1章6話

「では、そろそろ人生の交換に移りますが、その前に最終確認をさせていただきます。

あなた、佐藤一樹さん28歳は、佐々アカネさん18歳の人生と交換」

「はい」

「人生を売却した瞬間、あなたのご両親、ご親族、友人、知り合い、全ての人からの記憶から消え、佐藤一樹という人間はいなかったということになります。戸籍上のデータもすべてなくなります。本当によろしいですか?」

「はい」

「……わかりました。ではこちらに、漢字とローマ字でフルネームと、拇印をお願いします。インクはこちらです」

渡された文字だらけの上に、言われた通りに署名し、親指に差し出されたインクを付け、印という文字に合わせて押した。

「ご購入、ありがとうございます」

「いいのか?それで」

「はい?」

ちゃんと拇印を押したはずだが紙には何もない。署名はあるのに、拇印だけ押されていない。親指にはちゃんとインクはついている。

「あ、拇印の事ですか?それなら問題ありません。このインクは紙についた瞬間死神にしか見えなくなるので」

なんとも便利な…。

「死神界は人間界よりもかなり技術進んでいますしね」

なるほど、それでそんな魔訶不思議な現象が。凄いな、死神界。

「他、何かあります?」

「特にないです」

「では、人生を交換しますね。ゆっくりと目を瞑ってください」

言われた通りゆっくりと目を瞑ると、体が宙に浮いたような感じになり、目の前に強い光が見えた気がした。

そこから先の記憶はなくなった。きっと気を失ったのだろう。

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