雨伽詩音

「えっ、私の新婚時代の住宅事情を聞きたいですって。昭和３０年頃、もう半世紀以上前のことよ」 その社宅は、武蔵野市西窪に戦前に建てられた日本家屋だった。 同じ屋根の下に三組の新婚家…

中世鎌倉の築港、和賀江島に近い桐ヶ谷に住む美しい娘の八重には、恋焦がれている人がいる。

引退した音楽家、ノエル・アイアソンにハウスキーパーとして雇われた魔術師ジリアン。マエストロでも先生でもなく、ただの「ノエル」としてセカンドライフを送るかれの穏やかさに、大学を退学…

【まえがき的なやつ】 『サクサクさんのいいアイデア』が『５分で読書：最後はかならず私が勝つ』に収録してもらえることになりました。 【書籍の紹介ページ】 https://www.…

高台にある中学校に入学した伊藤は、毎朝【心臓破りの坂】をのぼって通学していた。 この心臓破りの坂は学校が近づくにつれて急になっていく嫌がらせのような坂で、昼間でも薄暗い不気味な場…

夫と別れ、一人娘も嫁ぎ、武蔵野の地でたった一人暮らす女性は、日々の移ろいの中で昔見た一匹の蛍を思い出す。 変わらない暮らしをしているのに、どんどん変わってしまう周囲の環境。気がつ…

幼馴染みの梢からラブレターを貰い、約束の場所へと向かう途中で俺は車にはねられた。 目の前に現れたのは死神を名乗る男。 「次の受け入れ先が決まっているので、早いとこ成仏に同意して下…

誰からも相手にされず、登校班の一番後ろを俯いて歩く僕の後ろから、いつも誰かがついてくる。 それは少し前に交通事故で死に、ゾンビになった僕のママ。 片腕を失くし、飛び出した目玉をぶ…

スケボーで膝を擦りむいた「おれ」は、幼馴染のことを思い出す。 所沢のけやき並木の短編です。角川武蔵野文学賞に応募します。

人形師の青年と彼の弟子、そして、人形師の手で生み出された球体関節人形の、記憶と愛をえがく短編です。

折原洋介、年齢１７歳。 物心ついた頃から幽霊が見え、幽霊に触れることができる男。 彼は今、初めての恋をしていた。 彼の初恋相手は千堂椿、享年１８歳。 ファーストキスも経験しない…

和歌の難しい知識はありません。 吐露するように、美しい響きを三十一音に込めました。 気長に続けていけたらな……。

赤毛に赤い装束に赤い刀が特徴の武侠、赤刀救人こと紅陽楽は 武術の修行と人助けの旅をしていた。 旅の道中、野盗を己の武芸で成敗し新たな街にたどり着くも 厄介ごとに遭遇し悪漢と対決す…

荒廃した近未来の世界を背景に、ある「誰か」がふと日記を書き始める。それだけの物語です。 別作品でおなじみの「ノイド1号」が登場します。 では、どうぞ。

こどもの頃に読んだ本。 「小さなスプーンおばさん」アルフ・プリョイセン作。 突然、ティースプーンくらいに小さくなってしまうおばさん。 けれど、ちっとも動じない。周囲の動物たち…

商売もろくに出来ない呑んだくれの道具屋が、ある日いきつけの酒場の主人に可笑しな話を教えてもらう。 何やら童話に登場する死神の祓い方だとか── 落語の一噺『死神』をモチー…

ギリシャのサントリーニ島で僕が見つけた宝物は？ カクヨムWeb小説短編賞2019、キャラクター文芸部門で中間選考を通過しました。 https://kakuyomu.jp/con…

流しの寿司職人、馬場寿子。流しでありながら、その腕前は一流であらゆる富裕層の顧客も多かった。 しかし、ヤクザの浜寿司（ハマヒサシ）の要求を断ったために激怒させてしまい逃亡者となる…

――２０ＸＸ年―― 目覚ましいスピードで進化を遂げていった『人工知能』は、 人間の知能レベルをあっという間に抜き去った。 最新型のＡＩ《クオンタム》は、 人類に対してある提案…

人類を含む全ての『生き物』が消失した世界。 感情人形《フィーリング・ドール》と呼ばれる、感情を持った人形だけが意識を保っていた。 人類最後の遺産である感情人形たちの、なんの変哲も…

　桜の写真を撮るために母校を訪れた僕。ふと、昇降口が開いていることに気付き、思わず校舎に足を踏み入れた。

山の中にひっそりと建つ旧家に出入りする庭師の弟子・利吉は、その屋敷に住む美しい娘・聡子に密かな想いを寄せていた。 聡子の縁談が決まり、顔を合わせるのも最後になろうかというある日、…

つまり数分で読めるショートショートという事です。

夜、孤独、骨、星と月、雨、呼吸、など少しずつ。 オフラインで配布しているペーパー「エウロパの海」に掲載した、自己紹介的な短いお話。こんなの書いてる人なのか、と文章の雰囲気を知っ…