不可能を可能にする、それが英雄というものだ!

 根元・秀夫(ねもと ひでお)は人生を順当に失敗しつつあった。だが、持ち金は徐々に減り、住む場所すら失ったそのとき――勇者一行となる高校生たちの異世界召喚に巻き込まれてしまう。そんな彼に与えられた唯一の力は“チャレンジスピリット”なる不可解な代物。だが、生き延びるため、子供たちの期待へ応えるため、彼は理不尽へと挑む!

 秀夫さんは無気力系クズです。チャレンジが辛いのでしたくないと本気で思っても居ます。ただその一方で意外なほどの優しさや熱いプライドを持ってもいる。人間には多面性があるものですが、それがさりげなくもしっかりと浮き彫られていて、つい共感させられてしまうのですよね。

 そして、そんな秀夫さんが追い詰められ、追い立てられて、チャレンジするしかなくなってしまう顛末、コミカルながら妙にかっこいいのは、構成のよさに咥えてやはりキャラクター造形の妙あればこそなのです。

 残念ながら物語は未完で終わっていますが、ぜひ続きが読みたいチャレンジ譚です。


(「艱難辛苦が襲い来る!!」4選/文=高橋剛)