1章8話
人生を買ったのは良かった。今までの自分とはどこか違う人間になれた気がするからだ。だが、ここからは良くない。
「家、どこだ?どうすりゃいいんだ?」
質問はあるかと言われてないとは言ったが、今考えてみるとありまくりだ。家、金、これからのこと。何もわかっていない。
佐々アカネという人物にはもう親族がいないことになっている。だから一人暮らしになるだろう。それは構わない。以前もそうだったから。だが、俺の元の家が今あるのか、口座は…ないだろうな。データ全て消えるって言ってたから。18歳と言うと高校3年か?受験生……か。いや、本当にどうすればいいんだ?
「早速お困りですね」
と言う聞き覚えのある声が聞こえた。声が聞こえた方を見ると、凛がいた。
「!?」
なぜここに凛が?
「人生交換課の仕事で。人生堂へのお客様なんて、滅多に来ませんからね。なのでこうして、人生ご購入者が新しい人生になれるまで付き添うことまでが仕事です」
「説明になかっただろ!」
「あら、高校生らしくなってますね」
質問には答えないのか、少女よ。
「説明してしまったらつい甘えてしまうではないですか。このように迷っていたらサポートするために姿を現すのです。迷っていなかったら姿を見せずただ見守ります。あなたの場合かなり迷っている様だったので」
「そりゃどーも」
あれ、そういえば…。凛の服装が変わっている。人生堂で見た時は、いわゆるゴスロリファッションだった。だが今は、洋風の要素がある着物を身に纏い、傘は洋傘から番傘に変わっているし、足も隠れ宙に浮いている。
「服装とか、だいぶ変わったな」
「えぇ。日本らしく、というのもありますが、サポート中はその国の文化を守ることが義務付けられています。宙に浮いているのは、元々死神は浮いて移動するものですから」
なるほど、だからこんな風になっているのか。死神らしいといえば死神らしいのか。
死神にも色々なルールがあるんだな。人間よりかはマシなのか?……いや、人生や魂を扱う奴らだからそうでもないのか?もうよくわからん。
「まあ、まず市役所へ行きましょうか」
「お、おう」
行きましょうか、と言った瞬間凛は足を出し、地面に降りた。
死神らしく宙にって、降りるの早すぎだろう…。
「どうかされました?」
「……何でもありません」
「ならば早く行きましょう!」
凛は傘を持っていない方の手を上に高くあげ、ゆっくりと歩いていった。
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