2章3話

「佐々くん、入っていいですよー!」

石原先生の声が聞こえ、ドアに手をかける。後ろで凛が手を振っていた。

「頑張ってください」

「うん、ありがとう」

小さく凛に手を振り、教室のドアを開け中に入った。

「佐々くん、自己紹介お願いします」

「はい。佐々アカネです。よろしくお願いします」

「この時期に転校とか引越しとかで大変だったみたいなので、皆さん色々とお願いしますね!じゃあ、佐々くんはあそこの空いてる席へお願いします」

「あ、はい」

窓際の一番後ろ。今は出席番号順で座っているらしい。俺は転校生なので、35番。ここなら隅だから何かあっても凛と話しやすいな。

そこから短いHRが終わり、模試までの間の休み時間。右肩をトントンとつつかれた。

「大変だねぇ、この時期の転校。俺は細川翠ほそかわあきら、ミドリって書いてあきら。翠って呼んでな。隣の席だからさ、何かあったら聞いてよ。よろしくな、アカネ」

いきなりの名前呼び捨て。今どきの高校生はフレンドリーだな。まぁ、その方が俺も楽だし、いっか。

「よろしく、翠」

「ねぇ、模試出来る?」

「自信ないけど」

「だよなぁ、俺さ模試とかホンット嫌いで!何であんのかねぇ」

「さぁ?確かに面倒だもんなぁ」

と、それから色々な事を翠と話した。翠は学ランの中にパーカーを着て、耳に一つピアスを開けていて、少し悪そうな人だと思ったけどいいヤツそうでよかった。

休み時間は意外とすぐ終わり、試験監督の先生が入ってきた。

「もう友達ができたんですね。さすが佐々アカネさんの人生。さすが佐々アカネさんの人柄!いい感じじゃないですか」

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