UPしたのが2025/02/15の午前2時ごろで、少々遅刻してしまったのですが、バレンタインに何かしら書きたいという思いがずっとあったため、突貫で全年齢向けの創作百合SF掌編を書きました。
父に屋敷に監禁されている眼鏡っ娘お嬢様×OCのAIの少女の百合作品「地の果てに星降る頃まで」です。
https://kakuyomu.jp/works/16818093094109863877
作品を書くにあたっては、創作仲間である友人に勧められて買って読んだ、迷子『プリンタニア・ニッポン』に触れたことが直接的なモチベーションになりました。
完全オリジナル作品ではありますが、ここのところSFを書く意欲が少し落ち気味だったので、いい刺激をいただいたように思います。
百合については、文芸作品でも、漫画作品でも、多少は読んできたので、自分自身が百合を書く素地のようなものは築けていたのかなと感じています。
個人的にはもっと執着愛的な百合も好きなので、機会があればそうしたテイストの作品も書いてみたいです。
作品の内容に少し触れておくと、もともと館モノを書いてみたいという気持ちは以前からあって、シャーリィ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』などは大好物なのですが、あの陰気さを少し感じさせつつも、もっとドライで、クラシカルでありながら未来的な館を描いてみたいという思いがあったのでした。
もう少し館の描写にこだわっても良かったのかなとも思うので、そこは次作の課題としたいところですが、個人的に籠っている書斎にウォーターサーバーを設けて、配膳ロボットがそれを管理していたり、館を統括するAIがそうした雑事を取り仕切っていたりと、描ける範囲でSF要素を取り入れつつ、細かなガジェット周りのことも書けたのは良かったのかなと思います。
主人公が使っているウェアラブル端末については、腕時計型だとどうしてもApple Watchっぽくなってしまうので、まだあまり普及していないアイウェアという形にして、主人公が眼鏡っ娘属性になったのでした。
“ 眼鏡のガラス上に並んでいた無数のファイルが砕け散り、霧散してゆくさまを、父譲りのエメラルドグリーンの瞳で眺め、複数台あるデジタルデバイスの中へと吸い込まれてゆくのを見ていた。
こうした演出は本来なくてもいいはずのものだが、趣味的にプラグインを作った名も知らぬ人間がいて、前にネットのどこかからダウンロードしてきたのを今更思い出した。”
最近はXから距離を置いていることもあり、個人サイトやブログ、少しニッチなウェブメディアの記事を読むことが多いので、ネットの辺境ってロマンだよね、という思いを込めたかったという個人的な動機がこうした描写に入っています。
またXから離れてからは、一日あたり25本前後のWEB記事や論文を読み漁っていることもあり、この作品を書くきっかけの一つともなりました。
“彼女の他にも書き散らしてきた雑記やら、ウェブ上からかき集めた海洋生物の動画のデータやら、さまざまなジャンルの論文記事のファイルやらが容量を圧迫していて、とても彼女が入る余地はない。ひっきりなしに眼鏡上に表示されているログは、わたしの半身でもあった。”
ちなみに作中に出てくる、一年間で五万時間の音楽を聴いているという描写は、自分自身が昨年Spotifyで聴いた音楽の再生時間だったりします。
“「仕方ない、バックアップは複数箇所にとってある。とりあえずアイウェアを初期化して、きみが座れる場所を作るよ」
「お待ちしております。その間に音楽でもいかがでしょう?」
「昨年一年間の音楽視聴履歴、およそ五万時間だったか」
「そのうちからプレイリストを作成し、お好みのジャンルに合わせてお作りできますが」
「不要だ。自分で選ぶ」
わたしは古いアーティストのジャズを流しながらアイウェアのデータを初期化してゆく。”
こうした自分自身を起点としてキャラクターや細部の描写を作っていくという、小説を書くにあたっては基礎となることを、ここ数年は諸事情あってなかなか実現できていなかったのですが、こうして詩の世界からふたたび小説を書く道へと戻れたことは、自分だけの力によるものではなく、さまざまな人や作品との出会いと別れを経験して得られたことと思っています。
この先、どの程度まで字数の飛距離をふたたび戻していけるのか、闘病を抱えながらの執筆になるため、なかなか明るいばかりの見通しは立てられませんが、それでも自分なりに一歩ずつ作品を作っていければと願っています。