらないだろうけど、現実世界で辻ヒーリングしちゃうし。


僕はどうしても、ゲームの世界でも選ぶ職業がクレリックになっちゃうな。


現実世界の僕がクレリックだとしたら、僕の先生はクレリックの最終進化系だね。


それも、限界突破LvMAX。


自分では魔女って言ってるけど、ゲームのキャラに例えるとプリーストとかビショップみたいな感じかな。


【売り場】


「きゃは、これ可愛いですぅ」


「私は、これが良い」


「こっちのも素敵ですね」


「それは、ちょっとアンティーク調で良いでしょう?」


売り場に戻ってみると、何だか賑やかだそ。


「あ、オーナーが参りました」


「どうも、オーナー。ビーズパラダイスの福元英寿です。新商品が入荷致しましたので伺いました。宜しくお願いします」


「福元さんて、社長の?」


「息子です。うちは家族経営の小さな卸問屋ですから」


「そうなんだ。呼んでくれれば良かったのに」


「休憩中だと伺ったので、先に皆さんに見て頂いてたんです」


ビーズパラダイスって、おじさんもおばさんも優しくて良いんだよな。


いつもは麻友さんと仕入れに行くんだけど、たまには来てもらうのも良いね。


ビーズは僕が選ぶけど、パーツとかは女性に選んでもらった方良い場合も有る。


僕が選ばないような物を選んでくれたりするからね。


特に、ピアスやバレッタなんかのは、僕より女の子のセンスで選んでもらった方が良いね。


「わはっ、私達も選んで良いんですかぁ?」


「私、このクロスが良いです」


「私は、このロンデルっ」


「アンティーク調のも可愛いですね」


という事で、金属パーツを色々仕入れました。


金属アレルギーのお客様もいらっしゃるので、なるべくアレルギーに配慮したパーツを仕入れたいけど、デザインで選ぶとそうとばかりはいかないね。


だから、金属パーツを使わないアクセも作らないといけないんだ。


まあ、僕は、ロンデル入れるなら、石の方がエネルギー的には良いと思うんだけど、金属パーツを入れると華やかになるからな。


「ラピスラズリは、天然無着色の物をお持ちしました」


「うん、これこれ」


「皆さん綺麗な石が良いと仰るのに、天空路さんは染めはダメだからと、父に言われまして」


「確かに染めのは綺麗だけどね。染めの問題だけではなくて、僕は、例えばピンクオパールでも、綺麗なピンクのよりマーブルの物が好きだな。そう言ったら社長が原石に違いって教えてくれたんです」


「ああ、それでか…父がマーブルのピンクオパールを探してた事が有りました」


中々無いって言ってたよな。


「ここは、クラシックがかかってるんですね」


「良いエネルギーチャージが出来るんですよ。お酒が美味しくなるとか、花が喜ぶとか言うでしょう?」


「なるほど、それなら石の為にも良いかも知れませんね」


「モーツァルトは特に良いと思いますね。演奏する人も父の好きなピアニストの伊藤恵さんだし。石達にも素晴らしい演奏を聞かせてあげたいんです」


「私は、鉱物としての石の事はわかるんですが、そういう事はあんまり知らなくて…天空路さんはチャクラの事を仰るので、勉強しないと」


ああ、仕入れに行くと、麻友さんとチャクラの話しをしながら石を選ぶからな。


【天空路家】


「ミュー(お姉ちゃん遊ぼ)」


「ニャー(こっちよ)」


〈部屋の中を走り回るLapisとRutile〉


「(お姉ちゃんの尻尾大好き。どんなオモチャよりも好き)」


〈Lapisは尻尾で遊んでやる。Lapisの上を歩いたり飛び回ったりして遊ぶRutile〉


【Lapisの工房】


「今日仕入れたパーツを使ったデザイン?」


「うん」


「じゃあ、このクロス使って作って」


「そうだな…これだったら、マザー・テレサのイメージだな」


「素敵!」


「え?まだ石並べてないよ」


「名前が素敵なのよ(私、お兄ちゃんがアクセに名前つけてるの前から知ってたの)」


「名前は、あくまでも僕のイメージ。お客様には好きな名前をつけてもらった方が良いね」


「でも、パワーストーン事典に名前載せてるでしょう?あれが素敵って仰るお客様もいらっしゃるのよ」


あれは、事典を作るのに名前が有る方が作りやすかったからなんだけどね。


それじゃあ作りますかね、ブレス『マザー・テレサ』


マザー・テレサだから、慈愛、無条件の愛、母性愛…


ローズクォーツとマザーオブパールだな。


水晶は絶対に入れる。


シルバーのクロスを使うなら、ロンデルもシルバーだけど、清楚な感じにしたいから、あまり派手にならない方が良いね。


デザインボードに並べてみよう。


8mmマザーオブパール×8


8mmローズクォーツ×6


8mm水晶×4


6mmオーロラロンデル(シルバー)×8


10mmロンデル甲羅(シルバー)


11mm透かしカンつきロンデル(シルバー)×1


シルバーチャーム(十字架)


「こっちのピンクのロンデルも可愛いわね」


「え?じゃあ、もう一つデザインする?」


8mmマザーオブパール×10


8mmローズクォーツ×5


8mm水晶×5


6mmオーロラロンデル(ピンク)×10


「クロスは、こっちの方が良いな」


「そうね、シンプルなデザインだけど綺麗な色」


シルバーチャーム(十字架)ホワイトシルバー


これでOK。


ブレス『マザー・テレサ2』


「フー…後は春陽ちゃん作ってね」


「はーい」


【天空路家】


「ただいま。良い子にしてたか?」


「ミューミュー(早く早く、抱っこして)」


あれ?


