井の中の蛙、大海を渡らんとす
「ネット投稿とかしないんスか?」
「カクヨムかなろうに連載していいんじゃない?」
「折角ここまで書いてるなら勿体ないよ」
あれだけ新人賞に応募してなんの芽も出なかったのに、私というヤツは本当にアホである。
「カクヨムか……ちょっと調べてみようかな」
こうして私はカクヨムに興味を持ち始めていた。
☆☆☆
皆様、こんばんちわ。
キミサガでお馴染みの皆様、いつもお世話になっております。
芋つき蛮族です。
カクヨムへの投稿開始。
前回、前々回より引き続きのこのお話。
回顧録というには最近のことではありますが、よろしければもう暫くお付き合いくださいませ。
☆☆☆
そもそもが、である。
私は「自分だけは楽しめる最高傑作」を求めて執筆を再開していたのだ。
当然ながら、そこに読者への配慮はなく。
嗜好の推測、エンタメ性の追求なども一切存在しない。
ただ只管自分のためだけに書き始めていた。
しかしそれが気がついたら、それを友人に読んでもらっていた。
切っ掛けは些細なことだったと思う。
友人宅に転がり込んでゴロゴロしていたときに、ラノベ原作のアニメを鑑賞していた際のことだ。
「こういうアニメの原作者って儲かるんスかねー。なんか最近いっぱいラノベ原作ありますけど」
「いやー、どうかな。おもっきり当たればわかんないけど」
そんなどこにでもありそうな会話。
「芋つきさん、詳しいスね」
しかしついつい、以前は新人賞を目指してこともあり、余計な知識を披露してしまう私。
「いや、これぐらい少し調べたらすぐに出てくるよ」
「書いてたんスか?」
年下の友人は、なんというか鋭いところのあるヤツだった。
「まあ、書いてたというか、書き始めてるというか」
気がつけば私は友人に、新人賞に応募していたこと、今は趣味で書いていること話していた。
「……良ければ、いま書き始めてるヤツ読んでもらえないかな」
「いいっスよ。小説はほとんど読まないですけど」
それなりに勇気を出してのお願いに、快諾が返ってきた。
家に帰るなり、私は猛然と書き進めていった。
読んでくれる人がいる。そう思うと熱が入った。
例えどんな反応を受けるにしてもだった。
そうしてある程度の分量が書きあがると、私はそれを友人に読んでもらった。
「いいっスね。好きな雰囲気かな。また続き出来たら読みますよ。どんな話がくるか、読めるか不安はありましたけど。これなら大丈夫」
出来上がった分を読み終えての彼の言葉に、私はジャンルの説明すらしていなかったことに気づかされた。
いや、ラノベ原作アニメ見てからの流れだったしね?
正直スマンかった、友人よ。
なにはともあれ、そこからは書き溜めたものを週一で彼に読んでもらうのがパターンとなった。
「ラノベのことわかんないスけど。動きがあるので見てみたいスね」
「動き?」
「アニメっスね。漫画でもいいけど」
「いやー、飽くまで趣味だから」
なんていいつつ、私は友人の反応にめちゃくちゃ気を良くしていた。
「いまいちかなぁ。ここはよくわかんなかったスね」
「今回はおもしろかった」
「次まで読んでからッスね」
ダメなところはストレートに、楽しめた部分はしっかりと。
ときには過去の分も読み返してSNSに感想も書き込んでくれていた彼が、ある日こう聞いてきた。
「芋つきさん、これ応募しないんスか」
私は苦笑いで答えた。
「応募規約を満たしてないからね。それに趣味全開で読み手のことは考えてないし」
「じゃあ、ネット投稿とかは?」
「――」
私はそこで固まった。
ネット投稿というものがあることは当然知っていた。
今の時代、そういった場所から多くの作品が世に出ていき花開いていることも。
「そういうところは、一話投稿形式でしっかり皆練ってやっているからね」
「そうもんスか。色々むずかしいんスね」
事あるごとに言い訳がましい私の説明に、彼はPCの前に向き直り、
「俺はいけると思いますけどね」
そう言って空っぽになったコーヒー缶に、タバコの煤を落としていた。
☆☆☆
はっきりいって、クセになっていた。
「へえ、小説書くんですね」
「いいですよ、良ければみせてください」
「ネットで見れるんですか?」
それから例の友人はめっきりと仕事が忙しくなり、合うことも少なくなっていたが……
すっかりと感想を貰えることに味をしめていた私は、ネットにも保管していた非公開の小説を、知り合った人たちに読んでもらうようになっていたのだ。
相手の方々は、今も継続中のソシャゲ仲間。
勿論、まったく興味を示してこない人や、その手の趣味がなさそうな人に無理をいう事はなかったが……数名の人に、私は反応をもらっていた。
当然ながら、反応は様々だった。
一番多かったのは、アニメでみたいという言葉。
