1章10話

「ここはねェ、特定の人間が窓口をしていて、特定の者にしか使えないンだァ」

と、窓口の女性が少し身を乗り出して言った。

「説明は私の仕事です。あなたはあなたの仕事をしてください」

「はァい」

窓口の死神(?)が説明しようとしたが、凛に活を入れられ、パソコンの画面に向き直った。仲が悪いというわけではないのだろう。

「彼女の言う通り、ここは特定の人間が窓口をしている特別な窓口なんです」

特別な窓口か。死神と人間って意外と交流があるのだろうか?俺にはよくわからないが、どこかで繋がりを持っているのだろう。

そして、凛は話を続けた。

「この窓口を担当する人間は、死神界人生交換課から指名された特別な人間が係員なんです。そしてここの窓口を使える死神も限られています。死神界人生交換課の死神で、人生堂の店主をやっているものだけが使えます」

「ここの窓口を担当する死神は?」

毎回話が脱線するのはきっと俺のせいなのだろう。自分の知らないことがあると質問したくなる。

「窓口を担当する死神はねェ、資料管理課の死神なんだよォ。そこの人たちは面白い事にねェ、みィんな、眼鏡かけてるんだよォ」

管理課らしいと言えばそうだろう。真面目な人が多い、という事か。

……彼女は見た目は真面目そうだが、中身は……。考えるのはよそう。

「アカネさん、彼女はこんな感じですがかなり真面目で仕事はちゃんとこなしますよ」

「おー。凛が褒めたァ」

「ほら、仕事してください。待ってるんですから」

「珍しく凛が褒めたから頑張ろォ」

やはり仲はいいほうなのだろう。死神の事情はやはりわからん。技術が進んでいるのはよく分かったが、そうだからなのか、色々なことが複雑で大変そうだ。

そういえば、彼女のことについて聞いてなかったな。

「凛、彼女は?」

「彼女はしん。死神界資料管理課の実力者です」

「実力者……。凛とは仲がいいのか?」

「結構仲いいんだよォ。私の方が先輩なんだよォ。人生交換課のねェ」

「え?」

「秦、仕事してください。」

「終ったよう。データ作るからァ、名前と元々の生年月日教えてェ」

「佐々アカネです。生年月日は19×○年8月23日です」

「佐々アカネ君ねェ。じゃあ新住まいはどこがいいかなァ?」

「選べるのか?」

「もちろんだよォ。まぁ場所はいくつか選択肢あるだけだけどねェ」

よかった。今まで住んでいたところは会社が近かったとかで住んでいただけだし、正直あんな何も無い所なんて早く引っ越したいと思っていたところだ。

「選択肢はねェ………」

それから様々な質問をされ、新しく住む場所、学生なので新しい学校など、新しい人生の基礎がほとんど決まった。

質問の途中で秦が別の話を始め、凛に止められ、その繰り返しが約5回。凛が言うには「やれば出来るのに永遠にやる気を出さない」だそうだ。

まぁ、そんなこんなで俺の、“佐々アカネ”としての人生の一歩を踏み込んだ(気がする)。

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