続々・私がTRPGでGMやってた頃の話


「それじゃあキャラクリも終わったし……よろしくお願いいたします!」 


 なんだかんだで午後3時過ぎ。

 テーブルに並んだ四人のプレイヤーを前に、私は人生初のTRPGの開始宣言を

行った。


 ☆☆☆


 皆様、こんばんちわ。

 キミサガでお馴染みの皆様、いつもお世話になっております。

 芋つき蛮族です。


 日曜早朝からキャラに必殺技にと作りまくっても、そこは元気な高校生たち。

 意味なくサイコロ回して喜んだり、お菓子をかけて勝負したりと脱線しつつも、遂にゲームスタートです。


 ☆☆☆


「さて……これが世界地図だ。中央大陸と東西縦長の大陸、諸島と取り揃えております」

「ほう。真ん中の孤島、ラスボスの根城ぽいな」


 テーブル中央に広げられたシャーペン書きの地図を、皆が覗き込む。

 その間に私はTVとSFCスーパーファミコンの電源をON。

 装着ソフトはスーパーロボット大戦EX。


 GMゲームマスターなのに、なにしてるんだよって?

 うん。

 サウンドテストモードでインターミッション曲をセレクト放置。

 ゲームするんならBGMって大事だよねってことで。


 この頃は場面変わるとBGM変更ってのはちょいちょいやってた。

 戦闘に入るとこはお気に入りのバトル曲にしたり。

 後になってからボス戦ではロマサガのサントラで「バトル2」流したりね。


「さて、地図も見てもらったところで……どこがいい?」

「ここだな。いろんな所にいけそうだし」


 さらりとした質問に、すぐに返事と指差しがやってきた。

 風属性の軽戦士ライトウォーリアが指したのは、中央大陸のそのまたど真ん中。


「オッケー。ラグメレス王国、森林地帯ね。全員そこら辺にいるってことでスタートだ」

「え? どこかの街の冒険者ギルドとか酒場とかではなくてですか?」

「いやー、ないからね。選んだとこ森だし」

「田舎すぎね。まあレベル1だし丁度いいか」

「でかい木切りたい。バトルアックス買った」


 ということで、開始地点も決定してシナリオスタート。

 水属性の神官プリーストが一人不安げだが、大丈夫。


 完全自作ゲーである故にすべてがほぼ白紙状態なので、変に背景を固めすぎるよりはやりたい場所とスタンスで柔軟に決めていく方が良いのだ。

 最初は様子見でどこにでもある事件とか解決してもらうもんだしね。

 むしろ皆で色々やらかして歴史を作って欲しいという親心である。

 

「どうせ街の名前とかまでは考えてないんだろ」 

「名前なんて生えてくるから。なんなら今からNPCも生えてくるぞ……そら、道行く君の目の前に傷だらけの中年男性が駆け寄ってきた。どうする?」 

「おっさんは〇ね」

「……年若い女性も続けて姿を現した。30人に1人という感じの美人」

「やあお嬢さん、どうしました✨」


 無事、雷属性の魔術師メイジNPCエサに声をかけた。

 お前の使用キャラ女性だろとかつっこんではいけない。

 所詮中身は男子高校生、猿である。


「質問。僕らは全員一緒にいるわけで?」

「んー。好きにしていいよ。一旗あげたくて集まったとか、幼馴染でもオーケー」

「んじゃ俺はそこらを歩いてる」

「木、どこ?」


 こうして水属性の神官プリーストがNPCの悲鳴を聞いてその場に駆けつけて、木こりと化していた土属性の重戦士ヘヴィウォーリアを風属性の軽戦士ライトウォーリアが回収完了。


 四人は無事、NPCに案内されて盗賊団に襲われた村へと辿り着いてた。

 さすが私、初のシナリオ導入もお手の物である。


「つまり村の近くに根城構えたヒャッハー共を掃除してこい、ってことか」

「罪のない人々を苦しめるとは……許せませんね」

「ところでお前らの名前聞いてないぞ」

「モリガン」


 森にいた土属性で森岩モリガンとな。

 いやキャラネーム別にあるだろw

 

 TRPGに関していまいち興味のない彼、どうにも明後日の方向に行きがちだ。

 しかし今回もっとも乗り気でなく、付き合いでこの場にいたから仕方ないというもの。

 ぶっちゃけ参加してくれただけでも神である。


 プレイヤー四人でも多いとは言い切れないとこあるからね、TRPG。

 そうした敷居の高さをNPCやシナリオ、ギミックでカバーするだけの経験は当時の私にはまだなかったので、それなりに苦労した記憶もある。


「んで、どーする? 村が襲われたんなら味占めてまたくるかもだし、迎撃して数減らしとくか?」

「うーん。私は攫われた村人が心配ですね。身代金も払えないというほど困窮しているようですから、急がないと人買いに売り飛ばすかもしれませんよ」

「それって謝礼も厳しくないか? いきなりただ働きはごめんだぞ」


* おおっと *


 どうやら名GM芋つき蛮族くん、早速の冒険やっかいごとを前に「助けたくなる可哀想な村人たち」を前面に出し過ぎてしまったらしい。

 行動を渋るプレイヤーに妙案はないかと悩むが、咄嗟のことで上手いこと台詞が出てこない。

 するとそこで突然、森岩が口を開いてきた。


「ダンジョンの奥に宝箱とかあるんじゃないの」


 RPG好きの彼にしてみれば、それは当然といった感じだったのだろう。


「「「それだ!!!」」」

 

