2章8話
え、ちょっと待て?どういうことだ?
「翠、姉さんって?まさか、姉弟?」
「こんなのと姉弟だなんて、嫌に決まってます」
と、翠より先に凛が口を開いた。
「こんなのって酷いなぁ。けどまぁ、俺もこれが姉さんとか嫌だけど」
と、翠が言うと、「奇遇ですねぇ」と凛が言った。2人はニコニコしながら顔を合わせる。正直言って、怖い。
「あ、あの、とりあえずここから離れない?ほら、周りに人いるし……」
「大丈夫だよ、アカネ。すぐ終わらすから」
「店内で暴れるなんてことしないでいただけます?暴れるのであれば、人生堂でお付き合いいたしますが」
「ほら、ね?翠、人生堂行こ?」
一時停戦、かな?
と思いきや
「………仕方がないから行ってあげるよ」
「仕方がないので入れてあげますよ」
と、2人は睨み合っていた。
*
人生堂
「相変わらず暗いな」
「あらあら、暗いのは苦手でしたか?」
「そういうわけじゃねぇよ、クソが」
「どうどう……」
沈黙が続く。俺と翠と凛は、奥の扉の向こうへ行き、長い廊下をただただ歩く。
不安で仕方がなく、下を向いて歩いていると、コツコツ、という靴音が聞こえ出した。先程までは絨毯が敷かれていたため、ほとんど音はしていなかった。気になって顔を上げてみると、天井が高く大理石の床、大きなシャンデリアが吊らされている広間に着いていた。
「す…すごい……!」
「こんなの、死神界でなら普通にあるよ」
俺が驚いていると、翠が横でそう言った。
「そうなの?」
「まぁ、一つの建物に一部屋はあるでしょう」
と、反対側に立っている凛が言う。
「そんなに!?」
「そんな事はどうでもいいんだよ、アカネ」
「え?」
「そうですよ」
「問題は」
「姉さん」「翠」
「がここにいること」
「だから」「ですから」
見事にハモってるのですが。
数秒間2人は俺を挟んで睨み合っていた。そして、凛は傘を、翠はどこから出したかわからない日本刀を振りかざした。
「アカネ、危ないから逃げて」
「そんな無茶な!…って、危なっ!」
傘と刀が激しくぶつかり合い、その度に凛も翠も武器を振り回す。俺に当たりそうになる。
「危ないよォ?翠くん」
と、聞き覚えのある声がした。振り返ると俺の肩に手を置く秦さんが立っていた。
ブンッ!と傘を大きく振り回す音が聞こえた。これは避けられないな、と思い目を瞑る。
当たった感覚がなくて、ゆっくり目を開けると2人を睨む男が立っていた。オレは秦さんに後ろに手を引かれたのか立っている位置が変わっていた。
「アカネくん大丈夫かい?」
「2人とも喧嘩ー?……俺も混ぜてよ」
俺の前に立っている男がそう言うと、空気が一瞬にしてピリッとなった。
凛も翠もゆっくりと武器を下ろした。
「兄さんと喧嘩する気なんてないから」
「私もです。アカネさん、突然申し訳ありませんでした」
「い、いや、大丈夫!秦さんが守ってくれたから」
「秦、ありがとうございます」
「いやいやァ、喫茶店行こうとしたら3人が見えたからねェ。こんなに急いで
……途中から何を話しているのかが分からない。いや、最初からほとんどわかってないけど。
「で?どうしてこうなったのか、少年に教えてあげなくていいのかい?俺はだいたい予想つくからいいけど」
と、兄さんと呼ばれる男が口を開いた。
「そうですね、私が説明します」
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