「手向け」を含む小説

明日には死のうと思うので、取り敢えず友人Ａの下宿を訪ねてその旨を伝えたところ、彼は「そうか」と頷いて、左手の小指を中華包丁でスッパリ切った。

　港公園で黒崎さんが殺された。 　彼女の亡骸のそばには銃がまるで手向けられた花の様に置かれていた。 　事件を知った僕はお節介ではあるが、独自に調査を開始する。 　怪しい大学教授と…

何百年か前、大戦により大地と秩序が崩壊した。 そして現在、人々は滅ぶ前の世界の技術を再利用し、なんとか生き延びていた。 人々が安全暮らせる巨大シェルター"ドーム"。そして荒野と化…

人は死んだら、熊になる。ぬいぐるみが置かれる。テディベアが鎮座する。死んだサエちゃんの机には、花ではなく、かわいらしいテディベアが手向けられていた。

姉を亡くしたカウォルは、とある儀式に参加する。村のならわしであるそれは、古くから受け継がれている大切なものだ。 空の棺を背負い、村を一周する。故人に感謝している者は花を、憎しみ…

　昭和２０年８月１４日、宮城事件に拠(よ)る軍部のクーデターは成功したが、マリアナ諸島、硫黄島、沖縄と東方の絶対防壁と満洲国(まんしゅうこく)、朝鮮半島の西方の拠り所の全て失った…

おそらくは、昭和20年代前半、東北は仙台近郊の寒村にて。 復員兵の「俺」は、満州から故郷に帰還した。 菊の花を手向けに向かったのは、妻である薫の墓だった。 しかし、そこには先客が…

憎念渦巻く剣豪の晩年における末路など、詰まる所このようなもの。 しからばその息絶えるまでの寸暇に花を咲かせましょうぞ。 紅き彼岸花、屍の花。 それこそ黄泉への手向けにござりましょ…

王国の四番目の姫ルシエルは、陰鬱な牢獄へと幽閉された。 しかし、そこには先住人がいて……？ 虐げられてきた姫君と、彼女を幸せにしたい魔法使いの物語。

『かいそう』という共通タイトルを題した短編集です。時々増えたり減ったりします。 『回送　―夏の帰路、地方の犬―』…記録的酷暑の中で急な遠方出張に駆り出されたひとりの社畜が、帰り…

疑似的な記憶と知性を与えられ、人間を模倣して作られた“人形”。 小さな港町で造花専門店を営んでいる少女は、そんな人形であると同時に、それを作る“人形師“でもあった。 依頼者から汲…

死期が近づく。四季とともに。色彩とともに。 僕らは、ただ、しきを待つ。 君の人生は笑顔に満ち溢れていた。──僕は君の笑顔の一部になれていただろうか。僕は君を幸せにできただろう…

およそ百年前、女勇者アルウェンと後の伴侶となる少年によりサッキュバスの王クシモは敗れ封印された。 しかしその直前、クシモは『お前達の子が余を復活させる神官となる』という不気味な予…

　十年目のスーツアクター・明日葉は、この日の撮影を最後に、引退する予定だった。戦闘員のスーツに着替えていると、隣のロッカーの後輩・夏木に話しかけられる。 　KAC20228の「…

　長年ストーカーとして付きまとってきた男の息の根を止めるときがとうとうやってきた。これは誰にも知られちゃいけない茶番劇。

峠の語源は「手向け」が転じたものである。 急坂の頂上にある草ぼうぼうの領域へと目が向く。 　子どもは急坂を登りはじめる。足は自然と廃屋へと向かった。 「手向け」の場所は、ひと…

・冴えない青年の下にとある仕事が舞い降りた。それは死んだ老人からの依頼。老人が生前建てようとした建物を調べろというもの。 ソレは雲を貫く天高き塔。多くの者が命を落とし、落ちた命を…

祥子は21歳の時に生理痛で受診した婦人科で盗撮被害に遭っている、しかし被害を自覚しないまま、30歳のときに再びＳ病院に足を踏み入れてしまう、そこで二次被害にも遭遇しているが、やは…

短編集

異世界に思いを寄せる榎並咲は、ひょんなことからトラックにはねられてしまう。しかし、そんな状態でも彼女は自分の好きな異世界転生物の漫画の主人公と自分を重ね、密かに期待に胸を膨らませ…