1章4話

「さて、ではあなたの新しい人生を探しますか」

「お願いします…」

「元気ないですね」

「そりゃあ……殺されかけたばかりだからな」

「死にたがりだったのに?」

きょとんとした顔で見るな、少女よ。

「放っといてくれ」

「そのつもりですよ。そこで座って待っていてください。何個か候補探しますね」

そう言って凛はまた別のファイルを本棚から取り出してペラペラと捲り、偶にファイルから紙を取り出し机に並べている。

全部で4枚。それを手に取り、俺が座っている椅子の前のテーブルに広げて置いた。

「説明しますね。

ではまず一人目。渕東那都えんどうなつさん。17歳、2月17日生まれ。

頭が良く何でも出来るクラスの人気者だったが、学校の掲示板で少人数からいじめられていた為、自殺。現在掲示板は閉鎖されています」

「次は?」

「二人目。山際聖やまぎわひじりさん。23歳、5月8日生まれ。

勉強や運動面では普通ですが、いつも周りには人がいるタイプです。

彼は人生堂に売りに来て、今は別の人生で生きています」

「うーん……」

「三人目。

輪田司わだつかささん。17歳、7月30日生まれ。

高校中退で、人生売却時まではアルバイトをいくつもしていました。ですが、それには理由があります。母親が病気で倒れ、寝込んでいるので看病のため、ということでした。」

「しっかりしてるやつだな…。次は?」

「最後、四人目。

佐々ささアカネさん。17歳、4月8日生まれ。

クラスの人気者で学校内でちょっとした有名人。

ある日突然影の薄い人に憧れ人生を売却されました」

「そんな風に思えるのは羨ましいな」

「では、佐々アカネさんの人生を続きからにしますか?」

「一番しっくりきたのはそうだな、最後の人生だ。その佐々アカネの人生にする」

「ありがとうございます」

凛はそう言うと、立ち上がりもう一つの机の上を漁りに行った。数分すると、何枚か紙を手に取り、こちらに戻ってきた。

「では詳細を説明させていただきます」

「よろしくお願いします」

「長いのでこの紙を見ながらお願いします」

浮く絵に並べられた紙のうちの一つを取り俺に渡した。字がびっしり並べられていて、目が回りそうな紙だった。

“人生堂について”

人生堂では、自殺した方、人生を売却した方の人生を商品として売っています。

“人生の売買について”

人生を購入するには、購入者の人生を売買することによって購入することができます。人生堂に売却した瞬間、売却者の存在は全て抹消されます。その人に関わった人の記憶、

戸籍上など売却者に関する情報は全てなかったことにされます。なので商品である方の存在、情報は人生堂以外の場所にはどこにもありません。

“人生堂店主について”

「?おい、続きが書いてないぞ」

「そこから先は口頭での説明になりますから」

「なるほど」

「人生堂店主について。店主は私、凛です。人生堂は、世界のあらゆるところにあります。米国、英国、ドイツ、ロシア、中国など。そして人生堂は全ての人が入れるわけではありません。“人生が嫌だ”“人生変えたい”という方にしか現れません。

そして、店主である私について。

人生堂の店主は死神なのです」

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