03 モンスターハウス

「……ヤバイ」


 やらかしたっぽい。

 召喚できるモンスターが動物系に固定された。

 しかも……。


「1体ずつ出てくるのかと思ったのにいっぱい出てきたあっ!」


 地面から魔石がモリモリ出てきて、そこからモンスターがワラワラ産まれちゃったんですけど。


「それに全部赤ちゃんっ!?」


 なんで?

 このダンジョンがまだ赤ちゃんってこと?

 それとも僕が赤ちゃんダンジョンマスターってこと!?


 でも……。


「くぅぅぅっ、カワイイがすぎるっっ」


 ある意味最強だけど、戦闘力はないだろうなあ。コロコロでモチモチのモフモフちゃんたちがヨチヨチしてるし。

 しかも僕に懐いてるし。


 ホワイトデス17匹。この子たちはシマエナガっぽい。

 デッドリーベア1匹。この子はレッサーパンダっぽい。


「うひゃっ、くすぐったいよ」


 僕に登ろうとするデッドリーベアくん。

 ホワイトデスくんたちは頭と肩の上でチチチって鳴いてて、乗れなかった子はあぐらかいてるところにシュポッとハマって団子になった。


 ナデナデすると嬉しいのか、身体を押し付けてきたりしちゃってもーっ!

 こんなの絶対、可愛すぎて耐えられないヤツじゃん。


「えっと、お世話は……」


 Tipsにはモンスターは基本的に魔力がご飯と書いてあった。でも食べ物ならなんでも食べられるみたいだね。

 モンスターの中には喜ぶ個体もいるっぽいから、一緒にご飯とかもできそうだよ。


 そしてよくよく説明書を読んでみると、召喚モンスターが固定されたのは今のフロアだけみたい。なので3層は、動物系に固定ってことだった。


 あー、なるほど。指定しないと今いる階層で召喚されるみたい。よかったよかった。恐竜とかも見たいもんね!

 セーーーーフっ!


「あれ? ダンジョンスマホに新着メールがある」


 えーっと?

 ダンジョンクエストクリア?

 クエスト報酬で魔力がチャージされたみたい。


 初めてのモンスター召喚が達成したということ。

 それと初めてのレア個体召喚を達成した。

 ということで魔力残高は2,000p増えて22,023に。


「レアかあ」


 派手なカードになってたホワイトデスくんが、レア個体ってことみたい。頭のところにアホ毛が出てるのが、他の子とチョットだけ違うところだね。つまりホワイトデスくんたちは、レアじゃない限り1回召喚すると16匹増える……ってこと?


「こんなにいっぱい出てくる予定じゃなかったんだけどなあ」


 餌場と水場、寝床とかも用意してあげないと。ほったらかしでもいいみたいだけどさ、赤ちゃんだし念のため。可愛すぎてモンスターって感じがしないし。

 むしろお世話させてくれてありがとうだよ。


 結局僕は魔力残高のほとんどを使って、彼らの住処を作ってしまったよ。


 大丈夫大丈夫。

 だって初めてのフロア装飾のクエスト報酬で1,000p入ったし、チャージ分は僕の魔力で増えていくはずだもんね。


「あ、使った魔力でモンスターが出てくる数も変わるのかな?」


 強さも違うかもだけど。

 そのうち実験してみるしかないかな。


「んー、名前はどうしようかなあ」


 ほとんど同じのホワイトデスくんたち。

 16匹もいるから覚えられないよ……。

 個体差も外見じゃ判断できないよ……そんなに思い付かないしさ。


「性格は少し違うみたい? かな?」


 名前は募集する?

 SNSに写真か動画を投稿して?

 うん。そうだね、それがいいや。


 定点カメラの映像をスマホに送るように設定しておいて録画しよう。

 カワイイ動画はみんな大好きに決まってる。


「一応レーナ姉ちゃんに聞いてからにしよう」


 ダンジョンマスターは秘密のスキルだし。でも赤ちゃんモンスター見せるだけなら平気じゃないかなって思うんだー。ダンジョンの中だから場所も特定できないよ。

 写真を撮ってメッセージと一緒に送っておく。


 ネームタグもダンジョンスマホで検索すると出てきたので、魔力で買っちゃう。

 100pで10個。200p使って魔力残高は800pちょいになっちゃった。

 この残高はこの子たちのご飯用に残しておこう。


 それから連れ歩く子かな。誰か1人は僕と一緒に行動してもらわないとね。僕の場合、魔力を食べてもらって安全に動けるようにしておかないと。


 レア個体のホワイトデスとデッドリーベアくんが遊んでる様子をしばらく眺めながら、この2人の名前を考える。


「名前名前、んん……」


 レアのホワイトデスがチーちゃん。

 デッドリーベアはキューちゃん。


「チーちゃんはリーダーね」


 連れ歩くのはチーちゃんにしよっと。キューちゃんほど活発じゃないから迷子にはならないと思う。

 キューちゃんは……アヤシイ。連れて行くときはリードがいるなあ。


「あはははっ、待って待ってってばっ」


 ワッチャワチャだよモフモフで。単純に人懐っこいのか、僕がダンジョンマスタ

ーだからなのか、みんな纏わり付いて来る。モンスターとキャッキャキャッキャしてたら母さんが来た。


「太一?」


「ここー!」


 モフモフに埋もれてるからね。

 ネコサイズのキューちゃん。

 手乗りサイズのチーちゃんたち。


 みんな小型ではあるけど、さすがに数が多くて薄暗いここだと僕はカビまみれの荷物っぽくなってるよ……。


「ヤダ、なに、この子たち! カワイイね! おいでー」


 キャーキャーと母さんのテンションも爆上がりしてる。

 分かるよ。

 分かっちゃうよねえ。


「あのさ。母さん。家のほうにも連れて行きたいんだけど」


「いいわよ!」


 理由を言う間もなくオッケーされた。

 反対されるとも思ってなかったけどね。


「名前は?」


「えっとねえ、まだこの子たち2人しか決まってないんだ」


 チーちゃんとキューちゃんを母さんに紹介した。


「鳴き声で付けたから他の子が思いつかなくなっちゃった」


「いっぱいいるから難しいわよねえ?」


 母さんがキューちゃんを抱きあげて、お腹をコチョコチョしてる。

 キューちゃんも嬉しいのか、母さんにじゃれついてるよ。

 ネームタグを2人に着けておこう。


 ちゃんと管理下にあるってことを示さないとね。

 勝手にウチから出ることはないだろうけど。


「それで、なにか用? 母さん」


「あ、ご飯できたわよ。電話しても出ないから来たのよ」


「あー、夢中だったからなあ」


「分かるわぁ」


 モッフモフのモッチモチのフワッフワだもんねえ。

 ホワイトデスくんたちは両手で包むとスヤァってなるし。

 キューちゃんは撫でると全身で抱き付いて来るし。


 知らない間に1時間くらい飛んでても仕方がないのかも。

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