私がTRPGでGMやってた頃の話 完結編
「くっそどきやがれ、昇龍剣!」
「接近してきた盗賊にコマンド投げうっとくわ」
「範囲回復します! 集まってください!」
『魔貫光殺法ー!』
☆☆☆
皆様、こんばんちわ。
キミサガでお馴染みの皆様、いつもお世話になっております。
芋つき蛮族です。
遂に始まった、盗賊団の根城での本格バトル。
昔はリプレイ録音とかやってたもんです、懐かしや。
それでは早速続きにお付き合いくださいませ。
☆☆☆
包囲をじりじり狭めてくる手下たちに、向かうは三人のプレイヤー。
限定強化されたスキルが状況にマッチしている部分があるとはいえ、多勢に無勢、やや苦しい展開か。
離脱あつかいの
その結果……
「くっくっく」
開戦から数ターン後。盗賊団の根城に響く、勝利を確信した声。
「残るはお前一人だな……盗賊団のリーダー!」
「うむ。数が多いだけで案外と脆かったな」
「というか、入口に殺到してくるはカモですよ普通に。全員なにかしらの範囲攻撃覚えてるんですから」
はい。
そうです、このゲームはセブンフォートレスを参考にしただけあり、ポイントさえ消費すればどんな
得意不得意はあれど、範囲攻撃は
そこにプレイヤーを逃すまいと大広間の入口に7人もワラワラと集まってきた。
そりゃ皆で一斉に範囲ブッパするよねって話よ。
「しかしなんだかんだ消耗ひどいわ。こっちもう近接魔法一回が限度」
「俺はまだいけるぞ。消費少ないのだけトドメ狙いで打ってきたからな」
「私はもう、いまの攻撃で綺麗にMP0です。
『カカロッ、カカロ、カカカロットォォ』
最後に残った盗賊団の頭領を前に、三人が覚悟を決める。
なんかブロリー混じってたけど気にしてはいけない。
「それじゃ、ラストバトル開始かな? 逃げるならここだとは思うけど」
「それはこっちの台詞じゃぼけー」
「うむ。トドメはいただくぞ」
「冗談もほどほどに。村人、一人も返してもらってないので」
オーケー。
流石、ノリがいい。
「では最後の相手はこちら。ドン!」
「「「ん?」」」
突如マップ上に配置されたのは、BB戦士武者サイコガンダム。
「は? なにこれ」
「ゴーレム。魔導ゴーレム。見た目でわかりやすいし、いいでしょ。雑魚はおはじきで、ボスは特別」
「いや、そういうことじゃなくて」
「……なんでたかが盗賊団に、ゴーレムなんて大それたものが?」
最後はモヒカンのおっさんをフルボッコのつもりでいた三人が、疑問の声をあげる。
「盗賊団のお宝です。お頭所有の切り札ね。ちなみにこいつに乗って、洞窟掘って自分の根城に変えたってことで」
「……すごいお宝ってそれかよ」
絶妙なラインで尋問を失敗していた雷属性の
伏線もなにもありゃしないゴリ押しの無理押しである。
前門の魔導ゴーレム、後門のブロリーである。
そりゃ皆して文句の一つも出るかと思った、その矢先。
「つーことは多分、誰でも使える乗り込み式だなコレ」
「うむ。盗賊なんてチンケなヤツには勿体ないな。俺がもらってやろう」
「狙うなら搭乗ハッチ一択ですね」
わーおすごい、もう自分たちが利用する気満々すぎる。
いや実際、壊さずに勝てば報酬になるけどね。
壊さずに勝れてば。
ちらりと私は窓側をみた。
夕焼けに染まり始めた空には茜雲。
時刻はすでに午後六時を回っている。
楽しい時間は過ぎるのも早い。
「それでは正真正銘の最終戦。始めるよ」
☆☆☆
「いやいやいやいや。タフすぎるぞコイツ」
既にMPを使い切った雷属性の
「うーむ。通常攻撃じゃあんましダメージ通らんな。
風属性の
「でもまあ、その分動きは遅いぽいですね。さっきからGMが申告してる回避命中の数値が低すぎますから。その内――って、やばっ」
魔導ゴーレムの特徴を分析していた水属性の
「1.1」ピンゾロ、
相手もまた
鈍重なゴーレムの攻撃であっても、さすがに避けられない。
「……あっぶなー! 残りHP3点! 防御力判定高めで良かったです」
「うむ。だがもう次はないな。下がってていいぞ」
「キャー、カッコイイー。
一人踏ん張る風属性の
そもそもスピード特化といえる構成の彼にしてみれば、回避面では鈍足なゴーレムは好相性。
避けては削り、削っては避けるを繰り返してダメージを積み重ねていく。
だがしかし、二度あることは三度ある。
1/36なんて確率は、案外あっさり飛び出してくる。
「ぐあー! よりによってここでピンゾロかい!」
ついに捕まるスピードスター。
そして……
「物理防御力判定、15。やべえ、低い」
「んじゃゴーレムパンチ(コロコロ)……ごめ、24点」
「はぁ!? おいおい死んだわ、マイナス2点だぞ」
「大丈夫。まだ生死判定がある――あっ」
撃沈する風属性の
発生する生死判定。
「なんだよ、あって。まだなんかあるのか」
「いや……生死判定の処理作ってなかったw」
