1章1話
人生やめたい、とか、もう死にたい、とか思ったことありますか?
それなら人生堂へいらしては?
『人生という物語では誰もが主人公!
キミにだってチャンスはある!
第37回、新人アイドルオーディション開催決定!
詳しくは、アイドルオーディションで検索!』
そんなCMがテレビから流れ出した。
わざわざ主人公だなんて馬鹿らしい。普通に生きて、普通に死ねばいい。だが、世界はそれを許さない。自殺したものが出れば批判される。目立たなければもっと目立てと言われる。そんな世界だ。
俺は何もかもが嫌になった。家にいれば楽だとか、そんなことなかった。親からの電話、テレビから流れるCM、すべてのことが。だから俺は逃げ出した。外に出て、ただフラフラ歩いた。ヘッドフォンをつけて、自分の世界に逃げた。自分の知ってる音しか流れない、そんな世界。少しだけ楽になる。歩けば歩くほど人がいなくなって、まるで自分しかいない世界にいるような気になった。ありえないけど。
歩いて歩いてひたすら歩いた。見たことのない場所、見回しても見えるものは小さな店のようなものと、使われていなさそうな建物ばかり。
「なんだここ」
人生堂…?なんだそれ、どんな店だよ。興味本位で怪しげな店に入ってみた。
「……おい、誰かいるのか?」
薄暗い店内を一周見回しても何も見えない。数秒してからコツ、コツという足音がした。音の方を向くとひとりの少女がたっていた。
「あら、お客様ですか?いらっしゃいませ」
彼女の言葉に反応して部屋の明かりがついた。目が慣れてくると、天井まである本棚に沢山入れられている本、紙やファイル、本が山積みになっている机が中央に見える。机の奥には大きな扉があった。その扉の前に黒と白で統一されたロリータファッションを身に纏い、傘をステッキのように持つ少女が立っていた。
「なぁ、ここは、何なんだ?」
「人生堂です」
「人生……堂?」
「はい。こちらでは人生の売買を行っています。自殺した方、もしくは、自ら人生を売りに来た方の人生を売っているだけの小さな店です。」
「自らの人生を…?」
「ええ、あなたも人生を買いますか?」
幼い笑顔を見せる彼女は、いかにも買って欲しいと言っているように見える。人生を買うと言えども俺は全く金を持っていないし、人生を買ったところで何もすることなんてない。
「詳しく話してくれないか?話を聞いた上で考えたい」
「わかりました。では…」
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