概要
クトゥルフ邪神群と永劫に戦い続ける仮面の夜鷹。その知られざる事件簿。
世界の繁栄の輝きが増すほどに、混沌の影もまた濃くなる。
永く封印の眠りについていた邪神復活のために暗躍する人ならざるものたち。
頽廃に覆われた邪教の町で弱き者が生贄に捧げられ、数百年を生きる魔術師は血の杯を傾ける。
人里離れた山中では宇宙からの侵略者が、物理法則を無視した世界を拡げていく。
呪われた血を受け継ぐ一族は静かに都市に紛れ込む。
世界の隅々にまで浸透した邪神の因子を、猛き爪で狩るは仮面の夜鷹ことウィップアーウィル。
夜鷹の鳴き声が聞こえた者には死あるのみ。
「悪いが、日常はもう終わりだ」
※この作品は、法律・法令に反する行為を容認・推奨する
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!重厚なクトゥルフ神話と、ハードなダークヒーローの融合。
僕はラヴクラフトによる原作を読んだ事が無いのですが、ゲームや映画、アニメや漫画等で表現された「クトゥルフ神話」作品群には触れた事があり、本作品もそういった作品群のひとつだと理解し、拝読させて頂いた次第です。
まず最初に心惹かれた点は、濃密なホラーテイストを醸すに相応しい重厚な文章表現と、そこから描写される緻密な世界観でした。
克明かつ丁寧に、奇怪な現象や事件に翻弄される人物や世界が描かれており、そのずっしりとヘビィな文章表現が、粘着質なクトゥルフ神話のイメージにピッタリと嵌ります。舞台となる街並みや扱われるアイテム、小物、人物描写の的確さ、作中発生する恐怖演出のハードさに戦きながらも、しっか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!コズミックホラーの常識を覆す異色のクトゥルフ作品
ラブクラフトのテーマは人間では到底太刀打ちできない恐怖。
登場人物はただ神話的存在から逃げ惑うかそのまま飲み込まれるかしかない。
これまでバトルアクションばかり書いてきた私にとって、世の中にはまだまだ不条理な恐怖があることを嫌でも突きつけてきたのがクトゥルフ神話です。
まさに私にとって手の届かないもの。これをテーマに書くのは無理だと思ってきました。
だから夜鷹との出会いは二度目の衝撃。
そんな不条理を腕力だけで叩きのめす人間がいたなんて。邪神の加護があったにしても、です。
この小説との出会いは、まさに追い詰められた一般人の前に颯爽と現れるヒーローの作品を生まれて初めて読んだ時の瞬間に近…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この世のあらゆる時とところ、邪神の蠢動とそれを狩る夜鷹の舞う音あり。
本作はクトゥルフ神話を背景にしたオカルティックなダーク・ヒーロー小説だが、クトゥルフにいっさい親しんでこなかった読者でも楽しむことができる。
というかむしろ、クトゥルフのピュアな世界観を味読できるという点ではおすすめの作品である。
クトゥルフを読む上でついてまわるキーワードは宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)だ。
身震いせずにはいられない根本的な恐怖や不安が人を突き動かす様子が、いくつかの時代にわたって描かれていて非常に巧みで、
近年もTRPGとしてもプレイバック的に流行している要因にはこういった懐の広さもあるわけだ。
また、クトゥルフがラブクラフトによるフィクション体系として書かれている…続きを読む - ★★★ Excellent!!!クトゥルフ×ダークヒーロー=傑作
クトゥルフ神話を題材にした小説で最も難しいのは、前提の知識でも、邪神の起用法でもなく、空気の表現だと個人的には思います。
この作品が数多あるクトゥルフ系の作品と比して突出しているのは、まさにクトゥルフ独特の空気感を上手く表現できていることではないでしょうか。
夕暮れに鴉が不気味な鳴き声をあげているような、路地裏で痩せた犬が誰もいない場所に向かって吠えているような、漆喰塗りの家々に囲まれているのに墓場の中にいるような、そんな空気感。
そこで活躍するのは、これまた異常にカッコイイ謎のヒーロー。
ましてや、目的が正義の執行なんて気配は欠片もなくて、ただ害虫を潰して回るだけの大雑把さ。
自分一人で星…続きを読む - ★★★ Excellent!!!括目せよ、邪神に与する者たちを狩る夜鷹は『二度』天を駆ける。
世界中に根強いファン、いやもとい信者を多数擁する暗黒神話ことクトゥルフ。
だがそれらが内包する神々、体系、各地に伝わるエピソードはあまりにも厖大だ。
この作品の主人公ウィップ・アーウィルはその神話の新参者ではなく、はるか昔から『在った』ジグソーパズルの1ピースであるかのように描かれている。
そこに作者の力量のみならず腐心したさまが伝わってくる。
クトゥルフ初心者に対しては無味乾燥な箇条書きではなく、ストーリーを通じて押しつけがましくなく読み解かせてくれる。
ウィップ一流のユーモア、ジョークを端的に示すようなルビの振り方に、古参の邪神ファンもニヤリとさせられる、はず。 - ★★★ Excellent!!!闇夜から這いよるものたちよ、気を付けろ――そこには『夜鷹』がいる
一言で表すなら躍動感。
クトゥルフ神話の中にアメコミのような要素に、それ以上に感じたいろんな時代特有の人間模様とその背景。
そして魅力があふれんばかりの『夜鷹』というキャラクター。
まず感じたのは衝撃そのもの。
冒頭からの夜鷹の登場から既にかっこよかった!
こんなにもドキドキとワクワクが膨らむとは……!
他にも色々ありますが、最初からこんなに惹きつけるとは思わなかったというのが正直な感想です。
それにホラーというだけではなく、バトル要素も入っているという点でも非常に素晴らしい。
クトゥルフ初心者でも楽しめる作品なのでぜひ堪能してみては?