挑戦!チャレンジスピリット~子供の笑顔と勇者の泣き顔を見る為だったら、無謀な挑戦も受け入れられる~
喰寝丸太
第1話 異世界召喚
「あんた、また仕事、辞めたの。もう我慢できない。ただで飯を食わせて、住まわせられないわ。出て行きなさい」
親に家から出て行けと言われた。
原因は俺にある。
俺は
仕事を転々とするのは、なにか違うという考えがいつも頭から離れない。
それとつらいのは嫌だ。
きっと楽しくて長続きする職場があるはずだ。
まだ出会わないだけ。
失業保険を貰ってしばらく遊んで暮らしてた。
そして金がなくなり借りたアパートも追い出された。
また面接の日々か。
たぶん、財布の金がなくなるまでに、次の職は見つからないんだろうな。
アルバイトで食いつなぐか。
働きたくない。
コンビニの前で座りビール片手にひとり愚痴る。
「あのさー、あの先こうだるいよね」
「うんうん」
「輝樹、また授業抜け出して遊びましょ」
「いいね」
「私も賛成」
高校生か、俺もあの頃に戻りたい。
突然光に目が眩むと。
絨毯の上に立っていた。
「ようこそ勇者様方」
うわ、勇者召喚だ。
こういうのはろくなことがない。
「やばっ、もしかして。俺、勇者。やりー」
「ステータスオープンと唱えて下さい。ジョブとレベルを教えて下さい」
「ステータスオープン。勇者だ。レベル34」
「ステータスオープン。私、聖女、レベル29」
「ステータスオープン。賢者ね。レベルは32」
ええと俺は。
「ステータスオープン」
――――――――――――――――――――――――
名前:ヒデオ
ジョブ:凡人
レベル:1
魔力:105/105
スキル:
チャレンジスピリット
――――――――――――――――――――――――
「あれ、おかしいですな。伝承では勇者パーティは3人のはず」
俺はおまけなのか。
ええと、なんて言おうか。
嘘言ってもばれそうだ。
「俺っ、凡人です。レベル1の」
「どうやらひとり巻き込まれたようです」
「ふむ、雑用係として同行させるか」
「それが良いですね」
あれよあれよという間に支度金の金貨100枚を貰って、街に出された。
勇者達には教官が付いている。
俺には無しだ。
そして、その夜。
「おい、おっさん。支度金あるだろ出せよ」
勇者からカツアゲされた。
抗ったんだが駄目だった。
レベル差は如何ともし難いみたいだ。
そして、街に放り出された。
街並みは、ヨーロッパだな。
ケモ耳とか、紫の髪色の住人が歩いている。
そして、何人かは鎧を身に着けて、剣を下げている。
うぉ、ゲームみたい。
持ち物は財布のみ。
これは教官が済まないと言って渡してくれたもの。
中を見ると、大きい銀貨が3枚と、小さめの銀貨が5枚、後は銅貨だな。
これが全財産だな。
治安が悪いのかな。
野宿は駄目だ。
幸い、看板などの文字が不思議と読め、人の言葉も分かる。
それは召喚特典だろう。
ここは異世界なんだろうな。
今更だが。
受け入れなきゃ死ぬだけだと思う。
宿屋を探す。
「いらっしゃい。うちは泊まりで銀貨3枚、朝食と夕食つきだと追加で銀貨1枚だよ」
「これでいいかな」
俺は小さい銀貨4枚を渡した。
「食事付きね。夕食は今からでも食堂で食べれるよ」
そう言われて、部屋の鍵と札を2枚貰った。
食券らしい。
部屋の表札と鍵の番号を見比べる。
ここだ。
部屋に入り、安全な寝床が見つかってほっとして気が抜けた。
ベッドに横になってため息をつく。
駄目だ。
このまま暮らしてたら死ねる。
頼る人は誰もいないんだ。
ええと小さい銀貨には100の刻印がある。
大きい銀貨には1000だ。
となると、持ち金は3100ちょっとだ。
一泊、400だから、7日ぐらいしか泊まれない。
何とかしないと。
両頬をバチンと叩いた。
明日、ハローワークみたいな所に。
いいや駄目だ。
今から行動だ。
部屋に鍵を掛けて、カウンターまで行く。
「ここら辺りで職をくれる所はどこかな」
「冒険者ギルドだね」
場所を教わったので、冒険者ギルドに向かう。
本当に異世界だ。
エルフらしき、耳の長い、すらっとした人も見かけた。
樽みたいな体型の人はドワーフだろう。
みんな武装しているんだよな。
最低でも短剣は吊るしている。
銃が短剣になった開拓時代のアメリカみたいなものか。
生きていける自信がない。
でも働かなきゃ。
冒険者ギルトは大きな建物だった。
まあ、ハローワークも大きかった。
中に入るとみんな重武装してた。
俺が場違いに見える。
見えるんじゃなくて場違いだ。
カウンターに近寄る。
「この施設の利用方法を知りたい」
「依頼発注ですか」
「いいや受ける方の仕組みが知りたい」
「冒険者登録すればどなたでも依頼が受けられます。ただし6段階のランクがありまして、ランク以上の依頼は受けれません」
「登録したい」
「正気ですか。レベルはいくつです? スキルは」
「1です。スキルの詳細は分かりません」
冒険者を辞めたくなってきた。
「スキルが分からない。ええと、記憶喪失ですか」
受付嬢は不審者を見るような目になっている。
記憶喪失設定で行くしかないか。
「ほとんど何も分からないんだ」
「そういう方もたまにいらっしゃいます。きっとモンスターにやられたのでしょう」
「そんなところ」
もうどうにでもなれ。
「でしたら、知識のレクチャーの依頼を出すべきです。生きていくための基本知識を教えてくれるはずです」
親切だ。
泣きたくなるぐらい嬉しい。
受付嬢は美人だし惚れそうだ。
「それをお願いします」
「基本知識の伝授ですと相場は1時間で銀貨1枚ですね」
「それでお願いします」
「手数料、銅貨5枚を別途頂きます」
手数料は5%ね。
ふむふむ、ぼったくりではないな。
冒険者ギルドの酒場で待っていると、テーブルの脇に人が立った。
目をやると、革鎧に短剣を吊るした少女が立っていた。
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