「え。どうすんだそれ」
「あーいや、今つくる。まあマイナスダメージ大きいほどペナルティあり、体力高いほど成功しやすいってのが妥当かな。あとはレベル補正」
「マジか。体力そんなに振ってないんだよな、俺」
真の意味でのルールを穴をサクッと埋めるべく、即興で判定方法作成開始。
ぶっちゃけこっちの落ち度で待たせてしまうし、今回は甘めで設定。
「うん、体力からHP下回った数値÷3を引いて、
「てことは、体力8からマイナス1で7。3出せばセーフか……あぶな、4!」
「「「おー」」」
ガチでギリギリのところで生存。
しかし最早、回避盾も削りも出来ない。
万事休す。
誰もが諦めかけたその時に。
「斬鉄閃」
ころころ。
「命中14。あたった?」
「あ、うん……回避13なんで、当たり、だけど……」
「ほんと? じゃあダメージ振っていいんだよね?」
「ああ、うん。もちろんだけど……いきなりどしたの」
突如戦線に復帰を果たしたのは、土属性の
「ブロリーあきた。あとなんか盛り上がってて楽しそう」
「暇なんで対戦してたわ。相変わらず打ち返しつよすぎw」
見れば
どうやらゴーレム相手にMP切らしてやることがなくなり、二人で遊んでいたらしい。
ちなみに森岩氏の連打力は我らZ戦士の中でもぶっちぎりで最強であり、過去に
(あそこ実は星矢でゴリ押ししたほうがゲーム的には楽でお得)
超武闘伝2のデモ必殺技への打ち返しも連打力依存なので、彼にデモ必殺技を打つ=負け、みたいなところはあった。
閑話休題。
それまでほとんど戦闘に加わっていなかった彼だが、今回はそれが功を奏した。
MPがガッツリ温存出来ていたからだ。
「ダメージ……10出たから、40点」
「「「40点!?」」」
森岩氏からの初のダメージ申告に、全員が驚愕の声をあげる。
もちろん、サイコロの出目もいい。出目もいいが……
「いやなんだよ40点って。基礎ダメージが30ってこと? 高すぎない?」
「腕力全振りで12点に、バトルアックスが10点で……ああ、斬鉄閃が8ダメもあるのか。命中マイナス値がエグいだけあるな」
「というか技名が斧の名前じゃないですよこれw」
突如飛び出た異次元のダメージに盛り上がるプレイヤー陣。
さすがヘヴィウォーリアで筋力全振りマン。
しかも息をするが如く所持金まで全ツッパでバトルアックス装備。
しまいにゃパクリ100%の低命中高威力スキル「のみ」習得。
というかこの人、防具が
一体誰が蛮族かわかりゃしない。
むしろ服を着ていて安心したレベルだ。
たぶん、お金が微妙に余ったから買っただけだろうけど。
「たおした?」
「い、いや流石に一撃では……でもまあ、かなり効いた。ではこっちも反撃を――」
「ちょい待ち。俺も前に出るわ。いまコイツが落ちたら全滅ありえるからな」
「ですね。私も弾避けになりまーす。回避もそこそこありますので」
「うむ。がんばれ。俺は動けん」
ここが賭け時と判断したのだろう。
それまで戦線から退いていた二名が再び前に進み出て囮を買って出る。
私は内心、ほっと胸を撫でおろす。
ここにきて、ようやく全員でパーティプレイが出来たことに。
一人仲間外れ状態となってしまっていた、森岩氏が――
「天覇封神斬」
なんか絶対斧で打ったらダメな技を繰り出してきた。
☆☆☆
今回のポイントは以下の通り。
「反動ダメージで追加されるダメージは、失うHPの半分ぐらいに制限しておこう」
以上が芋つき蛮族にとっての気づきでした。
☆☆☆
真面目な話。
ハチャメチャな感じで勝利を収めたTRPGだったが、芋つき蛮族にとっては学ぶところが非常に多かった。
余裕をもったルール作成とか、事前準備は当然として。
なにより、参加してくれるプレイヤーそれぞれに、しっかりと活躍の場を用意する。
その為の導線引き、誘導は怠らない。
プレイヤーにとって興味のない話を延々としてしまったり、説明に終始してはいけない。
主役はあくまでもプレイヤー。
「GMはサービス業。
自分の作った世界で楽しんでくれるなら、これ以上の喜びはないしね。
そしてこれは多分、小説を書く上でも結構大事なこと。
書きたいこと、主張したいことばかり書いてしまいがちな自分。
いまも時折、彼らとの冒険を思い出して心に止めています。
本日も貴重なお時間をさいてお読みいただき、ありがとうございました。
【追記】
魔導ゴーレムは無事オーバーキルで
『ちょっとクスッときたり、今回は良かったなと思って下さった方へ』
キミサガ共々、☆評価・応援よろしくお願いします!
それでは皆さん、サヨナラ、サヨナラ!
こちらは自作品の宣伝です! ☆がほしー! いやホントまじでw
『君を探して 白羽根の聖女と封じの炎』
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