2章9話

「改めまして、兄の柳と弟の翠です」と、自分の両サイドを指して凛は言った。

「3人兄弟だったんだ…」と俺が呟くと、俺の隣に来た翠が、「っていうか、これでも一応三つ子、なんだよね」と付け足した。

三つ子…か、本当にいるんだ。というより死神にも兄弟とかあるということの方が驚いている。

「兄弟みんな、違う課で働いているのでほとんど会いません。なので会うと言いたい放題ですぐ先程のようなことに…本当にすみません、アカネさん」

「因みに誰がどの課とか、聞いてもいい?」

「………えぇ、構いません」

凛は一瞬顔を曇らせ、チラリと翠の方を見た。やっぱり、ダメだったか?

「俺に遠慮してんじゃねぇよ、別に俺は」

「誰があなたの為だと?」

「毎度腹立つな!姉さんは!」

「はいはーい、喧嘩しなーいのー」

「アカネくん待ってるけどいいのかい?君らもまだまだガキンチョだねェ」

「……すみません、アカネさん。私は以前お話したように人生交換課、兄の柳が魂管理課、そして弟の翠が…人間検分課です」

「人間…検分課?」

検分?実際に見て調べること、だよな。人間検分ってことは、人間を調べてる?

「それについては俺が話すよ」

俺が悩んでいると、翠が口を開いた。

「俺、生まれた時から目が悪いんだ。姉さんから聞いてると思うけど、現役で人生交換課とか魂管理課にいたとしても、視力が落ちたら仕事に支障が出る。だから、資料管理課などに異動する人がいる。身近にいる人としては、秦さんがその例だ。けど、俺の場合は、生まれた時から目が悪いから人間検分課とかそんなところに配属される。死神の目は特殊でね、視力が下がることはあるけど、上がることは絶対にないから」

「翠だけ?三つ子、なのに…?」

「三つ子と言ってもただ同じ瞬間に生まれた、というだけですから。両親は同じでも、そっくりということはほとんどありません」

死神は人間と違って真面目なんだ。きっと、死神全員が自分の仕事を誇りに思っている。だから、どんな課に配属されてもしっかりと仕事をこなしている。人間と似た見た目をしていても、人間とは全く違う。前に、凛から聞いたけど死神を殺せるのは死神だけらしい。どんな流行り病でも、神は殺せない。死神が死ぬことなんてほとんどない。そういうことらしい。

それから、宙を浮いたり、目が特殊だったり。色々な違いがあるみたいで、人間と死神の共通点は見た目と、言葉を操るというところだけなのだろう。

「あの、目が特殊って、どんな感じに?」

「あっははは!君、すっごく死神傷つくことばかり聞くねー!はははっ!」

突然長男の柳さんが笑い出した。

「え、あ…すみません……」

「あーあ、また柳くんは、ねェ?アカネくん、気にしなくていいんだよォ?たしかに傷つく死神もいるかもしれないけど、この兄弟は問題ないはずさァ。だって、凛も翠くんもアカネくんを信じてるからねェ」

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