2章6話

「凛、私はただ心配しているだけだろう?」

「心配して頂かなくても、私はちゃんと仕事していますから、お兄様」

凛は老人を兄と呼んだ。

その時、老人は指を鳴らし、辺りが光る。光が消えると、老人と代わり燕尾服のようなものを着た若い男が立っていた。

「お兄様も、心配しすぎです」

「も?ってことはアイツも来てるのかー」

笑いながら笑う男。嫌そうに男を見る凛。

次の瞬間、人生堂の玄関がノックされた。

俺の新たな特技がわかった。きっと俺は、佐々アカネは音楽ゲームが得意だったのだ。男子の中で一番得意だという人にも勝てた。

10戦9連勝。1度目は慣れてなかったからか負けた。その次からは圧勝!という感じだった。

その後はいくつかゲームをプレイし、時間が経つのが早く、もう18時になっていた。

途中まで翠と帰り、人生堂に向かった。

人生堂の扉をノックし、少ししてから開けた。中の明かりはついていたけれど、人はいなかった。俺は奥の扉の向こうには行けないから、一度だけ声をかけてみた。

「り、凛ー?」

やはり返事がなかったのでソファに腰掛けさせてもらうことにした。

「おや、お客さんかな?」

「…一番新しい購入者ですよ、きっと。ほら、お兄様そろそろ帰ってください」

「凛の家に?」「死神界でお願いします」

頬をふくらませいじける兄を無理矢理帰そうとする凛。なかなか動かったからか、凛が兄の背中を傘で刺した。兄は痛そうに手で抑え、悶絶。それから少しして扉の方へ歩いていった。老人の姿に戻って。

「ご来店ありがとうございました。またいらしてください」

そんな凛の声が奥の扉から聞こえた。立ち上がって凛を待つ。扉が開くと凛と杖をついた渋めの老人が出てきた。

老人は杖をつきながら俺の横を、少し笑いながら通り過ぎ外へ出ていった。

完全に玄関の扉が閉まるのを待ってから凛に問いかけた。

「あんな老人も来るのか?」

「え、えぇ、まぁ。いらっしゃることもあります」

たまにですが、と付け足した。

「そうなのか」

「で、今回はどうされました?お呼び頂けたらすぐに行きますのに」

「そうだけど、もう帰るから。一応凛にも報告した方がいいかなって。あと、朝鍵預けたままだったし」

「そうでしたね。では帰りましょうか」

そんな会話をして、人生堂の外に出る。外は一層暗くなっていた。路地裏の奥にある店なので、辺りに街灯もなく、ほぼ真っ暗だ。

こんな道を凛はいつも………。

少し心配したが、コイツ死神だったんだ、と思い出した。こんな小さくて、人間らしくても死神だった。凛なら問題なさそうだな。

と思いながら、歩く凛について行った。

「学校初日、どうでした?」

「友達出来たよ。みんないい人そうだし。凛は?今日は何してた?」

「今日もいつも通り書類をまとめてました。少しだけ、秦に会いに行きました」

「楽しそうだな」「アカネさんも」

凛は少し微笑みそう言った。

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