Lapisが大人しいぞ。


「ミューミュー(抱っこ抱っこ)」


〈遊の足に飛びつくRutile。遊はRutileを肩の上に乗せる〉


「Lapis抱っこは?おいで」


〈いつものようにジャンプして抱っこするLapis〉


【お風呂場】


「ミュー、ミュー(早く出て来て)」


あれ?


Lapisが鳴かない。


「ミュー(早く早く)」


【洗面所】


〈お風呂の扉の前で鳴くRutile〉


「ミューミュー(早く出て来てよ)」


「(Rutileが鳴くから、私は鳴けないわ)」


「ミューーーー」


僕がお風呂から出ると、Rutileはまるで悲鳴のような声で鳴いた。


Lapis居るんじゃないか。


何で鳴かないんだ?


いつもならニャーニャー鳴いて、返事しながらお風呂に入ってたのに。


「Lapis良い子だね。お姉ちゃんになったな」


「ミュー」


「痛い痛い」


針のような細い爪で、Rutileが僕の足を登って来た。


裸なんだから、痛いよ。


「(パパちゃん早く。私だって甘えたいのよ)」


【ベッドルーム】


「さあ、寝んねしゅるよ~」


Rutileはまだベッドに飛び乗れないから、必死で爪をかけて登ろうとしている。


「こんな可愛いの誰が捨てたのかな?良い物拾っちゃったな。人生最高の拾い物だね。神様の落し物だな、きっと」


Lapisが僕にくっつくと、Rutileが間に入って来た。


「(パパちゃんもお姉ちゃんも僕のなの)」


今度は、Lapisが間を割って入って来る。


「(私がここなの。パパちゃんにくっついて寝るんだから)」


この繰り返しだ。


僕はだんだんベッドの端に追いやられる。


仕方ないから反対側に行く、昨日Rutileがお家の子になってからこれだよな。


しばらくすると、Rutileは諦めてLapisに甘えて寝た。


Lapisが舐めてやってる。


甘えん坊のLapisはお姉ちゃんになれないと思ってたけと、ちゃんとお姉ちゃんしてるな。


【フラワーショップ】


「(天空路さんお店に居るかしら?あ、今日は定休日か)」


【天空路家の前】


「(出かけちゃったかな?)」


〈チャイムを鳴らす〉


「はい」


「あ、寿ですけど」


「宴さん?ちょっと待ってね」


【玄関】


「ごめんなさいね、突然お邪魔して。これ、お土産」


「ありがとう。あ、これ知ってる。八街の落花生」


「あらそ」


「わざわざありがとう」


「(あら、女物の靴…)」


「どうかした?」


「え?あ、あのね、クリスタルがカーペットを引っ掻いちゃうんだけど、怒ってもまたするのよ。どうしたら良いかと思って」


「ああ、猫って犬と違って、怒られて悪いのはわかっててもやるね。爪とぎは?」


「そんなの無いわ」


「ドラッグストアに売ってる」


「種類とか色々有るの?」


「有るよ」


「(一緒に行ってもらいたいけど…)」


〈足元に有る女物の靴を見る宴〉


「良かったら、今から買いに行く?」


「え?良いの?(だって、誰か来てるのよね。彼女?そんな事聞けないし…「そうだよ」なんて言われたら怖いでしょう)」


「春陽ちゃん。ちょっと出かけて来るね」


「(え?春陽ちゃんて、お店の子よね)」


「はーい」


「Lapis達頼むね」


「あら、こんにちは」


「あ、ああ、こんにちは、アハハ…」


【ドラッグストア】


「(何なのよ。まるで奥さんみたいに、当たり前のように彼の家に居るのね)」


「宴さん、こっちだよ」


「あ、はい」


「Lapisは、こっちのダンボールのタイプを使ってるけど」


「じゃあ、それが良いかな?」


「でも、最初にカーペットを掻く事覚えたなら、同じ素材の方が良いね。違うのだとやらないかも。隣のテンちゃんがそうだったから」


「テンちゃん?」


「母の家の悪ガキ君」


「なるほどね」


「Rutileにも、そろそろ教えないとな」


「Rutile?」


「多分、クリスタルと兄弟だよ」


「あの時居た子ね、捕まったの?」


「うん、うちの子になった」


「Rutileって名前にしたのね」


「春陽ちゃんがつけたんだ」


「春陽ちゃんがね…そう…」


【bar】


「それで、家まで行ったの?」


「うん。でも先客が居た」


「あれま、誰?」


「春陽ちゃんて、お店の子」


「ああ、天空路の近所の子で、家族ぐるみの付き合いですからね」


「そういう事か。でも、なんだか彼の奥さんみたいだったわ(兄弟の猫で嬉しいと思ったら、名前も彼女がつけたのよね)」

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