28 アスレチックのアイデア

 僕とレーナ姉ちゃん、それから不肖さんとでアスレチック場のアイデアを出すことになったんだけど、その前にレーナ姉ちゃんに呼ばれた。


「太一くん、チョットこっちに。内緒話」


「うん? うん、分かった」


「私のパソコンで調べたりまとめるから、太一くんはスマホを出さないように」


「分かってますけどー?」


「分かってないわ。このスマホは普通の・・・・・・・・・、とか言いそうだもの」


「わ、分かってませんでしたっ! 了解です!」


「よろしい」


 で、では改めましてー!

 レーナ姉ちゃんのノートPCでググりながら、アイデアをコネコネしていく感じになりまーす。


「パッと思い付くのだけでも、色々ある」


 壁登りや急な坂道とか、丸太渡りとかターザンロープなんかはよくあるタイプなんじゃないかな。それに僕らが作りたいのはモンスター用だからね。高難易度のもののほうが遊びごたえがあると思う。


 壁登りとかはボルダリングじゃなくて、ただの石壁にしたほうが遊んでもらえそうな気がする。孫くんたちにはボルダリングじゃあ簡単すぎるだろうしさ。

 それに不肖さんが言ってたあのアイデア。


「あとさ、探検できる場所はどうしたらいいかな!」


「そう、それ。素晴らしいアイデアだと思った」


「お、おう。急な高評価に不肖山谷は興奮してるぞ?」


 そうだなあ……とか言いながら出してくれたアイデアは、トンネル迷路とロープネットで上り下りする見張り台をくっ付けたものだった。高い場所もあるし、かくれんぼも出来るしね。


 ターザンロープだってくっ付けられる。


「おおー、それ、僕もチョットやりたいかも?」


「ただなあ、ロープネットだと飛行型とベイトリスザル以外がどうなるか」


「花ちゃんも大きい」


「うーん、そうだよね……試してみないと分かんないかなあ。それは」


 特に花ちゃんはロープネットだと上がれそうにないもんね。

 スロープも付ければいいんだけど、そうすると見張り台自体を大きめにしなくちゃだしさ。


 大きめにしたらいっか!

 みんな仲良しだからなあ。

 一緒に上に登りたいって思うだろうし!


「スロープ付けちゃう。遊びたい子がロープネットで登ればいいんだしねっ」


「他は──そうね、単純に障害物のコースでも喜んでくれると思う」


「平均台とかも!」


「太一くん、もっと冒険しよう。水流コースの中に浮島とかはどうだ? と、不肖山谷は提案するぞ!」


「クッ、またしてもッ?」


「うわぁっ、そんなの絶対楽しいよ!?」


 現役冒険者の冒険心はスゴイんだなあ。

 レーナ姉ちゃんもいいアイデアを思い付きたくて焦り始めてるよ……。

 脅威度判定のお仕事じゃ、冒険心とかはなかったのかなあと思って聞いてみた。


「誰よりも先に探検するワクワクはあった」


「おおー。レーナ姉ちゃんは一番目ってことかあ」


「俺たち冒険者は、レーナ姉ちゃんたちに感謝しかないぜ?」


 脅威度判定安全管理課に栄転したい冒険者さんも多いんだって。


「超エリートだからな!」


「やっぱりね! レーナ姉ちゃんはスゴイんだからっ」


「ふふん」


 レーナ姉ちゃん、自慢気にしてるけど、照れてるね。顔が赤い。ナイスミドルを目指す僕としては、ここはスルーしてあげるのが正解なんじゃないかと思う。

 あと、変に反応したら仕返しが怖い。


 地獄コチョコチョはホントにダメなので。

 とりあえずは──


「思い付くものは全部作っちゃう感じでいいかなー」


「ええ」


「くぅ~、現場に立ち会いたかったよ、俺も」


 残念ですけど、それは禁止なのです。

 ダンジョンの改造はみんながいない場所でやらないと、なので。


 レーナ姉ちゃんがPCでアイデアをまとめる。

 あとからでも欲しいものは追加できるし、どんどんメモっておけばいいよね。


「ねえ、どうせアスレチックにするならさあ、全部の階層がいい?」


「夕方まではモンスターたちも分かれてるしなあ……っと不肖山谷は思った」


 不肖さんは変なしゃべりかたする。

 チョット面白いから笑いそうになっちゃうよ。


「1層の改造は後日になりそうね」


「うん。だから来週はアルバイトもボランティアの人も、なしにしよっかなって」


 誰もいない状態でダンジョンを改造したほうが安全だしね。セキュリティ的にもだし、改造するときの変化に巻き込まれないっていうのもあるだろうし。


「来週くらいになれば魔力ポイントも貯まってると思うよ」


「改造している光景も動画化してもらえると嬉しいな。一視聴者としては」


「分かったー」


 ダンジョンの改造ができないから毎週毎週、働いてくれる人を呼ぶのはダメかもしれないや。1週おきに改造とバイトを繰り返すのがバランスいいかも?

 相談してそう決まった。


 不肖さんはもう来てるので、今後の回転が早いほうが2回目のチャンスが増えるのにって嘆いてたよ。

 でもダメですー。


 ダンジョン育成も大事だからね。

 レーナ姉ちゃんが、さっそくダンジョン動物園のホームページを更新してる。


「お知らせは早いほうがいい」


 ついでに、設備に関しての不満点なんかもあれば教えてって、要望を出せるようにもしてた。


「不肖山谷的には、ダンジョン動物園を本当の動物園みたいに来園できるようになればと思ってんだが」


「うーん、モンスターだからなあ」


「1層のブースがあるだろ? あれでいいんじゃないか?」


「来園者の安全面ではそれでいい。問題は太一くんのセキュリティのほう」


「あぁ……なるほどな。じゃあ難しいか」


 うーん。僕のせいかあ。

 でもダンジョンマスターの安全と秘密が確保できたら、人を呼べるってことだよね。


 動画じゃなくて、生で赤ちゃんモンスターが見れるようになるのは、みんな喜んでくれると思う。

 それもいいことかもしれないっ。


「ええ。自由に出入りできるようになれば、柄山からやま家のほうに来ようとする敵も現れるはず」


「敵っ!?」


「ハニトラ勢よ、太一くん」


「ソイツはヤバイな。太一くんは弱そうだし」


「よ、弱くないですしぃー?」


「ね?」


「ああ」


 弱いものとして見られたのが分かった。

 赤くなっちゃったからかも。

 ホントは弱いの、自分でも知ってるけど……さ。


 やっぱりナイスミドルも目指さないとダメだね。


「ナイスミドルって条件はどんななのかな?」


「太一くんはならないので気にしなくていい」


「太一くんの真逆だな」


 回答者が悪かったみたいだよ!

 寝る前にネットで調べよーっと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る