この世のあらゆる時とところ、邪神の蠢動とそれを狩る夜鷹の舞う音あり。

本作はクトゥルフ神話を背景にしたオカルティックなダーク・ヒーロー小説だが、クトゥルフにいっさい親しんでこなかった読者でも楽しむことができる。
というかむしろ、クトゥルフのピュアな世界観を味読できるという点ではおすすめの作品である。

クトゥルフを読む上でついてまわるキーワードは宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)だ。
身震いせずにはいられない根本的な恐怖や不安が人を突き動かす様子が、いくつかの時代にわたって描かれていて非常に巧みで、
近年もTRPGとしてもプレイバック的に流行している要因にはこういった懐の広さもあるわけだ。

また、クトゥルフがラブクラフトによるフィクション体系として書かれていることは当然有名だが、そのこと自体について語る登場人物たちが、真実と虚構の境界を揺さぶってくる様子も絶品。

そしてなにより、数世紀以上に渡り邪神たちと争ってきた仮面の夜鷹・ウィップアーウィルの活躍が、御託をひとまず飲み込んで刮目すべき格好よさなのである。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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