概要
春の陽気に誘われて、ちょっと母校に侵入してみた。
桜の写真を撮るために母校を訪れた僕。ふと、昇降口が開いていることに気付き、思わず校舎に足を踏み入れた。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!大人のためのなつかしい春。
結婚を控えた男が、カメラ片手に母校を歩く……
これだけでもうなんだか胸に来るものがあるのですが、読んでいくとなつかしさと切なさが溢れて止まらなくなります。
ストーリーも綺麗にまとまっている上に「ああ〜そっちか〜!」というような仕掛けもあって見事なのですが、特筆すべきはその描写。
見えます。感じます。なつかしい日々を、すぐそこに。
学校独特の静けさ、扉や壁の色、傷、光、影、机の匂い、湿度、空気の声まで。
手に取るように、こんなに鮮やかに感じられる文章が、ほかにあるでしょうか……
もう戻らない春を、私たちはこの作品で感じることができるのです。
春。新しく、儚い季節。
思い出と現在、そして未来に思…続きを読む - ★★★ Excellent!!!カメラのファインダー越しに見る「あの日の君」
特別に可愛いわけではない、クラスの中で目立つ存在というわけでもない。
客観的に見れば、目立たないタイプの女の子をふとしたきっかけで好きになり、いつもその子を意識するようになる。授業中も、購買部にいるときも、友達とふざけ合っているときも。他の女の子とは違う、特別な存在に見えてくる。どうすれば、あの子に自分を見てもらえるだろう? でも、何もできず、卒業の日を迎える。
そんな高校時代の淡い片思いを、15年後、自分が結婚するときになって、
母校を訪ねて写真を撮りながら思い出していく、というストーリーの短編です。
あの頃への郷愁を誘う情感あふれる文章、共感を覚えずにはいられない男子高校生の心の機…続きを読む