 残る三人が口を揃えて同調した。


 ☆☆☆


 根城を作ったばかりの盗賊団に、貯蓄するだけのお宝があるのか。

 それが問題だった。


「ソウイエバ、トウゾクダンハ、オタカラヲタメコンデイルヨウデス」


 こうしてGM芋つき蛮族くんは、めでたくもチートスキル『物語改変シナリオアドリブ』を覚えたのだった。

 私自身がルールブックだし仕方ないね。  


 ☆☆☆


 場所は変わって盗賊団の根城おたからダンジョン前。


雷光爆裂ライブレイド。基礎命中12の出目9。命中21な」

 

 6面ダイスを二つ、こっちもコロコロ……


「うん避けられない。盗賊AとBにヒット。さらにコロリン……抵魔力、11と9w」

「範囲攻撃は命中と同じでダメージも一括か。うっし、ダメ20」

「あー、A先にバタリ。不意打ち波動剣が効いてたわ」


 外で居眠りしていた見張りの盗賊に、忍び足から降り注ぐ剣撃と雷。

 敢え無く名も無き雑魚一名が天に召される。


「くそー、初の撃墜もってかれた。風属性で射程まで伸ばしてると一撃が弱いな。やっぱ火にしておくべきだったか」

「その分、反撃は受けなかったでしょう。お陰で回復温存感謝です」

「攻撃あたんない」


 ドカスカビッシャーンと得物を振り回して突き進む四人組。

 レベル1とはいえ、先制攻撃に晒された手下クラスの盗賊たちでは相手にもならない。


「一匹捕縛。よーし、命が惜しくばキリキリ吐け。この先はどうなってる? 人数は? 罠は? お宝は? 尋問判定は12だ。洗い浚い話せば見逃してやろう」

「……盗賊Bは揉み手をして答えてくる。『急ごしらえで見つけた洞窟に移ってきただけで、罠なんてものは……人数は4人です。宝は、そりゃもうスゴイのが』と」

「「おおー」」

「用済みならコイツ消していい?」


 初戦をすんなりと勝利で終えたことで全員その気になっている。

 ちなみに各種行動判定は、対応ステータスとサイコロの出目の合計で決まる仕組み。

 

 重量挙げなら筋力と六面ダイス×2の合計で、難易度により設定した数値を越えられるか、または迫れるか等で結果が変わるといった具合。


 空の酒樽を持ち上げるなら目標値は8、筋力が最低値の5であってもサイコロを振って「1.1」つまりピンゾロでの自動的大失敗以外では成功となる。


 これがワインで満たされた樽であれば、17。

 目標値は筋力5では「6.6」つまり自動的大成功の6ゾロ以外では不可能、といった次第だ。


 ここらの加減は例えTRPG未経験でも、リプレイ集を楽しんでいた私には問題のない部分だった。

 そう……問題は他の点にあったのだ。


 ☆☆☆


 A4用紙にシャーペン書きされた地形マップを、紆余曲折で突き進むメンバーたち。


「おいおい……罠もあったし、聞いていた数と違うぞ。騙しやがったな、あの盗賊シタッパー(故)!」

「これは不味いですね。MPも残り半分、全員のHPも回復しきっていないです」

「マジかよ。お宝あるって話まで嘘じゃないだろうな」


 場面は進んで、洞窟の奥。

 仲間の後を追った見張りの盗賊への尋問に見事失敗していた四人は、まんまと嵌められた形で盗賊団の面々に取り囲まれていた。


「入口側のを倒して逃げるか。ボスが突っ込んで来なければいけるだろ」


 雷属性の魔術師メイジの提案の元、撤退戦が始まる。

 彼の言うとおりに四人で手下相手に突っ込んでいけば、それも可能な状況だ。


 だがしかし、ここで思わぬアクシデントが発生した。


『おめぇの出番だ、悟飯!』


 突如として室内に響き渡る、野沢雅子氏のイケメン☆ボイス。

 私はその場を振り返る。


 そこにあったのは、BGM用に設営していたSFCにぶっささった「ドラゴンボールZ 超武闘伝2」のソフト。


「え……いきなりなにやってんの森岩」

「あきた。天下一武道会しとく」


 しまった、こいつ密かにソフト持ってきていやがった!


 いやまあ、これに関しては正直私が完全に悪い。

 キャラクリの際に筋力全振りなんて申告があったのに、さして説明もせずに「あー、こいつドラゴンスレイヤー英雄伝説でも主人公の力だけ上げて、セリオスとか呼んでたなw」とスルーしていたのだ。


 その結果、回避力だけはそこそこある盗賊手下に自慢のバトルアックスを一発も当てられないまま、ここまで来ていたのだから……

 そりゃツマンネこのクソゲー、となるのもやむなしである。


 幾らドラゴンボールばりのインフレバトルを追及したセブンフォートレスを模倣したとはいえ、本家には勝てなかったよ……


 てかザンギャのスパークレーザーだっけ?

 あれドットめっちゃ気合入ってたよね。

 キャラ数少なかったけどかなり遊んだソフトだった。


 なにはともあれ、一人離脱で残るはプレイヤーは三人。


 かくして、激戦の火蓋は切って落とされた。


 ☆☆☆

 

 今回は早めに続きを投稿します。

 次でこの話は完結。


 本日も貴重なお時間をさいてお読みいただき、ありがとうございました。


『ちょっとクスッときたり、今回は良かったなと思って下さった方へ』

 キミサガ共々、☆評価・応援よろしくお願いします!


 それでは皆さん、サヨナラ、サヨナラ!



 こちらは自作品の宣伝です! ☆がほしー! いやホントまじでw


『君を探して 白羽根の聖女と封じの炎』

 https://kakuyomu.jp/works/16818093085888298321

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