イメージするとなると、それは当たり前のことだろうと思ったが……それも嬉しかった。
一人だけ、実写でみたいと言ってくるので「それ死亡フラグだから」と笑わせてもらったがw
とにかく、リップサービスであれ付き合いであれ、私は完全に調子にのっていた。
そして……彼に出会った。
「全然流行りの系統じゃないな」
「極端やな」
「クセが強いから好み思い切りわかれると思うわ。ダメな人はまずそこで切るわ」
それまでやっていたゲーム仲間とは、また別の縁で知り合ったネット仲間。
彼は若干、視点が違った。
カクヨムではそれなりにラノベを読んでいる、とのことだった
「ワンチャンあるな。これ以外にも書いてみればいいんちゃう? しっかり完結してる短編とかも色々載せるといいで、カクヨムは」
彼は「当てる」思考で見るタイプだった。
それまでにもネット投稿に関しては他の人たちとも話題には昇っていた。
もちろん、本気で期待してくれた方もいると思う。本当にありがたいことに。
でもそういった話題は、私にとって捕らぬ狸の皮算用、妄想して楽しいね、という範疇のものだった。
自分の実力は自分が一番良く知っている。
スルーも批判もない環境で、ぬくぬくと気持ち良くなっている。
それが私の現状だった。
「ツレに読ませたで」
「ツレ?」
彼の一言に、最初私は彼の奥さんに自作を読んでもらったのかとおもった。
後になってそれは、彼の古くからの友人を指していたのだと判明したのだが。
「担当つけばデビュー出来るレベルはある思う言ってた。ジャンル的に売れないとはおもうけど、そこから次回作とか打ち合わせしていけるしって」
「んん?」
私は首を捻った。
彼も変わっていたが、ツレと呼んでる人の視点は更に変わっていた。
「本気でやるなら相談に乗るってさ」
担当がつけば。売れない。次回作。……相談に乗る?
「そっか……読んでくれてありがとうって伝えておいてね」
勝手に想像を膨らませてしまうのも、良くない。
読んでもらえた上につまらなかったと言われなかっただけでも十分。
そんな風に考えて、私はそこで話を一度終わらせていた。
☆☆☆
「この前の話だけど……」
結局私は、そう日も経たないうちに彼に聞いてしまっていた。
「ツレの方って、編集とかやってる人?」
「いや?」
違った。
そりゃそうだ。
世の中には、ちょっと変わった視点で見てくれる人もいるものだし――
「ラノベ作家やで、アイツ。専業のなw」
このエッセイの第一話「リスタート」の冒頭にて喋っている人物。
その人こそがこの、めちゃくちゃ胡散臭くも妙に協力的な彼だった。
☆☆☆
時代が時代とはいえ、顔も視えなければリアルも知らないネット仲間。
希薄と言えば希薄な間柄だが、共通の話題もあって気が合うときはとことん合う。
メリットデメリット含めて、私はそういう関係性を好むところがあった。
そうでなければ、GVG《ギルバト》ゲーとか嵌ってないしね。
「毎日更新って形でやるのがオススメやで。一気に出すのはアカン」
「投稿するなら、最低限の校正はかけないとだし。どの道一気には無理かな」
「せやね。結局は面白いものを出し続けることが重要やから。僕もあんまり詳しくはけど、あとはそうやな――」
気がつけば私は『自作をカクヨムに投稿するなら』という前提で、彼と話すようになっていた。
ラノベ作家さんとお知り合い。
真偽すら不明なのに、それだけでこの気の変わりよう。
我ながら脳みそアッパラパーの御都合主義全開である。
しかしそういう話をすること自体、とても楽しかった。
そりゃあカクヨムに投稿して、もし人気が出ればとか、編集者の目に止まればとか、考えはしたし、そんなとらたぬも悪くない。
でも一番楽しかったのは、別の部分だ。
それは彼が、ツレの方に私の小説『君を探して 白羽根の聖女と封じの炎』を読ませていたこと。
勝手と言えば、勝手な行動なのだろう。
しかしそれが私は嬉しかった。
彼は私の小説を、その道の人に推せると思い、行動してくれたのだ。
「10月1日。その日からカクヨムに投稿することにしたよ」
私は彼に返事ではなく、行動でお返しすることにした。
☆☆☆
以上が私、芋つき蛮族がカクヨム投稿を開始するまでの話でした。
本日も貴重なお時間をさいてのお付き合い、ありがとうございました。
『ちょっとクスッときたり、今回は良かったなと思って下さった方へ』
キミサガ共々、☆評価・応援よろしくお願いします!
それでは皆さん、サヨナラ、サヨナラ!
こちらは自作品の宣伝です! ☆がほしー! いやホントまじでw
『君を探して 白羽根の聖女と封じの炎』
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